【糖尿病オンライン講演会】Diabetes Online Seminar in 川崎市

2021年11月10日(水)

川崎市川崎病院糖尿病内科・内分泌内科の副医長 渡辺雄祐先生に座長をお努めいただき、GLP-1製剤のエビデンス、導入に適した症例、具体的な使い方などについて実臨床でイメージできるようにお話しさせていただきました。

糖尿病内科・内分泌内科 | 川崎市立 川崎病院 (city.kawasaki.jp)

GLP-1製剤が齎した新しい糖尿病診療の潮流~どの患者にどのタイミングで?~

案内状

糖尿病は著明に血糖が上昇しないと症状がでないため、なぜ血糖管理をしないといけないのか、血糖管理を強化しないといけないのかを患者さんにご理解いただく必要があります。

しかし、患者さんはお薬を始める・増やすと、ずっと続けないといけないのではないか?自分はまだまだやれるので薬には頼りたくない、という根拠のない自信から、お薬を増やすことに抵抗感があります。まして、GLP-1製剤は注射薬であることから、患者さんの抵抗感はさらに高いわけです。

不安な表情の患者さん達

もちろん、主治医もお薬を処方したり、増やしたりしたいわけではなく、現状の血糖コントロール不良な状態を打破したいという思いから提案しています。本当はお薬を使わずに血糖管理ができるのが一番良いと思っています。

 

最近は漫然と同じお薬を投与せず、3カ月間継続投与しても血糖管理目標値に達しない場合には投薬の見直し、または常に減量・中止の可能性を考慮することが重要だと考えられています(糖尿病治療ガイド2020-2021)。そう、糖尿病のお薬は状態が良くなれば減らしたり、休薬したりすることができるのです。そのためにも、早くから血糖管理をしっかりとする必要があるのです。

エール君
エール君

糖尿病治療には絶対的なプロトコールはなく、個々の患者さんに合わせた適切な指導、投薬が必要です。

GLP-1製剤のメリット

GLP-1製剤は血糖改善効果だけではなく、動脈硬化性疾患についても良いデータが多く報告されてます。例えば、米国の2型糖尿病患者さん約10万人のデータベースを用いた研究で、GLP-1製剤で治療をした場合に、心血管疾患の既往のある糖尿病患者さんでは、心筋梗塞、脳卒中、総死亡のリスクが24%低下するということが報告されています(Diabetes Obes Metab 2017)。したがって、心血管疾患のリスクの高い患者さんにはGLP-1製剤による血糖管理が有益であると考えられます。

 

その他にも、GLP-1には胃内容排出遅延、食欲抑制などの体重減少への作用もあることから、肥満に関連した他疾患をお持ちの患者さんには適しているでしょう。GLP-1の血糖依存的な膵島制御作用は低血糖のリスクを上げることなく安全に血糖管理ができるという利点もあります。

GLP-1製剤には週1回注射剤、最近では内服薬も上市され、ますます使いやすくなってきました。GLP-1製剤の特徴を知って、糖尿病診療の幅が広がればよいですね。

金沢一平 糖尿病と骨粗しょう症専門医からの提案