プロフィール

2001年に島根医科大学を卒業し、島根県内の基幹病院で研修を行い、2004年より島根大学にて糖代謝と骨代謝の相互連関の研究を開始しました。
この分野は私が研究を始めた頃から注目されるようになり、大学院の期間の研究が骨代謝学会、骨粗鬆症学会などで評価され、学術奨励賞や研究奨励賞を受賞することができました。海外の学会でも発表することができ、2009年から3年間カナダ・モントリオールにあるマギル大学へ留学するに至りました。

2012年に帰国後、島根大学にて研究を継続し、2020年4月にかなざわ内科 糖尿病・骨粗しょう症クリニックを開院、院長となりました。
これまでの研究内容や留学に関するエピソードなども記載していますので、ご興味があればご覧ください。
島根県での高齢者糖尿病診療を通じて、糖尿病における骨粗鬆症やサルコペニアなどの運動器障害に着目し、診療と研究に従事しています。糖代謝と骨代謝はお互いに連関しており、とても重要な研究分野だと考えています。
しかしながら、日本にはこの分野を積極的に研究している研究者はまだ少なく、まだまだ頑張らねばと思い診療と研究に日々邁進しています。
仕事用プロフィール
生まれ:昭和49(1974)年
出身地:大阪府寝屋川市
所属:かなざわ内科 糖尿病・骨粗しょう症クリニック
学歴
1993年
大阪府立四条畷高等学校卒業
2001年
島根医科大学医学科卒業
2009年
島根大学大学院医学系研究科博士課程修了
職歴
2001年
島根医科大学 内分泌代謝・血液腫瘍内科 医員
2001年
益田赤十字病院 第三内科 医師
2003年
公立邑智病院 内科 医師
2004年
島根大学 医学部 内分泌代謝内科 医員
2007年
島根大学 医学部 内分泌代謝内科 助教
2009年
マギル大学 カルシウム研究室 ポスドク
2012年
島根大学 医学部 内分泌代謝内科 助教
2013年
出雲医療看護専門学校 非常勤講師(2013年度~2015年度)
2016年
島根大学 医学部 内分泌代謝内科 講師
2020年
かなざわ内科 糖尿病・骨粗しょう症クリニック 院長
しまねBMDラボラトリー 代表
医学系資格
日本内科学会認定医・専門医・指導医、日本内分泌学会専門医・指導医、日本糖尿病学会専門医・研修指導医、日本動脈硬化学会専門医・指導医、日本骨粗鬆症学会認定医、医学博士
その他資格
覚せい剤原料研究者指定、JATA公認ISO14001内部監査委員、共用試験医学系OSCE評価者、島根大学医学部附属病院卒後臨床プログラム指導医
所属学会
日本内科学会、日本内分泌学会、日本糖尿病学会、日本糖尿病合併症学会、日本骨粗鬆症学会、日本骨代謝学会、日本動脈硬化学会、日本血管不全学会、日本肥満学会、日本サルコペニア・フレイル学会、日本糖尿病性腎症研究会、American Society for Bone and Mineral Research (ASBMR)、International Bone & Mineral Society (IBMS)、The Society of Craniofacial Genetics and Developmental Biology (SCGDB)、Australian and New Zealand Bone and Mineral Society (ANZMBS) 、European Foundation for the Study of Diabetes (EASD)、American Diabetes Association (ADA)
その他社会活動
日本内分泌学会評議員 日本骨代謝学会評議員 日本動脈硬化学会評議員 日本血管不全学会評議員 日本内科学会中国支部評議員 日本骨粗鬆症学会評議員 日本骨粗鬆症学会生活習慣病における骨折リスク評価委員会委員 認定NPO法人日本ホルモンステーション会員
受賞歴
2006年 
日本骨代謝学会、Asia travel award
2006年 
日本骨粗鬆症学会、学術奨励賞
2007年 
日本骨粗鬆症学会、研究奨励賞
2007年 
米国骨代謝学会(ASBMR)、Plenary poster
2007年 
臨床内分泌Update、優秀演題賞
2009年 
萌雲会医学研究・医学教育奨励賞
2011年 
The 2011 New Therapeutics Targets & Diagnostics in Musculoskeletal  Disorders meeting、Best presentation award
2011年 
Annual McGill University Endocrine Retreat 2011、Travel award
2012年 
日本骨粗鬆症学会、研究奨励賞(2回目)
2012年 
日本骨代謝学会、ANZBMS 2012 Travel award
2016年 
日本骨代謝学会、研究奨励賞
2016年 
日本糖尿病合併症学会、Young Investigator Award 2017年 日本内分泌学会、研究奨励賞
2017年 
米国骨代謝学会(ASBMR)、Plenary poster(2回目)
2018年 
米国骨代謝学会(ASBMR)、Plenary poster(3回目)
助成金等取得状況
2009年 
Fonds de la recherche en sante Quebec (FRSQ) Postdoctoral training award 2009-2011
2010年
The Network for Oral and Bone Health Research、Student conference support 2010
2010年 
上原記念生命科学財団 海外留学助成金リサーチフェローシップ2010-2011
2010年 
かなえ医薬振興財団 海外留学助成金リサーチフェローシップ2010-2011
2011年 
The Network for Oral and Bone Health Research、Student conference support 2011
2011年
Governmenr of Canada Awards - Post-Doctoral Research Fellowship 2011-2012
2011年
FRSQ Postdoctoral training award renewal 2011-2012
2012年
公益財団法人上原記念生命科学財団 研究奨励金
2012年
公益財団法人内藤記念科学振興財団 内藤記念科学奨励金・研究助成
2012年
島根大学平成24年度若手教員に対する支援
2012年
9th IDF WPR Congress & 4th AASD Scientific Meeting Travel Support
2012年
公益財団法人金原一郎記念医学医療振興財団 第27回基礎医学医療研究助成金
2014年
骨粗鬆症財団 旭化成研究助成プログラム 研究助成
研究費取得状況
2008年度-2010年度 
日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究C 研究分担者
2012年度-2013年度 
日本学術振興会科学研究費補助金 研究活動スタート支援 研究代表者
2013年度-2014年度 
日本学術振興会科学研究費補助金 若手研究B 研究代表者
2013年度-2015年度 
日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究C 研究分担者
2015年度-2017年度 
日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究C 研究代表者
2016年度-2018年度 
日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究C 研究分担者
2018年度-2020年度 
日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究C 研究代表者
Editorial Board
World Journal of Diabetes (2017-) Journal of Bone and Mineral Metabolism (2018-2020)
Ad-hoc Reviewer
Acta Diabetologica, Advances in Endocrinology, American Journal of Case Reports, BBA-General Subjects, Biomarkers in Medicine, BMJ Open Diabetes Research & Care, Bone, Calcified Tissue International, Canadian Journal of Physiology and Pharmacology, Cardiovascular Diabetology, Cell Biology International, Cell Metabolism, Clinica Chimica Acta, Clinical Endocrinology, Clinical Interventions in Aging, Current Diabetes Reviews, Diabetes Management, Diabetes/Metabolism Research and Reviews, Diabetes, Obesity and Metabolism, Diabetes Research and Clinical Practice, Diabetologia, Diabetology & Metabolic Syndrome, Disease Markers, Endocrine, Endocrine Journal, Endocrine Metabolic & Immune Disorders-Drug Target, Endocrine Research, European Journal of Endocrinology, European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biology, European Journal of Pediatrics, Experimental and Clinical Endocrinology & Diabetes, Experimental Gerontology, Expert Opinion On Therapeutic Target, Expert Review of Endocrinology and Metabolism, Future Cardiology, Hormone and Metabolic Research, Internal Medicine, International Journal of Endocrinology, International Journal of Molecular Sciences, Journal of Atherosclerosis and Thrombosis, Journal of Biomarkers, Journal of Bone and Mineral Metabolism, Journal of Bone and Mineral Research, Journal of Diabetes, Journal of Diabetes and Its Complications, Journal of Diabetes Investigation, Journal of Diabetes & Metabolism, Journal of DIabetes Reseearch, Journal of Diabetes Research & Clinical Metabolism, Journal of Endocrinological Investigation, Journal of Endocrinology, Journal of Hormones, Journal of Immigrant and Minority Health, Journal of Internal Medicine, Journal of Nutrition and Metabolism, Journal of Osteoporosis, Journal of Pediatric Endocrinology and Metabolism, Journal of Research in Diabetes, Journal of the American College of Nutrition, Journal of Translational Medicine, Macedonian Journal of Medical Sciences, Medical Science Monitor, Molecular and Cellular Endocrinology, Osteoporosis International, Pathology and Laboratory Medicine International, PLOS ONE, Renal Failure, Shimane Journal of Medical Science, The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, The Journal of Japan Osteoporosis Society, Therapeutics and Clinical Risk Management, Trends in Endocrinology and Metabolism, Trends in Molecular Medicine, Vascular Health and Risk Management, World Journal of Diabetes, Yonsei Medical Journal
私の学生時代 小学校から島根医科大学まで
寝屋川市立明徳小学校
寝屋川市立明徳小学校
あまり勉強はできませんでしたが、スポーツは人一倍頑張りました。 両親が共働きであったため、小学校6年生まで学童保育に通いましたが、そこでも野球やサッカーを始め、いろいろな遊び・スポーツを習いました。 毎年あるマラソン大会で、1位になったこともあります。 この頃はマラソンの練習もしたり、長距離走も得意でした。 小学校2年生から地元の少年野球チーム「寝屋川アスナローズ」に所属し、 4年生まではキャッチャー、6年生までレフトを守りました。 1年後輩にはプロ野球でも活躍中の上原浩治もおり、一緒にプレイしました。 彼の負けん気はこの頃からあったと記憶しています。
寝屋川市立第十中学校
バスケットボール部に所属しました。
1年生のころはあまり部活が好きではありませんでしたが、2年生から必死で頑張り、背番号7をもらいフォワードのレギュラーとして頑張りました。 バスケ部全体がそうだったんですが、この頃は結構女子にもてた記憶があります。 後にも先にもこの頃が人生ピークのモテキでした。 同じように1年生のころは勉強もできず、成績も下から数えた方が早かったですが、1年生の3学期頃から塾通いをするようになり、成績が飛躍的に伸びて勉強が楽しくなりました。
勉強すると良い点数がとれるというまったく当たり前のことにようやく気付き、やる気がでるようになったんだと思います。 塾通いも楽しく、夜の11時ころまで塾で勉強し、中学の5教科(英語、算数、国語、理科、社会)で500点をとることを目指して頑張っていました。 もちろん、500点を取れたことはありませんでしたが。。。
大阪府立四条畷高等学校
大阪府立四条畷高等学校
大阪の第4学区の進学校です。
歴史は古く、旧制中学校の時代から学校があるそうです。 高校時代は勉強はほとんどせず、ラグビー部に入り練習ばかりしていました。 当校のラグビー部は古豪で昔は花園の全国大会にも出ていたのですが、僕たちの代では春の新人戦で大阪予選準優勝までが最高で、花園予選は準決勝で敗退という結果でした。
ちなみに、前述のようにラグビー部の歴史も古く、試合用ラガージャージ(写真)は白無地に胸に赤の“畷”の字があります。これは、戦後の貧しい時代にお金がなかったので、白のシャツに血で校名を書いたのが始まりだという逸話があります。 (本当かどうかは定かではありませんが。。。) ポジションはアウトサイドセンター、痛いことは嫌いでしたが、コンタクトプレーの多いポジションで苦労しました。 左手首や鎖骨の骨折、両膝靭帯損傷など、たくさん怪我もしましたが、楽しいラグビー生活を送りました。
この頃の部活動で、今の忍耐力が付いたのではないかと思います。 今でもこの時の友人は宝です。 「楠香かほる学び舎の、高き理想に憧れて、、、、」という部歌があり、試合前にはレギュラーも補欠もみんなで歌って試合に臨むのですが、今でも歌えますし、歌うと勇気が湧いてきます。
一方、 勉強に関しては、数学以外はまったくの苦手で、3年生の花園予選が終わる11月まで受験勉強は全然しませんでした。 どんな仕事をするかなどの将来のことをまったく考えることなく高校時代を終了しました。 とりあえず受験した大阪教育大学数学科に合格するも、その頃ようやく医師になることを決め、大学浪人することにしました。
もし、大阪教育大学に進学していたらどんな人生だったのだろうと、今でも考えることがあります。
島根医科大学
島根医科大学
現在の島根大学医学部ですが、以前は単科大学で看護科もありませんでした。
平成6年(19期生)に入学しました。 高校のラグビー部の先輩が1年上にいたため、入学前からラグビー部に勧誘され、迷う間もなく大学でもラグビー部に所属することになりました。 医学部ではラグビー経験者が少ないのが通例でしたが、この年は僕も含めて4人の経験者が入部しました。
僕も1年生からレギュラーとして試合にださせていただき、4年生の時には主将も務めました。 高校時代と同様に試験前以外は勉強には打ち込まず、ラグビーやアルバイトに精を出していました。 5年生になり臨床実習がスタートしたことから、自分で言うのもなんですが、割と真面目に勉強するようになりました。やっぱり、医学を目指して入学したので、医療に実際に触れるようになると真面目にもなりますよね。 この頃の友人も今でも宝物で、特にラグビー部と同じ臨床実習だった友人たちとは今でも仲良くさせてもらっています。
医療と母校に貢献できるように、同期生みんなで頑張りたいと思っています。
研究
【研究1】骨と脂肪、糖代謝の相互関連性
脂肪組織による糖代謝制御
レプチン
1990年代後半に脂肪組織が単なるエネルギーの貯蔵庫ではなく、生理活性をもつアディポサイトカインと呼ばれる様々なホルモンを分泌することが発見されて以来、このアディポサイトカインの色々な組織・臓器への影響について多数の研究が行われてきました。
特に代表的なアディポサイトカインであるレプチンについては、竹田秀先生やDucy、Karsentyらによる精力的な研究により、レプチンの骨代謝への作用メカニズムが解明されてきています。 レプチンは視床下部にあるレプチン受容体を介して交感神経系を亢進させ、骨芽細胞に存在するアドレナリン受容体を介して骨形成を負に制御していると報告されています。

さらに、骨芽細胞におけるRANKL発現を亢進することにより破骨細胞活性を促進し、骨吸収も高めることが明らかとなっています。 Karsentyらはレプチンの骨への作用は中枢神経を介した間接的なものであると提唱していますが、一方で骨芽細胞にはレプチン受容体も存在することからレプチンは直接骨へ影響することも他のグループから報告されています。
そのレプチンの直接作用は前述の間接作用とは反対に、骨形成を促進し、骨芽細胞におけるRANKL発現抑制を介して破骨細胞活性を抑制すると報告されています。 従って、レプチンの骨への影響としては間接作用・直接作用とがバランスをとって関連していると考えられます。
レプチン
アディポネクチン
アディポネクチン
2004年、Bernerらにより初めて骨芽細胞もアディポネクチンとその受容体が発現していることが明らかとなりました。
従って、アディポネクチンは骨にautocrine、paracrine、endocrine的に作用する可能性が考えられます。 これまでに骨芽細胞へのアディポネクチンの添加は骨芽細胞分化を促進し、石灰化を促進すると報告されています。 アディポネクチンの受容体には1型と2型がありますが、我々は骨芽細胞株MC3T3-E1にはアディポネクチン受容体1型のみが発現していることから、アディポネクチン受容体1型をsiRNAにてノックダウンすることによりアディポネクチンの骨芽細胞への影響を検討しました。

この系によるアディポネクチン刺激の減弱は骨芽細胞の分化、オステオカルシン発現、石灰可能を有意に抑制したことからアディポネクチンは1型受容体を介して骨芽細胞の分化、石灰化を促進する作用があることを明らかにしました。
アディポネクチンの破骨細胞への直接作用としては破骨細胞活性を抑制することにより骨吸収を抑制すると報告されていますが、Luoらは骨芽細胞におけるRANKL発現促進、OPG発現の抑制を介して破骨細胞活性を促進する、すなわちアディポネクチンは骨芽細胞分化を促進するのみならず骨芽細胞を介した骨代謝回転の亢進作用もあると報告しています。
アディポネクチン
これまでに血中アディポネクチンと骨密度、骨代謝回転の関係性を検討した臨床データが報告されています。
我々も2型糖尿病男性においては、血中アディポネクチンと骨密度との間には有意な負の相関、骨代謝マーカーとは有意な正相関があることを報告しています。さらに、アディポネクチンと既存椎体骨骨折との間にも正の相関が認められました。 右図に示すように、血中総アディポネクチン濃度が1SD上昇する度に椎体骨折のリスクが約1.4倍、中等度から重度の骨折リスクが約1.7倍に上昇することが明らかとなりました。
従って、これらの結果からアディポネクチン高値は骨密度低下、骨代謝回転亢進を引き起こし、椎体骨折の原因となりうると考えられます。
アディポネクチン
オステオカルシン
糖代謝との関連性
脂肪組織からのアディポサイトカインや膵臓から分泌されるインスリンが骨代謝に影響することが認識されるようになってきました。
このことから、内分泌学的観点からおそらく骨からも脂肪組織や膵臓になんらかのフィードバック機構が存在するのではないかと推測されます。

2007年に初めてKarsentyらにより骨芽細胞から特異的に分泌されるオステオカルシンという蛋白に糖、脂肪代謝への内分泌作用があることが報告されました。オステオカルシン欠損マウスにおいては高血糖、インスリン分泌低下、インスリン抵抗性、肥満、低アディポネクチン血症などが認められ、またオステオカルシン欠損マウスにオステオカルシンを投与することによりこれらの代謝異常が改善したと報告されました。
オステオカルシンは膵臓においてインスリン分泌を促進し、脂肪細胞においてはアディポネクチン分泌を促進することによりインスリン作用を高めます。その後のマウスにおける詳細な検討により、オステオカルシンの中の非(低)カルボキシル化オステオカルシン(ucOCN)にその内分泌作用があることが明らかとなっています。
これら一連の報告は特に骨代謝、糖代謝の研究領域で注目を集め、近年でのホットトピックとなっています。
オステオカルシン
これまでの報告をまとめると、膵臓より分泌されるインスリンは骨芽細胞のインスリン受容体(IR)を介してTwist2発現の抑制、FoxO1活性の抑制を介してオステオカルシン分泌を促進します。また、脂肪細胞から分泌されるレプチンは中枢神経系を介してIR阻害作用のあるEspの発現促進によりオステオカルシン分泌を負に制御する。
また、骨芽細胞内のATF4はオステオカルシン分泌も促進するが、一方でそれ以上にEsp発現を促進することにより結果的にはオステオカルシン分泌を抑制する。

さらに、オステオカルシン活性化には破骨細胞活性も重要であることが明らかとなっており、インスリンシグナルによるオステオプロテジェリン(OPG)発現抑制あるいはレプチンによるRANKL発現増強が破骨細胞活性化上昇に働き、破骨細胞による酸分泌により骨基質に沈着しているカルボキシル化オステオカルシンの脱炭酸が起こり、ucOCNが骨基質から血中へ遊離することにより膵臓のインスリン分泌、脂肪細胞でのアディポネクチン分泌を促進し、さらにインスリンやアディポネクチンが骨芽細胞へ作用するという、骨、膵臓、脂肪組織間に相互関連性があることが明らかとなってきました。
オステオカルシン
我々は血中オステオカルシンと糖、脂肪指標との相関関係を検討した。 年齢、body mass index(BMI)、血清クレアチニンにて補正した重回帰分析において、男性では体幹部脂肪率(%Trunk fat)、内臓脂肪/皮下脂肪面積比(V/S比)、閉経後女性においても%Trunk fatと負の相関を認めることからオステオカルシンは脂肪組織(特に内臓脂肪)と関連することが示されている。
また、女性では血清アディポネクチン濃度と正の相関を認めることから、女性ではオステオカルシンとアディポネクチンの関連性も認められた。 男性、女性ともに血糖指標とは有意な負の相関を認め、インスリン抵抗性指標と負の相関、インスリン分泌指標と正の相関を認める。
これらの結果はマウスにおけるオステオカルシンの解析と一致する。 しかし、オステオカルシンと脂肪指標、血中アディポネクチン濃度との関係には男女差がある可能性が伺える。 我々はucCONと糖代謝、脂肪組織指標との関連性についても報告している。
ucOCNも総オステオカルシン濃度と同様の傾向を認めるものの我々のデータではucOCNよりも総オステオカルシンの方が強い相関関係を認めている。
動脈硬化との関連性
我々はこれまでに血中オステオカルシンが動脈硬化指標と関連性があることを報告している。
動脈硬化指標として脈波伝播速度(PWV)と頸動脈エコーによる内膜中膜厚(IMT)を測定し、血中オステオカルシン濃度との関係性を検討したことろ、年齢や血圧、糖、脂質など様々な動脈硬化リスク因子にて補正後も有意な負の相関を認めた。このことは、血中オステオカルシンが高いほど動脈硬化が少ないという関連性を示している。
さらに、我々は小規模ではあるが、血中オステオカルシン濃度が高い人では動脈硬化指標の進展が少ないという結果も得ている。 また、動脈硬化の減少のひとつである血管石灰化についても検討を行った。 上記のPWVやIMTと同様に、オステオカルシンと血管石灰化指標との間には負の関連性が見いだされたことから、オステオカルシンが高いと血管石灰化が少ないという関係が認められた。 近年、他の研究者によりオステオカルシンの受容体であるGPRC6Aが血管内皮細胞や血管平滑筋細胞にも発現しており、オステオカルシンが直接動脈硬化・血管石灰化形成に影響する可能性が考えられている。
しかしながら、実際に臨床にて血中オステオカルシン濃度を上昇させると動脈硬化を改善、あるいは進展を防止しうるか否かについての検討はなく、今後のさらなる研究が望まれる。
テストステロン産生を促進する
2011年、Cellにオステオカルシンが精巣のLeydig細胞に作用してテストステロン分泌を促進することが初めて報告された。
著者らは、オステオカルシン欠損マウスでは生殖能力が低いことを見出し、その後詳細な検討を行った。 ucOCはLeydig細胞においてもGPRC6Aを受容体として、CREBの活性を促進することによりテストステロン産生を促進することが明らかとなった。
我々は2型糖尿病男性における血中オステオカルシンとfreeテストステロン濃度との関連性を検討した。 横断解析ではあるが、血中ucOC濃度あるいはucOC/OCの比と血中テストステロン濃度との間には有意な正の相関を認めた。我々は対象患者を変えても同様にucOCとテストステロンとの正の相関関係を確認しており、前述したCellの論文結果を裏付けている。
小腸上皮細胞におけるGLP-1発現を増強する
2013年初めに、九州大学の研究室からucOCが小腸上皮のGPRC6Aを介してGLP-1発現を増強するという論文が報告された。 GLP-1は糖尿病、動脈硬化領域では精力的な研究がおこなわれている。
実際にGLP-1受容体アゴニストやDPP-4阻害薬といったGLP-1活性を上げる薬剤が糖尿病治療薬として使用されている。GLP-1の受容体は膵臓に発現しており、インスリン分泌を促進することが明らかとなっている。 さらに、GLP-1受容体は膵臓以外の様々な組織にも発現していることから、GLP-1はインスリン分泌促進作用以外にも多面的な効果を有している可能性が考えられている。
多くの基礎実験、臨床研究によりGLP-1作用の増強は動脈硬化、心機能改善に作用することが報告されている。 したがって、ucOCはGLP-1発現を介して、糖代謝と動脈硬化にも影響する可能性が考えられる。
明らかになりつつあるオステオカルシンの糖代謝、動脈硬化との密接な関連性
糖代謝、動脈硬化
骨から分泌されるオステオカルシンと糖代謝、動脈硬化との関連性のシェーマ
今後明らかにすること
1)骨・脂肪組織の連関性
これまでに骨芽細胞特異的インスリン受容体欠損マウスを用いた研究により骨と膵臓との相互関連性について明らかとなっている。
脂肪組織から分泌されるレプチン、アディポネクチンが骨代謝に影響すること、またオステオカルシンが脂肪組織においてアディポネクチン分泌に影響することより、骨と脂肪組織とにも相互関連性があることが容易に想像される。しかしながら、これらについての直接的なエビデンスは未だない。
2)オステオカルシンのシグナル伝達機構
オステオカルシンが糖、エネルギー代謝に関係していることは示されているものの、オステオカルシンがどのように膵β細胞、脂肪細胞にそのシグナルを伝えるのかについては未だ不明である。これまでにGPRC6Aというオーファン受容体がオステオカルシンの受容体である可能性が報告されていますが、この受容体は細胞外のアミノ酸やカルシウムにも反応することから、本当にこの受容体がオステオカルシン、特にucOCNの受容体でるのかはまだまだ検証していく必要があると思われます。
さらになぜカルボキシル化オステオカルシンではなくucOCNのみが内分泌作用を持つのかについても明らかにする必要がある。
3)局所でのオステオカルシン発現
これまでにオステオカルシンは骨芽細胞特異的な蛋白であると考えられています。
実際に骨代謝の変化により血中オステオカルシン濃度が変化することから血中に分泌されるオステオカルシンの大部分が骨からであると思われる。
しかしながら近年、脂肪細胞においてもオステオカルシンが発現していることが報告された。また、血管平滑筋も動脈硬化が進むと骨芽細胞様細胞に分化しオステオカルシンを発現することが報告されている。今後、組織局所におけるオステオカルシンの役割についても議論をしていく必要があると考えています。
4)男女間におけるオステオカルシンの役割の差異
我々の臨床データからは血中オステオカルシンと糖、脂肪指標とには男女間で差があるように思われる。特に血中のアディポネクチンとオステオカルシンの相関関係は男性では認められないが女性では正の相関を認める。このことは他の研究者からの報告とも一致しており、この後さらなる検討が必要であると思われる。
5)骨代謝へ影響を与える薬剤やホルモンがオステオカルシン分泌を介して糖、脂肪代謝へ影響するか
ヒトにおいてもオステオカルシンが糖、脂肪代謝に影響しているとすれば、当然オステオカルシン濃度に影響を与えるような因子が糖、脂肪代謝にも影響する可能性が考えられる。しかしながら、このことについての検討はまだ少なく、さらなる研究の蓄積が必要であると考える。
【研究2】AMPキナーゼ活性化による骨芽細胞分化促進作用
メタボリックシンドロームの発症基盤となる内臓脂肪蓄積、アディポサイトカイン分泌異常、特にアディポネクチン分泌低下に関わる病態の解明が注目されています。近年、骨芽細胞にもアディポネクチン受容体が存在することが明らかとなり、アディポネクチンが内臓脂肪と骨を結ぶkey moleculeである可能性が考えられてきています。
一方で、AMPキナーゼ(AMPK)は細胞に普遍的に存在し、細胞内エネルギー状態の監視及びその調節を行っていることから、糖・脂質代謝の領域において治療の標的分子として注目されています。しかしながら、これまでに骨芽細胞でのAMPKの役割についての報告はありませんでした。
我々はこれまでにアディポネクチンが骨芽細胞においてAMPKを活性化させることにより骨芽細胞の分化、石灰化を促進することを報告し、骨芽細胞におけるアディポネクチンシグナルがAMPKを介していることを世界に先駆けて報告いたしました。
また、我々は2型糖尿病治療薬であるメトホルミンが骨芽細胞においてAMPK活性化を介して骨形成促進因子であるeNOS、BMP-2の発現を誘導し、分化、石灰化を増強することを報告しております。従って、AMPKを活性化しうる薬剤が骨形成を促進し、骨代謝を改善しうる可能性が考えられます。
内臓脂肪蓄積
AMPキナーゼ活性化はメバロン酸経路阻害により骨芽細胞分化を促進する
骨芽細胞分化を促進
これまでの我々の検討から骨芽細胞におけるAMPK活性化が骨芽細胞分化を促進することが明らかとし、さらにそのシグナル伝達について検討を続けました。
マウス骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞を用いて、AMPK活性化による骨芽細胞の分化、石灰化促進機序をAMPK活性剤であるAICARを用いて検討しました。
AICARはBMP-2、eNOSおよび分化マーカーであるオステオカルシン発現を誘導し、石灰化促進作用を示しました。メバロン酸経路の中間代謝産物であるメバロン酸あるいはグラニルグラニルピロリン酸をAICARと同時投与することによりメバロン酸経路の抑制を解除すると、AICARの作用は消失しました。このことからAICARによるAMPK活性化はメバロン酸経路の阻害によりBMP-2、eNOS、オステオカルシン発現にくわえ石灰化促進作用を発揮していることが明らかとなりました。
また、NOS阻害剤であるL-NAME、あるいはBMPアンタゴニストであるnogginをAICARと同時投与することによりAICARの作用は消失したことから、骨芽細胞におけるAMPK活性化はメバロン酸経路の抑制に引き続くeNOS、BMP-2発現増強を介して、石灰化を促進することが示唆されました。
さらに我々はAICARはAkt、ERKのリン酸化を促進し、ERK活性阻害剤(PD98059)によりAICARのeNOS、BMP-2発現増強作用は抑制されることを示しました。
一方で、Rhoキナーゼはメバロン酸経路の下流に存在するが、AICARはRhoキナーゼ活性を有意に抑制し、Rhoキナーゼの特異的阻害剤であり動脈硬化治療薬として注目されているファスジルはAICARと同様にeNOS、BMP-2、オステオカルシン発現を増強し、同時に石灰化も促進しました。
このことにより、AMPK活性化によるメバロン酸経路阻害とファスジルによるRhoキナーゼの直接の阻害は糖・脂質代謝の治療のみならず、新たな骨粗鬆症の治療手段となりうる可能性が示唆されました。
新たな骨粗鬆症の治療手段
AMPK活性化はグルココルチコイドによる骨芽細胞分化障害を解除する
臨床の場においてグルココルチコイド(GC)はアレルギー疾患や血液疾患を始め様々な疾患で使用される薬剤です。一方で、GC骨粗鬆症(GIO)はGC投与による副作用として最も注意すべき疾患であり、GC投与後の脆弱性骨折を予防することは臨床的に非常に重要であります。
GIOの発症機序としてGCによる骨芽細胞のアポトーシスや分化、石灰化の低下が重要であると考えられているが、未だ不明な点が多いのが現状です。
これまでにGCの骨芽細胞分化阻害作用の一つとしてBMPシグナルの低下、Runx2発現の低下が報告されており、我々は以前にBMPシグナルの低下にはBMP-2アンタゴニストであるFollistatin、Danが関与していることを報告しています。
我々はAMPK活性化、Rhoキナーゼ阻害がともにBMP-2シグナルを増強することから、GCによる骨芽細胞分化抑制に対するAICAR、ファスジルに加えコレステロール合成阻害剤であるスタチンの影響を検討しました。
コレステロール合成阻害剤であるスタチンの影響
AICAR、ファスジル、スタチン(シンバスタチン、ピタバスタチン)はいずれもGCと同時投与においてもBMP-2発現を有意に増強した。
さらに、GC投与によるBMPアンタゴニスト(Follistatin、Dan)の発現増強作用を有意に抑制した。 右図に示すように石灰化染色においてもAICAR、ファスジル、スタチンはいずれもGCによる石灰化抑制作用を解除した。
今後明らかにすること
これまでに我々はAMPKの骨芽細胞分化における制御機構について世界に先駆け報告してきており、その後他のグループからも我々の結果を追従する形で様々なデータが報告されてきています。脂質異常症治療薬であるベザフィブラートもAMPK活性化を介したeNOS、BMP-2発現作用があることが報告されており、またAMPK欠損マウスでは骨量が低下することが確認されています。
1)in vivoにおけるAMPKの骨における役割の検討
上記のようにAMPK欠損マウスにおける骨量低下が報告されていますが、AMPKは全身にユビキタスに存在しており、様々なホルモンのkey moleculeとして働いていることから、実際に骨における役割を検討する上で骨特異的なAMPK遺伝子改変マウスでの検討が必要であると考えています。また、骨粗鬆症モデルマウスにおいて実際にAMPK活性化が骨量低下を改善するかなどについても検討が必要であると考えています。また、我々はGCによる骨芽細胞分化抑制作用へのAMPK活性化の影響をin vitroにて検討しましたが、未だin vivoにおける検討は報告されていません。従って、我々のin vitroでの知見を確認するためにはin vivoにおける検討が重要であると考えています。
2)AMPKのシグナル伝達経路について
近年、他のグループからAMPK活性化はBMP-2シグナルの下流であるSmad1/5/8のリン酸化、Dlx5、Runx2発現を増強することが報告されています。従って、AMPKはBMP-2そのものの発現を増強するのみならずその下流のシグナルを増強することにより骨芽細胞分化促進に働いている可能性があります。また、近年ではBMPシグナルとWntシグナルには関連性があることが報告されてきており、さらなるAMPKシグナル伝達についての検討が必要であると考えています。
3)MAPKとの関係性について
我々の検討でもAMPK活性化はERK活性化を誘導することが確認されています。骨芽細胞におけるAMPKと他のシグナル伝達についての検討は未だ不明な状態です。この点についても今後明らかにする必要があると考えています。
4)AMPKの破骨細胞、骨細胞での役割
AMPKのin vivo、臨床での応用を検討する上で骨芽細胞のみならず他の細胞への影響も当然検討する必要があります。
5)他のホルモンや薬剤のAMPKへの影響
前述したようにAMPKは様々なホルモン作用においても重要な因子であることが分かってきています。従って、骨に重要であるホルモン(PTHやカルシトニン、IGF-Iなど)がAMPKシグナルと関連している可能性も考えられます。
【研究3】2型糖尿病患者における骨脆弱性
近年、人口の高齢化に伴い糖尿病などの生活習慣病、骨粗鬆症患者数が増加してきています。 要介護や寝たきりの原因として心血管性疾患、転倒・骨折が上位をしめることは厚生労働省の発表で明らかになっており、これらに関連する疾患の予防・治療は重要と考えられます。
2型糖尿病では健常者に比較して約3倍の心血管疾患リスクがあり、大腿骨々折リスクも約1.7倍に増加していることが明らかとなっています。
一方で、2型糖尿病患者では骨密度の低下はなく、正常あるいは上昇しているとも報告されています。

なぜ骨密度の低下がないにも関わらず骨折リスクが増加しているのでしょうか?

骨は石灰化基質とコラーゲン架橋により適度なしなやかさを保ち、骨の強度を維持しています。また、骨は骨芽細胞と破骨細胞によるリモデリングが常時繰り返されており、常に新しい骨組織が形成されています。
2型糖尿病では悪玉コラーゲン架橋(AGE架橋)の形成が増加していること、皮質骨での多孔性が存在すること、また骨芽細胞機能の低下を伴う骨リモデリングの低下などが2型糖尿病における骨脆弱性の原因である可能性が報告されています。
2型糖尿病における骨芽細胞成熟度障害の存在
2型糖尿病における骨芽細胞成熟度障害の存在
これまでに、糖尿病における骨芽細胞機能障害が骨脆弱性の誘因のひとつであると考えられてきましたが、その詳細は明らかでありませんでした。
そこで我々は2型糖尿病治療経過における骨代謝マーカーの変化を検討しました。
血糖コントロール不良の2型糖尿病患者(平均HbA1c 10%)を約1ヶ月間治療し(HbA1c 8.8%へ減少)、その前後における骨代謝マーカーの変化を検討しました。
臨床において骨型アルカリホスファターゼ(BAP)、オステオカルシンはともに骨形成マーカーとして使用されています。しかしながら、我々の検討ではBAPは治療後には有意に低下したのに対して、オステオカルシンは有意に上昇しました。
我々の検討ではBAPは治療後には有意に低下
同じ骨形成マーカーであるのになぜBAPは低下しオステオカルシンは上昇するのでしょうか?
骨芽細胞は分化の初期にはBAPを分泌し、後期になってからオステオカルシンを分泌することからBAPとオステオカルシンの比率は骨芽細胞の分化度合いの指標になると考えられます。
以前の培養骨芽細胞を用いた検討において、高血糖状態ではアルカリホスファターゼの発現は上昇しますが、オステオカルシンの発現は低下し、石灰化障害を来すことが報告されています。 そこで、我々はこの骨芽細胞成熟度障害が2型糖尿病の脆弱性に関連しているか否かを検討した。
2型糖尿病男性において、オステオカルシンとBAPの比率(オステオカルシン/BAP比)と骨脆弱性の指標として椎体骨折の存在との関連性を検討したところ、オステオカルシン/BAP比が高いほど椎体骨折リスクが低下している、すなわち骨芽細胞が成熟していれば骨折のリスクが低いという結果を得た。
このことから、2型糖尿病の骨脆弱性には骨芽細胞の成熟度障害が関連している可能性が示唆される。
肥満と高血糖の共存により骨折リスクが上昇する
では、どういった患者が骨芽細胞成熟度障害きたすのでしょう?
前述の通り高血糖状態はBAPの上昇、オステオカルシンの低下を来します。しかしながら、血糖状態の指標であるHbA1cのみでは骨折リスクとは相関しないと報告されており、実際我々の検討でもHbA1cのみでは骨折リスクとの有意な関連性は認められていません。
一方で、肥満は2型糖尿病の重要なリスク因子になりますが、骨にとっては保護的に働くことはよく知られています。肥満すると骨代謝回転の低下(骨形成かつ骨吸収の低下)がみられ、骨密度は上昇します。 このことは非糖尿病患者においては骨折リスクの減少に働くが、2型糖尿病患者においても肥満が骨に保護的に働いているのではないかと考えられます。
しかしながら、2型糖尿病患者の低骨代謝回転型の骨脆弱性に肥満が寄与している可能性も考えられます。
肥満が寄与
高血糖状態と肥満状態の両者とも骨芽細胞機能低下をきたすことから、我々は高血糖かつ肥満の共存状態が2型糖尿病の骨脆弱性に寄与しているのではないかと想定して検討を行いました。
2型糖尿病男性を血糖状態と肥満度で4群に分け検討しました。

第1群;HbA1c 9%未満かつBMI(肥満度) 24未満
第2群;HbA1c 9%以上かつBMI(肥満度) 24未満
第3群;HbA1c 9%未満かつBMI(肥満度) 24以上
第4群;HbA1c 9%以上かつBMI(肥満度) 24以上(高血糖かつ肥満)

図に示すように第4群は第1群に比較して、分化した骨芽細胞から分泌されるオステオカルシンの血中濃度が有意に低下していることが示されました。
さらに、椎体骨折リスクとの関連を検討すると、 第4群は第1群に比較して 椎体骨折リスクが約3.1倍 多発椎体骨折リスクが約5.4倍 に増加していることが示されました。
椎体骨折リスク
従って、健常者では肥満は骨折リスクに保護的に働きますが、2型糖尿病患者では肥満していることは必ずしも保護的に働くわけではなく、高血糖状態が共存すればむしろ骨折リスクの上昇に働くことが明らかとなりました。
骨折リスク・骨脆弱性の指標
前述のように2型糖尿病では骨密度の低下がないことから、骨粗鬆症の標準的検査である骨密度測定があまり役に立たないと考えられます。
従って、2型糖尿病患者の骨を評価するためには別の指標が必要であります。
しかしながら、未だ臨床的に応用可能な評価方法は確立していないのが現状であります。
血中IGF-I
以前より成長ホルモン/insulin like-growth factor-I (IGF-I)系のホルモンが糖尿病合併症に関連していることが報告されています。
視床下部より分泌される成長ホルモンは肝臓に働き、肝臓より血中へIGF-Iは分泌されます。IGF-Iは増殖因子として様々な臓器において重要な役割を担っており、骨においても最も重要なホルモンのひとつとして認識されています。例えば、骨芽細胞特異的IGF-I受容体欠損マウスにおいては、著明な骨量減少、石灰化症を来たし、また肝臓特異的IGF-Iノックアウトマウスにおいても明らかな骨量減少、骨成長の障害が認められます。
糖尿病のコントロール不良の状態では血中IGF-I値が低下することはよく知られており、また糖尿病微小血管障害(神経障害、網膜症、腎症)において成長ホルモン/IGF-Iの異常が関連することが報告されていることから、我々は糖尿病の骨代謝異常においても血中IGF-Iが関連しているのではないかと予測しました。 閉経後2型糖尿病女性における血清IGF-I値と骨代謝マーカーとの相関関係を検討しました。
骨形成マーカーであるオステオカルシンとIGF-Iは有意な正の相関を認めましたが(下図)、骨吸収マーカーである尿中NTXとは相関関係を認めませんでした。
糖尿病性骨症の病因として骨形成低下が重要であるといわれていますが、このことは糖尿病コントロール不良によるIGF-I低下が骨形成の低下と関連していることを示唆するデータと考えられました。
IGF-I低下が骨形成の低下
骨粗鬆症では大腿骨、肋骨、椎体などにおいて容易に骨折が起こりえます。 特に椎体骨折の約7割くらいは痛みを伴わず、レントゲン検査をしなければ椎体骨折の存在に気がつかないことも多いと言われています。椎体骨折が起これば前傾姿勢となり、運動能力が低下するだけでなく、近年では消化管障害や心肺機能にも悪影響があると考えられています。実際に椎体骨折があると心筋梗塞のリスクが増加することが報告されています。 そこで、我々は血清IGF-I値とレントゲン撮影による既存椎体骨折との関連性を検討しました。
椎体骨折なし、1個あり、2個あり、3個以上有りに群分けし、血清IGF-I値を比較してみると、下図に示すように、椎体骨折の数が増えるほど血清IGF-I値が低下していることが明らかとなりました。
さらに、様々な交絡因子で補正したロジスティック回帰分析において、血清IGF-Iが1SD上昇すれば単椎体骨折のリスクは0.67倍に減少し、2個骨折は0.40倍、さらに3個以上骨折では0.27倍にリスクが低下することが明らかとなりました。
すなわち、閉経後2型糖尿病女性において、血清IGF-I値の低下は椎体骨折・多発椎体骨折のリスクになることが示唆された。
IGF-I低下が骨形成の低下
従って、血清IGF-I値は閉経後2型糖尿病女性において、骨密度測定に取って代わる指標となり得る可能性が考えられます。
アディポネクチン
アディポネクチンは脂肪細胞から血中へ分泌されるホルモンであるが、肥満・内臓脂肪増加に比例して血中アディポネクチン濃度は低下します。
我々は培養細胞をもちいた基礎研究によりアディポネクチンが骨芽細胞分化を促進することを見出しています。以前より肥満と骨とは密接な関連性が認められていることから、血中アディポネクチンが骨密度、骨折リスクに関連している可能性を考え検討を行いました。
血清IGF-I値は閉経後2型糖尿病女性において、骨密度測定に取って代わる指標
我々は検討当初はアディポネクチンは骨に保護的に働くと考えていましたが、我々の意と反して2型糖尿病男性においては血中アディポネクチン濃度高値はむしろ高椎体骨折リスクと関連することが示されました。
近年、アディポネクチンは骨芽細胞分化も促進しますが、骨芽細胞におけるRANKL発現の上昇を介して破骨細胞分化も促進し、骨代謝回転を高めることによって骨密度低下に働く可能性が報告されています。
従って、アディポネクチンは骨にとっては負に作用する可能性が考えられます。 しかしながら一方で、低骨代謝回転を呈する糖尿病患者においては、骨代謝回転を促進するアディポネクチンはむしろ善玉ホルモンとして働く可能性が考えられます。
我々は、高アディポネクチン血症が椎体骨折リスクの上昇と関連することを示す結果を得ていますが(上記)、一方でアディポネクチン高値の状態では血糖改善後に骨代謝回転が亢進すること、アディポネクチン高値であれば1年後の骨密度減少が抑制されることも見出しています。
従って、健常者においては高アディポネクチン血症は骨代謝回転亢進による骨密度低下、骨折リスク上昇に寄与すると考えられますが、低骨代謝回転を呈する2型糖尿病患者においてはむしろ保護的に働く可能性も考えられます。
ADMA、SDMA
Nitric oxide synthases (NOSs)は一酸化窒素(NO)を産生することにより動脈硬化形成を抑制することは知られています。一方で近年、NO/NOSの骨における役割についても報告がなされてきています。endothelial NOS (eNOS)は骨芽細胞においても発現しており、NOを産生することにより骨芽細胞の分化、石灰化を促進します。
内因性NOSs阻害物質であるasymmetric dimethylarginine (ADMA)はNOSs活性を阻害することによりNO産生を抑制することから悪玉物質として考えられています。 また、2型糖尿病ではNO合成が低下していることが知られていますが、一方で血中ADMA濃度も上昇していることも報告されています。
従って、ADMAが2型糖尿病患者の骨代謝異常に関連している可能性が考えられています。 そこで、我々は血中ADMAと構造的異性体であるsymmetric dimethylarginine (SDMA)を測定し、骨密度、骨代謝マーカー、椎体骨折との関連性を検討しました。
血清IGF-I値は閉経後2型糖尿病女性において、骨密度測定に取って代わる指標
椎体骨折をレントゲンにて評価し、血中ADMAとの関連性を年齢、糖尿病罹病期間、腰椎BMD、BMI、血清クレアチニン、HbA1c、糖尿病細小血管障害、糖尿病治療薬の有無などにて補正したロジスティック回帰分析を行いました。
2型糖尿病男性においては、我々の予想通りに血中ADMA高値であれば、1SD上昇毎に約1.46倍の椎体骨折リスク上昇が認められました。SDMAにおいても同様の傾向は認めたものの、有意差は認められませんでした。 一方で、閉経後女性においては、我々の予想に反して血中SDMAが高値であれば椎体骨折リスクが約2.58倍に上昇することが認められました。
従って、男性では血中ADMAが、閉経後女性では血中SDMAが椎体骨折に関連していることが示唆され、椎体骨折リスクの評価項目として有用である可能性が考えられます。
しかしながら、なぜSDMAと骨折リスクが関係するのかについての機序は不明の状態であり、今後の検討が必要と考えています。
【研究4】糖尿病の動脈硬化症
2型糖尿病患者では動脈硬化リスクが著明に上昇している
糖尿病患者では動脈硬化リスクが著明に上昇していることが知られています。
健常者に比較して約3-5倍の心血管疾患の発症リスク上昇が報告されており、糖尿病患者における動脈硬化抑制をどのようにしていくか、なぜこれほどのリスク上昇があるのかについて検討をする必要があります。
大規模研究であるUKPDSでは糖尿病の治療のみでは大血管障害を完全に抑制できないことが明らかとなっていることから、糖尿病治療以外にも+αの治療・管理が必要であると思われます。従って、我々はその病態を検索し、治療・予防策を考えていくことが我々糖尿病専門医としての責務であると考えています。
私たちは、内分泌学的な観点から糖尿病患者における動脈硬化促進因子あるいは抑制因子の検討を行っています。
DHEA-S低下は閉経後2型糖尿病患者の動脈硬化に関与する
ヒトは加齢とともにホルモン環境が変化します。代表的なものは女性の閉経であり、menopauseと呼ばれます。閉経後は急速な女性ホルモンの減少・消失に伴い、骨粗鬆症や動脈硬化といった様々な疾患のリスクが高くなってきます。
加齢に伴う内分泌環境の変化には他にも、成長ホルモン系の低下(somatopause)、そしてadrenopauseと呼ばれる副腎からのDHEAの低下があります。
近年、副腎から全身へ分泌されるDHEAの加齢に伴う低下が、加齢に伴い発症頻度が増加する疾患と関連することが報告され、さらに寿命にも影響を与えることが示唆されています。
これまでに血糖コントロール不良の糖尿病患者では、血中DHEAが低下することが報告されています。一方、基礎的研究によりDHEAは動脈硬化形成を抑制することが報告されています。 我々は今回、2型糖尿病患者における血中DHEAと動脈硬化の関連性を検討するために、血中DHEA-Sと動脈硬化指標である脈波伝播速度(PWV)と頸動脈内膜中膜厚肥厚(IMT)の関連性を横断的に検討しました。
2型糖尿病患者における血中DHEAと動脈硬化の関連性
2型糖尿病閉経後女性(右図)、男性において、血中DHEA-Sと両動脈硬化指標との間には有意な負の相関を認めました。
このことは、血中DHEA-Sが低下すると動脈硬化が進むことを示唆する所見と考えられました。
しかし、DHEA-Sの低下には年齢や体格、血糖コントロールの影響を受ける可能性があるため、重回帰分析にてこれらの因子を補正して検討を行いました。 閉経後2型糖尿女性においては、年齢、糖尿病罹病期間、BMI、血圧、コレステロール、HbA1cにて補正した重回帰分析においても、血中DHEA-SとPWVの間にはβ=-0.18、IMTとの間にはβ=-0.25で有意に負の相関を認めることが示唆されました。
従って、2型糖尿病閉経後女性においても、血中DHEAの低下が動脈硬化促進に働いていることが示唆されます。
米国ではDHEAの重要性が考えられており、実際にDHEAサプリメントを購入することが可能となっています。一方で、我が国では未だ保険認可はされていません。従って、超高齢化時代を迎えた我が国日本においてもDHEAに焦点を当てた治療が求められると考えています。 本研究は、内分泌学会より優秀演題として高い評価を得ました。 我々は、今後の動脈硬化予防に向けて非常に重要な知見であると考えています。
ADMA高値は2型糖尿病の動脈硬化増悪因子である
ADMA高値は2型糖尿病の動脈硬化増悪因子である
Asymmetric dimethylarginine (ADMA)はタンパクがメチル化修飾を受け、生体内で産生される内因性のNOS阻害物質です。ADMAによりNO産生が抑制され、内皮依存性の血管収縮反応が惹起され、その結果、動脈硬化を促進すると考えられています。
また、これまでに高血糖状態ではADMAの代謝が低下することより、血中ADMAが上昇することも報告されています。
これまでにいくつかの研究により、血中ADMA上昇が動脈硬化、心血管疾患の発症の誘因になることが示唆されています。しかしながら、これまでに糖尿病患者におけるADMAと動脈硬化性疾患との関連性についての報告はありませんでした。
そこで、我々は2型糖尿病患者における血中ADMAと動脈硬化指標、心血管疾患との関連を横断的、縦断的検討を行いました。
ADMA高値は2型糖尿病の動脈硬化増悪因子である
2型糖尿病患者450名を対象に、まず心血管疾患(CVD)と血中ADMA濃度との関連性を検討しました。対象としてADMAの構造異性体であり活性を持たないSDMAも同時に測定しました。
CVD既往の有り群はなし群に比較して、ADMAが有意に高値であることを認めました(0.66±0.22 vs 0.59±0.20 μmol/L、p0.01)。
さらに、年齢、性別、糖尿病罹病期間、BMI、収縮期血圧、LDL-C、HDL-C、eGFR、HbA1c、各種糖尿病薬剤・降圧薬・スタチン・アスピリン使用、現在喫煙の有無にて補正したロジスティック回帰分析にて、血中ADMAが1SD増加する毎にCVDのリスクは約7倍に増加することが明らかとなりました。
CVDのリスクは約7倍
次ぎに、動脈硬化指標であるPWVと血中ADMAとの相関関係を検討しています。 左図に示すように、血中ADMAとPWVの間には有意な正の相関を認めました。 さらに、各交絡因子にて補正した重回帰分析においても有意な血中ADMAとPWVの負の相関関係が認められました。
ADMAとPWVの負の相関関係
さらに我々は2型糖尿病患者の6ヶ月間の観察研究にて、血中ADMAと動脈硬化指標の進展との関連性を検討しました。まず血中ADMA濃度に従い、3群に分けて検討を行いました。
右図に示すように、ADMA低値群に比較して高値群では有意にIMTが増加することが認められました。 次ぎに、動脈硬化リスク因子にて補正した重回帰分析にて、血中ADMAとIMT増加との関連性を検討しました。
年齢、糖尿病罹病期間、BMI、収縮期血圧、LDL-C、HDL-C、eGFR、HbA1cにて補正した重回帰分析にて、血中ADMAとIMT変化との間には有意な正の相関を認めました(β=0.35, p<0.03)。
これらのことから、2型糖尿病患者において他の動脈硬化リスクとは独立してADMA高値は動脈硬化増悪に関連することが示唆されました。
海外留学を決意したエピソード
僕自身が海外留学をすることを若い時から想像していたと思いますか? 答えは「NO」です。 学生のころは英語が苦手で、大学センター試験ではいつも英語が足を引っ張っていた僕が、海外留学をするなんて、学生のときはまったく考えていませんでした。 では、いつ頃から海外留学を意識するようになったか。 それは初期研修を終えた3年目くらいからですかね。
どうして海外留学をすることを決意したのか?
僕は研修医のころから、上級医の先生方から、常に経験した症例を深く掘り下げて考えること、そして学会発表すべき症例に出くわしたときには、最終的には論文にすべし!ということを教わってきました。 現在のローテート研修では、僕たちの頃のようにある領域を掘り下げて考えるということはなかなかできないと思います。
ただし、広い分野を経験できるというメリットはありますが。 素晴らしい上級医のもとで、研修をさせてもらい、おかげで多くの発表と論文作成を研修医の頃からさせてもらいました(興味のある方は研究業績を参照してみてください)。
もちろん、その当時は日本語の論文だったのですが、それでも論文を書くという作業を通じて、アカデミックな感覚が身につくようになり、自分の経験した特異なケースを世に出して皆さんと共有しなければ、という気持ちになるようになりました。
島根県邑智郡岩見町
研修3年目に過ごした島根県邑智郡岩見町の邑智病院 スキー場が近くにあり、冬は雪がたくさん降りました。 写真では当時の僕の愛車RX-7が雪に埋もれています。
邑智病院は山間地でこの辺一帯での唯一の救急病院で、すごく忙しい毎日でしたが、非常に充実した毎日を過ごすことができました。 3年目は医局関係の上級医は病院にはおらず、一般医として胃カメラや腹部エコーなどをしていましたので、学会発表などのアカデミックなことを指導してくれる人はいませんでした。
でも、邑智病院に勤務していた時は患者さんも多く、かなり忙しかったのですが、学会発表を行い、論文作成を2つほどしました。 当時の邑智病院は学会発表に行くといって休暇届けを出したら、出張費を出してもらえました。 当時は邑智病院の勤務医が自前の症例を進んで学会発表するということは珍しかったんだと思います。
そう、僕はこの頃から自分がした仕事、発見したこと、自分の考えを世に出すことが楽しいと思えるようになりました。 慣れない英語の論文を少しずつ読むようになり、そうすると、やはりいつかは世界に通じる仕事がしてみたい、という気持ちが芽生えてきました。
これが、最初に海外を意識したときでしょうか。 島根県の山奥にある小さな野戦病院で感じたことが、始まりだったと思います。
加藤譲教授の退官、杉本利嗣新教授との出会い、大学院進学
市中病院での研修を終え、4年目になった時には大学へ戻りました。
僕が入局を決めた時から、決まっていたことではありましたが、その頃には教授であった加藤譲先生が退官されるというタイミングでした。 加藤先生は下垂体ホルモンがご専門でしたが、糖尿病も含めて幅広く患者さんを見ておられ、患者さんの病態を論理的に考えて薬剤を処方するということを教えていただき、僕の診療スタイルの基礎を教えていただきました。 また、これも決めていたことなんですが、新しい教授が就任されたら、その教授のもとで大学院に入り、研究をしようと思っていました。
僕自身は、糖尿病と動脈硬化について興味があり、どんな教授がこられるのだろう、できればその分野の仕事がしてみたいとドキドキしていました。 新しく着任された杉本先生のご専門はカルシウム骨代謝、今までで一番縁の遠かった分野で、すごく戸惑いました。 その頃、うちの医局には僕の同期が2人いて、同時に研究をスタートさせたわけですが、杉本先生から与えられたテーマは3つ。

①糖尿病と骨 ②脂質と骨 ③ステロイドと骨
僕はその頃、脂肪細胞から分泌されるホルモンが糖代謝、動脈硬化に深くかかわっていることが話題となっていたので、迷わず②の脂質と骨の研究テーマを選びました。
このテーマが現在まで続いているのですが、今でも非常に興味深く、楽しんでやっている仕事になっています。
医局の人たちと行ったグラバー園。
この頃、長崎であった西部腎臓学会に参加して、医局の人たちと行ったグラバー園。 僕は一番左で長男を抱っこしています。
この時はちょうど夏休みをもらっていて、家族での長崎旅行も兼ねて行ってきました。 天気も良くて楽しかったですね。
初めての海外学会、オーストラリアで口頭発表
初めての海外学会、オーストラリア
2005年から大学院に入り、研究を開始しました。
“アディポネクチンの骨芽細胞への作用”についての研究。 アディポネクチンは当時、善玉のアディポカインとして注目されており、糖代謝と動脈硬化を改善する作用があると報告されており、注目のホルモンでした。 当然、最初はいろいろと実験をやってみましたがうまくいかず、siRNAを使用してアディポネクチンの受容体の発現を抑制するという実験系でようやく結果が出始めて、2006年に骨代謝学会にて発表を行いました。
これが、どういうわけかTravel Awardを頂くこととなり、オーストラリアの学会で口頭発表を行うこととなりました。 当初、いつか海外の学会で発表できたらいいなあと漠然と思っていたことが、いきなりかなうことになり、英語もほとんどしゃべれない上に準備もそこそこで発表を行いました。
これが仕事で海外に行った初めてのエピソードです。 写真は同期の山本(旧姓林)先生と学会会場のホテルでコーヒーを飲んだときの写真です。 何事もやってみるもんですね、英語もへたくそでしたが、なんとか口頭発表&質疑応答を終え、海外留学への意識も高まるようになった出来事でした。
なぜ海外留学が必要だと思ったのか?
臨床医にとって海外留学が必ずしも吉と出るかどうかはわかりません。
むしろ、臨床をメインで人生を送るのならば海外に基礎研究で留学することは時間とお金のロスにもなりますし、それだけ臨床経験をロスするということになります。 今でもそうですが、はたして研究活動を今後も続けていくのだろうか?という自問がいつもあります。
研究活動を行っていくことが自分の人生にとってのメリットになるのか?デメリットになるのか? いろいろと考えましたが、やはり今しかできないことをやって人間としても、医師としても幅広い経験を持つことはプラスになるはずだ、人生一度きりなので一度は海外の研究者というやつを見てやろう、英会話ができるようになることはメリットがあるはずだ、人がまねのできないような経験をつんでやろう、家族にとってもメリットがあるはずだ、自分がどこまでできるのか世界に挑戦してやろう、留学後に新たな技術をお土産に国内でも何かしでかしてやろう、 そう決心したのが2007年ころのことだと思います。

基本、体育会系な体質で、どの分野でも一番になってやるという生意気な意識もあり(今でもありますが)、留学したいという旨を杉本教授に話しました。 杉本先生からは基本OKでしたが、まずは「あいつが留学するのは当然だ」と医局内でも思われるように、他の医師から認められるような業績を作るようにといわれました。
地方の医局内で一番いなれないやつが留学してもしょうがないな、という気持ちになり、さらに研究活動を加速することになりました。
骨粗鬆症学会での学術奨励賞
その後、幸運なことに始めて行った臨床研究が骨粗鬆症学会の学術奨励賞に選択され、論文もInternational Osteoporosisという雑誌にacceptされ、なんとなく研究と論文を書くということが分かるようになりました。
英語で研究論文を書くという作業は想像以上に大変でした。しかし、それでもこれまでに症例報告を含めて論文を書いてきた経験があったので、比較的はやく(同級生たちに比べて)書き上げて上司の先生に校閲をいただけるようにはなっていたと思います。
准教授の山口徹先生のおかげもあり、留学までの間に十数個の論文を書き上げました。 大学院の間は、ひたすら研究をするということ、そしてそれをちゃんと論文化するということに従事し、そういった作業に慣れると同時に、自分で仮説を立てて研究の方法を考えるということができるようになってきました。
今でも思うことですが、研究をすることで一番大切なことは論文を書くということではなく、自分で論理的な仮説をたてて、それに向けてどのようにして研究をするか、そしてディスカッションできるかという能力を高めることだと思っています。 こういった過程は、臨床的な能力を育ててくれるだけでなく、人生も豊にしてくれると思っています。
留学先訪問
留学先訪問
研究をするということ、論文を書くということがなんとかできるようになって、いよいよ杉本教授に留学に行きたいと再度お願いしたのが2008年始め頃だったでしょうか。
「留学先でどこか行きたいところがあるか?」の問いに、 「そうか!行き先を決めないと! でもどうすれば・・・」とハッと目が覚めました。
といってもどこにどんな大学があるのか、今でこそなんとなく分かるようにはなってきていますが、その頃はまったく世界の大学や研究所の名前、事情などは全く知らず、結局杉本教授のもとの教室にいて、現在は近畿大学再生機能医学講座教授の梶博史先生のつてで、カナダのモントリオールにあるマギル大学カルシウム研究室のGeoffrey N. Hendy教授を紹介していただきました。

梶先生もマギル大学に留学経験があり、Prof. Hendyとともに約2年半研究をしていたそうで、ProNASなどのかなりいい雑誌に研究を報告しておられ、現在もポスドクはwellcomeであるということでした。 平成20年(2008年)の秋、始めて留学先であるモントリオールにASBMRの学会参加のために来ました。2008年のASBMRの開催年がなんと偶然にも留学先のモントリオールということに運命的なものを感じました。 このときに、始めてDr. Hendyとお会いして、ラボの内部などの見学をさせていただきました。
正直、もう少し色んな最先端の研究機器があるのかと思っていましたが、建物も古く、ラボの中にはたくさんの古い機械があり、逆にびっくりしました。 留学というものに幻想をいだいていた僕は、ようやく留学するということを現実的にとらえるようになった瞬間でもありました。そう、それまでは実は、留学するということを夢とでも思っていたように思います。
留学先の教授にも直接お会いし、緊張と拙い英語のためにほとんど何も話ができないながらも、固く握手をした記憶は鮮明に残っています。 同時にこのときに、モントリオールアカデミー会の幹事をされていた武田直也先生とお会いして、いろんなモントリオールでの生活事情の情報についてもいただき、かなりモントリオール市内も歩いて探索しました。
カナダ留学に向けて
臨床医が研究留学をするということ、正解であるのか、はたまたただの遠回りであるのか。。。
英会話能力がないのに大丈夫なのか。。。
当時は長男がまだ5歳、一番下の子がまだ1歳、合計5人の子供を連れての海外生活、本当に大丈夫なのか。。。
家族を巻き込んでいいんだろうか。。。
貯金はある程度したものの、現地での契約金はわずかであり、生活していけるのか。。。

正直、不安はつきませんでした。 ただ、なんとなくいけるんじゃないか?少なくともいい経験にはなるだろう。 いや、なんか大きな仕事を成し遂げてやる! という変な自信をもっていたのは、僕が若かったからかも知れませんね。 あるいは家族の支えがあったからでしょうか。 海外にでることに不安のない人はいないでしょう。
もちろん、留学前には不安をなるべく少なくするように情報収集など、たくさん努力はしました。 それでも不安がなくなることなんてあり得ません。 自分で何も行動しない人に、本当の幸せな人生があるでしょうか? それは分かりません。 しかし、新しい環境にでるときには勇気と思い切りが必要であることは言うまでもないと思います。
時には思い切って新たな環境に飛び込むことも、長い人生の中で必要なことなんじゃないでしょうか? もし仮に失敗だったとして、その期間は取り戻せないものでしょうか? 自問自答はつきませんが、海外留学を志し、大学院での研究生活を過ごしてきた4年間は非常に充実したものでした。
さらなるstep upを目指して、僕は前に進むことにしました。 僕にとっては良い選択だったと信じています。
海外留学前に 【カナダでは自分から動きださないと始まらない】
まず、海外留学をすることが本格的に決まったのは2009年11月頃でしょうか。
留学先になるMcGill大学カルシウム研究室のDr. Geoffrey N. Hendyと留学中の給料と留学後の研究プロジェクトについて、メールにてやりとりをしました。 給料については、McGill大学の最低賃金である年間30,000カナダドルは保証するが、fellowshipなどを獲得する努力をすることを約束。期間は2-3年。
実際に留学前にいくつかのfellowshipに応募し、ケベック州のFRSQというfellowshipをいただくことができました。 研究プロジェクトについては、現在Dr. HendyがカナダのCIHRからグラントをもらっているmeninの骨におけるin vivoの役割を研究するということ言われました。
海外留学中で僕のしたかったことは動物実験でしたので、これも同意しました。 日本での研究はすべて患者さんを対象とした臨床研究と培養細胞を用いたin vitroの研究でした。 留学中は動物実験をすることにより、研究手技を広げたいという思いがありました。
しかも、Dr. Hendyの研究課題は遺伝子改変動物を用いた研究であり、僕がもっとも習いたいことであり、願ったり叶ったりでした。 人によってはこの段階から給料の交渉やプロジェクトについてのディスカッションが始まるようですが、かくして僕の留学前のボスとの交渉はなんなく終わりました。
研究を始めるための準備期間
今思えば実際に研究をスタートする前に、ぼーっとしていたもったいない時間が長かったように思います。 そう、ここカナダでは自分から動きださないと始まらないということです。 しかも何度も催促しないといけない。 僕の研究は遺伝子改変マウスを使った実験なので、まずはMcGill大学のAnimal Care Unitでの研修と試験のパスが必要なのです。
研修も試験もかなり容易なものでしたが、それでも不慣れな英語を駆使しての初めてのことであり、非常に緊張しました。
その後にはRadioactiveな実験をするための研修と試験などもあり、実際の自分の実験がスタートするまでは2-3ヶ月もあったでしょうか。 それまではテクニシャンの後を追い、マウスの扱い方やgenotypingの方法、ラボ内の機器の使い方などを習って過ごしました。
Menin project
内分泌疾患のひとつに多発性内分泌腺腫症1型という疾患があります。
MEN1遺伝子の異常のために多発性に内分泌腺(副甲状腺、下垂体、膵臓など)に腫瘍を形成する疾患であり、僕自身も1家系の患者さんを見させていただいたことがある疾患です。基本的には珍しい病気であり、人生でもそれほど多く経験することはないような疾患です。
そのMEN1という遺伝子は、核内タンパクであるmeninをコードしており、meninは内分泌腺のみならずどの他の多くの細胞でも発現していることが確認されています。 これまでの梶博史先生とDr. Hendyのグループが中心となり、meninの骨芽細胞での役割についてin vitroの研究がすでになされておりましたが、遺伝子改変マウスを用いてin vivoでの役割を研究することが僕の研究課題です。
すなわち、僕の研究はmeninの骨芽細胞特異的ノックアウトマウスの作成&解析、逆にmeninを過剰発現したトランスジェニックマウスの作成&解析により、meninの生体での役割を研究するということです。
McGill大学カルシウム研究室
McGill大学はフランス語圏であるケベック州の中にある英語系の大学で、海外からも多くの学生、留学生、そして研究者が訪れるところです。
McGill大学のstaffも海外出身の移民が多く存在するようで、実際にカルシウム研究室のチーフももとはユダヤ系の移民なのだそうです。 カルシウム研究室には4人のprofessorがおり、僕のボスであるDr. Hendyはその中の1人です。 それぞれのprofessorはカルシウムや骨代謝に関連した研究をしていましたが、基本的には独立した研究内容で、Dr. HendyはMen1遺伝子にコードされたタンパクであるmeninの働きやCalcium sensing receptorの働きを主に研究課題としていたようです。
カルシウム研究室で働いていた人たちの元の国籍はさまざまで、おおよそカナダ人が4分の1程度で、あとは中国、韓国、インド、ベトナム、イタリア、イギリス、マリ共和国、アメリカ、イラン、フランスなどから来ている研究者・技術者でした。
海外留学を終え、後輩たちにできることは
最近のニュースでは、海外留学を目指す若者が少なくなってきたと言われています。 短期の語学留学やワーキングホリデーなどで海外に行く人たちはまだいるとは思いますが、しっかり腰を据えた留学、あるいは海外進出というのはやはり勇気のいることだと思います。
僕は医師免許証を持っているので、日本での職に困ることはなく、海外留学はしなくても何の問題もなく日本で生活していけます。また、海外留学は経済的な負担も大きく、臨床家としてのキャリアや海外での生活についてなど、やはり留学前には不安に思っていることがたくさんありました。 そこで、海外留学経験者として、後輩に何か伝えることはできないかと思いアンケート調査を行いました。
1.主に島根大学医学部に在籍している学生や研修医の後輩の方たちに協力をいただきアンケート調査を行いました。
2.それに基づき、モントリオールアカデミー会に所属している海外留学中あるいは海外留学を終えた先生方にアンケートに答えていただきました。
大規模なアンケートではなく、恐縮ですが、誰かの何かのお役にたつことがあればうれしく思います。
エール君

アンケート調査にご協力をいただきました方々、ありがとうございました!

医学生や若手の医師たちは海外留学について、実際どう思っているのでしょうか?
Q1.将来的にできれば留学したいと思う?
Q1.将来的にできれば留学したいと思う?
まず初めに、医学生・若手医師の人たちが海外留学をしたいと思っているのか、あるいは留学にはまったく興味がないのかどうかを聞いてみました。
意外なことに、83%の人が「はい」と、海外留学に興味があるとの回答でした。 また、「いいえ」の人のほとんどはすでに医師をされていて、すでに自分の将来の目標設定をしていて、留学をすることは必要ないと感じている方でした。 少数にはやはり家庭の事情などがあり、現実的に留学が困難だという方もおられました。
Q2.海外留学することは今後の自分のキャリアに役立つと思う?
Q2.海外留学することは今後の自分のキャリアに役立つと思う?
次に、留学とキャリアについて関係があると思っているかどうかについて聞いてみました。
これについては、Q1で「いいえ」であった人も含めて100%の人が留学することは自分のキャリアにとってプラスに働くと思っているという結果でした。 ということは、皆さんやはり“海外留学はなんらかのメリットがあるはずだ”という認識でいるということでしょうか。
Q3.海外留学することは今後の自分の夢の達成に役立つと思う?
Q3.海外留学することは今後の自分の夢の達成に役立つと思う?
Q2でキャリアについては有利に働くと思っているということですが、では自分自身の夢に役立つと思っているのか質問してみました。
Q1で「いいえ」と答えた人のほとんどが、ここでも「いいえ」でした。 アンケート調査の時点ですでに具体的な自分の夢があって、それに海外留学が必要ないと判断した人たちは、やはり「いいえ」でしたね。 でも、80%の人は、自分の夢を達成するためには海外留学が役に立つと思っているようですね。
意外と、今の医学生・若手医師の間でも海外留学については前向きに考えている方が多いのではないでしょうか。 では、海外留学をするにあたって、障害となる不安材料はなんなんでしょうか?
Q4.留学にあたって不安なことはなんですか?
1位:語学力:16人
2位:経済面:14人
3位:環境・治安:5人
3位:家庭・子供:5人
5位:緊急時・病気:4人
6位:研究成果:3人
6位:帰国後の就職:3人
Q5.留学した先人たちに聞いてみたいことはなんですか?
留学先の選び方
語学能力の程度
留学のための貯蓄
留学のデメリットは
治安について
家族は負担じゃないのか
Q5.留学した先人たちに聞いてみたいことはなんですか?
※海外留学初年度の英会話教室で出会った仲間たち。写真はホームパーティでの1枚。僕は後列の左から2番目。今と全然違う~
Q4とQ5については、僕も留学前には不安に思っていたことばかりなので、本当によく気持ちがわかります。
留学経験者への「海外留学に関する」アンケート編
海外留学に関する」アンケート編
背景
有効回答数 20 人
留学中 8人
帰国後 12人
平均留学期間 2 ± 1 年 (0.5-5年)
男性 20人 (100%)
研究留学 17人
臨床留学 1人
両方 1人
MBA 1人
単身(独身) 3人
+配偶者 2人
+配偶者、子1人 2人
+配偶者、子2人 9人
+配偶者、子3人以上 4人
Q1. 留学先の探し方は?
紹介者あり:12人
自分でアプライした:8人
留学先からの誘い:0人
その他:0人
Q2. 留学先選びの最優先事項は?
研究内容:9人
ボスの人柄:5人
研究室の雰囲気や知名度:4人
留学先の都市:3人
どこでもよかった:3人
選択の余地がなかった:2人
研究者としての待遇:1人
給料: 0人
家族・子供のこと: 0人
その他: 1人 (MBAランキングと学費のバランス)
Q3. 留学の最大のメリットは?
Q3. 留学の最大のメリットは?
異文化に触れられる:9人
研究に専念できる:8人
人脈が広がる:6人
将来のキャリアアップに有用である:5人
業績を上げられる:4人
語学力が身につく:4人
自分の自由な時間が持てる:3人
家族と過ごす時間が増える:3人
海外旅行・観光:2人
経済的に豊かになれる:0人
その他:0人
Q4. 留学の最大のデメリットは?
Q4. 留学の最大のデメリットは?
経済的にマイナス:13人
病気や事故の時に困る:7人
日本に適応できなくなる(復職を含めて):2人
研究面では日本の方がよかった:1人
食事・栄養面で:1人
家族・子供での不安:0人
その他:0人
特になし:1人
留学先の探し方は、やはり医局の上司の紹介や誰かの後任という形で決まるということが多いようです。
一方で、40%の方々は自分でレターを作成してアプライをしたみないですね。 留学先選びの優先事項としては、研究内容をやはり重要視していて、ボスやその研究室の雰囲気なども大切なようですね。
一方で、デメリットとしてはダントツで経済的なこと、次いで病気や事故などのハプニングが起こった時の不安ということですね。
留学経験者に目標やキャリアの達成について
Q1. 留学前の自分の目標が達成できた?
留学前の自分の目標が達成できた
そう思う+ややそう思う:19人(95%)
あまり思わない:1人(5%)
思わない:0人(0%)
ほとんどの方が留学前の自分の目標を達成できたという結果でした。
Q2. 留学が自分のキャリアに繋がった?
留学が自分のキャリアに繋がった?
この質問は留学をすでに終えて帰国した方たちのみ(13人)に質問をしています。
そう思う+ややそう思う:13人(100%)
この質問に関しては、100%がキャリアに繋がったという結果でした。 医学生・若手医師も留学すれば“キャリアに繋がると思う”が100%でしたが、確かに留学をすればキャリアに繋がっているということが明らかになりました。
Q3. 留学先の仕事環境に慣れるまでに、どのくらいの時間を要したか?
留学先の仕事環境に慣れるまでに、どのくらいの時間を要したか?
平均 5 ± 4 ヶ月
最短 0 ヶ月
最長 12 ヶ月
この結果からはだいたい半年くらいまでには職場環境に慣れてくるということです。
逆に言うと、半年くらいは慣れずにストレスを感じていたということになると思います。
Q4. 留学したことを後悔している?
留学したことを後悔している?
そう思う+ややそう思う:2人(10%)
あまり思わない+思わない;18人(90%)
1割の方は留学したことを後悔しているとのことですが、9割は後悔していないという結果であり、多くの方は留学したことに対して良かったと思っているということのようです。
Q5. 将来、若い人たちにも海外留学を経験してほしいと思う?
そう思う:13人(65%)
ややそう思う:7人(35%)
あまりそう思わない:0人(0%)
思わない:0人(0%)
Q6. 将来、自分の子供にも海外留学を経験してほしい?
そう思う:16人(80%)
ややそう思う:4人(20%)
あまりそう思わない:0人(0%)
思わない:0人(0%)
Q6とQ7と合わせて、やはり自分の経験からも若い人たちにも海外留学を是非経験してほしいと思っており、面白いことに、自分の子供は?と聞きなおしてみると、さらに「そう思う」の割合が増えました。
将来、自分の子供にも海外留学を経験してほしい?
※モントリオールアカデミー会会長Shibata先生にご招待いただいたクリスマス会です。 海外のクリスマスは家族で過ごす時間なんですね。アットホームなすごく素敵な雰囲気で、子供たちも楽しんでいましたね。
この項のアンケートからは、海外留学経験者は留学したことによって、目標&キャリアにべフィットを感じているようですね。
さらに、若い人たちや自分の子供たちにも、お奨めなようですね。 僕の子供たちにも、是非一生のうちに一度は海外での仕事の経験をしてもらい、広い視野を持ってもらいたいと思っています。
海外留学によって得たこと
Q1. 留学前に比べて視野が広がった?
Q1. 留学前に比べて視野が広がった?
そう思う+ややそう思う:20人(100%)
あまり思わない+思わない:0人(0%)
全員が留学前よりも視野が広がったという答えでした。 仕事上の知識だけではなく、人としての考え方なども含まれているのではないでしょうか。
Q2. 留学前に比べて知的領域が広がった?
Q2. 留学前に比べて知的領域が広がった?
そう思う+ややそう思う:19人(95%)
あまり思わない+思わない:1人(5%)
ほとんどの方が知的領域も広がったと感じているようですね。
Q3. 留学したことによって、新たな知識・技術を得た?
Q3. 留学したことによって、新たな知識・技術を得た?
そう思う+ややそう思う:19人(95%)
あまり思わない+思わない:1人(5%)
ここでも、ほとんどの方が新たな知識・技術を得たと感じているようです。
ラボのあるロイヤルビクトリア病院 留学初年度の僕(ラボにて)
Q4. 人脈が広がった?
Q4. 人脈が広がった?
そう思う+ややそう思う:20人(100%)
あまり思わない:0人(0%)
思わない:0人(0%)
やはり、留学することによって人脈は確実に広がる。 特に、自分の研究分野以外や医学以外の分野とも交流することができますので、多くの方たちと交流することができる。もちろん、同じ領域の専門家との交流もできます。
Q5. 帰国後の臨床現場復帰については?
Q5. 帰国後の臨床現場復帰については?
すでに留学を終えて帰国、現場復帰している方たちに質問をしました。
容易+比較的容易であった:8人(66.7%)
やや苦労+苦労した:4人(33.3%) 
3分の1の方は苦労を感じたようですが、3分の2の方たちは問題なく現場復帰できたようです。
実際に苦労したという方たちの多くは外科系の先生が多かったようです。
視野、知的領域、知識・技術、人脈ともに皆さん良い経験をされてたようですね。
帰国後の職場復帰についても3分の2の方たちは、問題なくいけたようですね。 僕自身も帰国後、臨床の雰囲気に戻るまでに約1か月くらいかかったように思いますが、外来業務なども2週間もあれば感覚が戻ったように思います。
留学での治安、安全について
Q1. 留学前に思っていたよりも海外での生活は易しかった?
Q1. 留学前に思っていたよりも海外での生活は易しかった?
容易だった+比較的容易:16人(80%)
やや難しかった+難しかった:4人(20%)
アンケートからはほとんどの人は留学前に想像していたよりも、生活することに困難な状況ではなかったようですね。
Q2. 治安についての印象は?
Q2. 治安についての印象は?
安全:17人(85%)
やや安全:3人(15%)
やや危険:0人(0%)
危険:0人(0%)
モントリオールは治安に関しては安心できる街で、夜間でも女子大学生などが歩いていることも多く、意外と安全な街でした。
Q3. 実際に犯罪にあったことがありますか?
Q3. 実際に犯罪にあったことがありますか?
「はい」が90%で、ほとんどの方は留学中に犯罪とは無縁だったようですね。
この結果からも、やはりモントリオールという街は比較的安全といえるのではないでしょうか。 もちろん、海外生活ということで、日本にいた時よりもそれなりに気を付けていた結果だと思います。
Q4. 実際に犯罪にあった方に質問、どのような犯罪ですか?
車上荒らし:1人
スキミング:1人
犯罪を経験された方たちどちらも軽犯罪のようですね。
モントリオールという街は、比較的安全な街であると言ってもいいと思います。
また、公園で薬物を使用しているような人や「買わないか?」と声をかけられた人もいるそうです。 やはり、安全とはいいつつも、日本人はそれなりに気を使って生活はする必要はあると思いますね。
医学生・若手医師が最も不安に思っている語学能力について
Q1. 留学する前に英会話を習っていましたか?
Q1. 留学する前に英会話を習っていましたか?
「はい」が4人に1人しかいないという結果でした。
この結果には少しびっくりしましたが、あまり英会話を事前に習ったりしない方が多いんですね。
Q2. 留学前から英会話の勉強は必要である?
Q2. 留学前から英会話の勉強は必要である?
そう思う+ややそう思う:15人(75%)
あまり思わない+思わない:5人(25%)
Q1で英会話を習っていなかった人が多かった半面、今回の質問ではやはり英会話の勉強は必要であるという方が多くを占めました。
留学してみたらやっぱり勉強した方がよかったという後悔の結果なのでしょうか?
Q3. 英会話ができなくても留学はなんとかなると思う?a
Q3. 英会話ができなくても留学はなんとかなると思う?
そう思う+ややそう思う:14人(70%)
あまり思わない+思わない:6人(30%)
英会話ができなくてもなんとかなるという方が多い傾向にあるものの、そう思わないという人もおられますね。
僕個人的には、確かに仕事という面に関しては、片言でもなんとかやっていけるように思いますが、生活という面ではやはり英会話はできないと苦労するように思いますね。
ただし、留学を志してきた方を対象としているので、できないというレベルが高くてバイアスがあるように思いますね。
Q4. 留学するための英語能力はどれくらい必要と思うか?
留学するための英語能力留学するための英語能力
次に、左の表を参考にしてもらい、留学するために必要な英語レベルはどれくらいと思うかということを質問してみました。
経験者の意見は右図の通り、比較的ばらばらのようですが、平均をだすと レベル5 が必要レベルという結果でした。
TOEICで700点くらい、英検で準1級と2級の間というところでしょうか。
Q5. 自分自身の英語能力は? (留学前と後について)
Q1. 留学する前に英会話を習っていましたか?
自己評価では、 留学前が平均レベル4であったのが、 留学後には平均レベル6に上昇しています。
グラフに示しますように、すべての方が、留学前に比較して語の方が英会話レベルが上がったとの回答でした。
Q6. 留学前に比較して、英会話が上達した?
Q6. 留学前に比較して、英会話が上達した?
そう思う+ややそう思う:18人(90%)
あまり思わない+思わない:2人(10%)
やはり、多くの人は自分でも英会話が上達していると感じているようですね。
Q7. 留学前に比較して、英作文が上達した?
Q7. 留学前に比較して、英作文が上達した?
そう思う+ややそう思う:16人(80%)
あまり思わない+思わない:4人(20%)
Q6の英会話に比較すれば、やや英作文は傾向が落ちますが、それでも多くの方は英作文も上達したと実感しているようですね。
Q8. 留学前に想像していたよりも英語が上達しなかった?
Q8. 留学前に想像していたよりも英語が上達しなかった?
そう思う+ややそう思う:10人(50%)
あまり思わない+思わない:10人(50%)
この質問は半分に分かれました。 留学前に期待していたレベルが個々によって違う可能性はありますが、期待していたよりかは・・・というところでしょうか。
やはり当然かもしれませんが、留学すれば英語能力はほぼ確実に伸びますね。
留学経験者としては、留学前からなんらかの英会話の勉強は必要で、TOEICで700点くらいは必要だということです。
ただし、英会話が得意でなくても、留学はなんとかなるとも感じているようですね。
皆の前で恐竜についてのプレゼン
小学校の行事の風景。うちの長男(写真中央の白シャツに黒ズボン)がスライドを使って、皆の前で恐竜についてのプレゼンをしているところです。もちろん英語で。子供の英語能力の飛躍はすごかったですね!子供の順応能力は大人の比ではないですね。
留学先:フランス語について
Q1. フランス語が話せるようになりましたか?
Q1. フランス語が話せるようになりましたか?
そう思う+ややそう思う:1人
あまり思わない+思わない:19人
やはり、皆さんフランス語までは手が回らないようですね。 僕もまったくフランス語はだめでした。
Q2. 仕事をする上で、フランス語が話せないとダメだ?
Q2. 仕事をする上で、フランス語が話せないとダメだ?
そう思う+ややそう思う:5人
あまり思わない+思わない:14人
街中にはフランス語しか話せない方がたくさんいますが、研究室では英語ができる人が大半であるように思います。もちろん第2言語が英語という人も多くいるので、フランス語ができる方がいいですが。 患者さんを相手にする場合などはもちろんフランス語が話せた方がいいと思います。 僕自身は英語系のMcGill大学で仕事をしていたので、英語だけで全然OKでした。
4分の1の方たちが「そう思う+ややそう思う」だったのは、僕にとってはちょっと意外な結果でした。
Q3. 生活をする上で、フランス語が話せないとダメだ?
Q3. 生活をする上で、フランス語が話せないとダメだ?
そう思う+ややそう思う:5人
あまり思わない+思わない:15人
先ほどの仕事についての質問と同じような傾向ですが、「思わない」とした人数が減り、「あまり思わない」の数が増えたようですね。
細かいですが、生活の面では仕事の面よりはフランス語ができる方が良いと感じているのかも知れませんね。 実際に、街中ではフランス語しか話せない人や、看板がすべてフランス語だったり、メニューがフランス語だったりで、そう言った面では苦労することは多かったように思いますね。
Q4. フランス語圏に留学して良かった?
Q4. フランス語圏に留学して良かった?
そう思う+ややそう思う:11人
あまり思わない+思わない:9人
この質問は別れましたね。 確かに、異文化に触れるという意味では、ケベック州・モントリオールはカナダの中でも変わった文化だと思います。
街並みもアメリカっぽい建物もあれば、ヨーロッパ風のものもあり、町の看板はフランス語で、テレビの多くのチャンネルはフランス語放送でしたね。 ほとんどの人はフランス語は話せなくても、半分くらいの人はフランス語圏に来たことに喜びを感じていたようですね。僕自身もその一人ですが。
これから留学先を探す方もおられるかもしれません。英語圏でもフランス語圏でもないヨーロッパの国に留学するという方もおられると思います。 研究者として留学する場合には、仕事のほとんどは英語でなんとかなるように思います。
なので、異文化に触れ、視野を広げたいという方であれば、モントリオールのように多言語の地域に行くのもいいかも知れませんね。
zzz
ラボのマリ共和国出身のテクニシャンがくれた民族衣装。 マリはフランス語圏ですが、モントリオールにはアフリカなどのフランス語圏の国々からの移民がたくさんいます。
テクニシャンの彼は、とても陽気でいつも笑顔で、場を和ましてくれる人でした。 僕の送別会の時に、僕は彼に日本のお箸を、彼は僕にこの民族衣装をくれました。
今頃元気に研究してるのかなぁ
経済面について
Q1. 留学中の給料はどこからもらっていたか?
留学先:6人
留学先+奨学金:5人
奨学金:3人
自費:2人
日本の所属+奨学金: 2人
留学先+日本の所属:1人
留学先+奨学金+日本の所属: 1人
(奨学金には助成金なども含まれる)
多くの方は留学先のラボからお給料をもらっているようですね。
昔は日本の所属からお金が出て留学するということが多かったと聞いていますが、現在は日本の所属からもらっているという人はかなり限られているようですね。
Q2. 留学中の平均年収は?
Q2. 留学中の平均年収は?
ばらつきが多いようにも見えます。
ほとんどお給料がないという方から、6万カナダドルももらっている人まで幅広くいるようですね。 全員の平均としては、 33,625カナダドル という結果でした。
1カナダドル80円として計算すると、だいたい270万円くらいになります。
モントリオールは物価も日本と同じくらい、家賃は日本の都会並みなので、家族4人だとすると270万円ではぎりぎりという感じでしょうか。
Q3. 留学のために貯めた貯金額は?
 Q3. 留学のために貯めた貯金額は?
こちらもばらつきが多いようにも見えますが、 全体の平均金額は 695万円 でした。
もちろん、留学が家族同伴か、子供の人数や年齢などにも左右されると思いますが、平均的には約600-700万円くらいということになります。
やはり、留学のための資金の準備も必要ですね。
Q4. 留学中は経済的に苦しかった?
Q4. 留学中は経済的に苦しかった?
そう思う+ややそう思う:15人
あまり思わない+思わない:5人
分化の違う地域で、安全に暮らそうと思うと、確かにお金がかかります。
セキュリティのしっかりしているアパートなんかだと、やはりかなり家賃も高くなりますし、冬はマイナス20度になるモントリオールでは冬の準備などにもお金が必要です。
もちろん、せっかく海外に来ているので、旅行もしっかりしたいし、お米などの日本食も食べたい。
僕たちも、日本にいた時よりも出費がかさんだように思います。 ちなみに、うちのような大家族になると、法律上3ベッドルームは必要になるようで、家賃にはかなり苦労しましたね。
可能であれば、なるべく多くの準備金を用意したいですね。
僕のラボの周辺 僕のラボの周辺 僕のラボの周辺 僕のラボの周辺
僕のラボの周辺。帰国前、2012年2月の晴れた日です。
留学に際して、家族について
Q1. 家族を連れてきて良かった?
Q1. 家族を連れてきて良かった?
そう思う:16人
思わない:1人
ほとんどの回答者(94%)が「そう思う」という結果でした。 やはり、海外生活ではいろいろとありますが、総合的には“よかった”ということですね。
Q2. 家族が外国語を話せるようになった?a
Q2. 家族が外国語を話せるようになった?
家族を同伴で連れてくることの目的に、語学という方も多いのではないでしょうか。
はい:13人
いいえ:2人
回答をしていただけた方の大半は、家族も外国語が話せるようになったという答えでした。
確かに、子供は学校やデイケアなどで話せる・コミュニケーションがとれるようになっている子が多いと思います。奥様達も現地の英語教室に通っているかたもおられます
Q3. 自分の留学は家族にとって負担でしかない?
 Q3. 自分の留学は家族にとって負担でしかない?
そう思う+ややそう思う: 2人
あまり思わない+思わない:9人
大半の方は負担だけではないと思っておられるようですね。
もちろん、家族の状況はそれぞれで、お子さんの年齢などによっても違うのだと思います。 ケースによっては負担の方が大きいということもあるかも知れませんね。
Q4. 自分の留学は家族にとっても役に立った?
Q4. 自分の留学は家族にとっても役に立った?
そう思う+ややそう思う:17人
あまり思わない+思わない:0人
この質問は、100%で家族にもなんらかの役には立ったという結果でした。
この結果は家族を連れて行こうかどうか迷っている方には、後押しされるような結果になっていますね。
Q5. 仕事時間に子供を預かってくれるデイケアがある?
Q5. 仕事時間に子供を預かってくれるデイケアがある?
モントリオールでは、未就学児を預かる幼稚園・保育園をデイケアといいます。
職場や周辺環境などに仕事時間に預かってくれるところがあるかどうかを聞いてみました。
はい:10人
いいえ:2人
わからない:2人
デイケアがあるという方が大半ですね。 モントリオールでもデイケアを利用する(できる)かどうかは別として、デイケアは周りにあるようですね。
僕の職場のロイヤルビクトリアホスピタルにもマギル大学内にもデイケアはありました。
Q6. デイケアを利用しましたか?
 Q6. デイケアを利用しましたか?
はい:10人
いいえ:5人
3分の2の方たちはデイケアを利用したようですね。
もちろん、子供の年齢にもよるのでしょうが、デイケアを利用している方も多いようですね。
Q7. デイケアの登録、利用について
Q7. デイケアの登録、利用について
容易+やや容易:2人
やや苦労+苦労:8人
このアンケートでは、8割の方が苦労したと感じているようですね。
確かに、デイケアの空き状況は日本の都会と同じように、順番を待たないと入れないということが多いと思います。地域やタイミング、デイケアに払えるお金などによっても違うのでしょうが、モントリオールでは基本的には簡単に入れないことが多いと思います。
僕らも、アパートに近くて安くて人気のあるところでは3年待ちということを言われました。
個人でやっているホームデイケアなどもたくさんあるようなので、すぐに入れるところ見つかるとは思いますが、当たり外れがあるようです。
家族のいる方にとって、一緒に海外まで連れて行くのかどうかということは大きな不安と悩みだと思います。 ここのアンケートでは、同伴について肯定的な結果であったと思います。 でも、家族の年齢や仕事内容、住む場所の選択など、やはり多くの情報を得ることがもっとも大切です。 是非、ひとりで悩まずに、積極的に連絡して情報をupdateしていくようにしてください
デイケアでのクリスマス会。この後、みんなサンタクロースからのプレゼントをもらって大喜びでした。
アンケート調査を自分なりにまとめました
学生、若手の海外留学に対する感じ方として、「語学力、経済面について不安が大きい」ということがあると思います。
それに対して、留学経験者たちのアンケートでは、
・意外に語学能力は楽監視している。
・必要な英語能力は目標としてTOEIC 700点くらい。
・留学した人たちの英語能力は留学後には確実に伸びている。
・経済面について、留学経験者たちもやはり苦しいと思った。
・留学前の貯蓄としては、平均700万円くらい。
・やはり経済面が最大のデメリット。
・モントリオールの治安に関しては安全だと思う。
・家族は連れてきて良かったと思う。
楽しく実りある留学生活を送るためには、経済面をなんとか克服できるように頑張ることが必要だと思います。
日本の所属先からも給料がもらえる方はかなり状況が違うと思いますが、やはり奨学金・助成金を獲得する努力をすることが大切だと思います。
実際に、僕も最初の1年目はケベックのフェローシップのみであり、かなり貯金を使いましたが、2年目と3年目はいろんなところに応募したうちのいくつかの助成金があたり、少し余裕のある生活ができるようになりました。
そのためには、
・実績作り、論文をなるべく書くこと
・計画書をうまく書くこと
・推薦状についても魅力ある人物に移るように書く(書いてもらう)
・奨学金・助成金には年齢制限や博士号取得してからの年数制限があることが多い。したがって、あまり考えすぎて留学時期を逸しないようにする。
・とにかく、なんでも応募する。
ということが大切なように思います。
このアンケートが若手の方たちの何かのお役にたてれば幸いです。当たり前だろうと思われる結果もあったと思いますが、これが現実です。
やはり、努力なくして実りある楽しい留学生活は送れません。 今後、海外留学を考えている方たちが、素晴らしい経験を得て、大きく羽ばたいていけるように、心から願っています。
海外留学を考えている方たちが、素晴らしい経験を得て、大きく羽ばたいていけるように
モントリオール留学中に、ほんとに小さな学会でしたが、Best presentation awardをいただきました。 本賞は、発表とディスカッションをレフリーが見て、点数を付けた結果で発表されました。
留学前には、英語でのディスカッションもほとんどできませんでいしたが、3年間の留学で成長できたなあと感じることができ、非常にうれしかったです。
皆さんにも是非、研究で論文を書くというだけでなく、素晴らしい経験ができるように頑張ってください!

金沢一平 糖尿病と骨粗しょう症専門医からの提案