JBMR日本語版への寄稿

Journal of Bone and Mineral Researchという骨研究のトップジャーナルがあります。この要約を翻訳した日本版冊子において、キーワードを解説を寄稿しました。

閉経後女性におけるフレイルを考慮した肥満と主要骨粗鬆症性骨折のリスクとの関連性

Relationship Between Obesity and Risk of Major Osteoporotic Fracture in Postmenopausal women: Taking Frailty Into Consideration. J Bone Miner Res 35(12): 2355-2362, 2020

これまで肥満は骨粗鬆症による骨折リスクを低減することが知られています。本論文では、欧州10カ国が参加している前向きコホート研究のデータを用いて、肥満と骨折リスクとの関連性を解析されています。結論として、フレイルがない閉経後女性では肥満は主要骨粗鬆症性骨折のリスク低下と相関する。一方、フレイルがある閉経後女性では肥満と骨折リスクとの関連性は消失した。このことから、肥満と骨折リスクとの関連性を検討する際には、フレイルの有無を評価することが有用である可能性がある。

エール君
エール君

フレイル自体が骨折リスクに影響し、肥満による骨折予防効果を減弱させた可能性が考えられますね。

フレイルって?

フレイルは、加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態と認識されています。要介護状態に至る前段階として位置づけられるが、身体的脆弱性のみならず精神、心理的脆弱性や社会的脆弱性などの多面的な問題を抱えやすく、自立障害や死亡を含む健康障害を招きやすいハイリスク状態を意味している。フレイルは、転倒・骨折、要介護状態、施設入所、死亡などと有意な関連がある。フレイルは、しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が包含されており、フレイルに陥った高齢者を早期に発見し、適切な介入をすることにより、生活機能の維持・向上を図ることが重要です。

骨代謝マーカーは2型糖尿病における骨折リスクを予測しない

Bone Turnover Markers Do Not Predict Fracture Risk in Type 2 Diabetes. J Bone Miner Res 35(12): 2363-2371, 2020

2型糖尿病は骨質劣化による骨脆弱性により骨折リスクが上昇します。骨密度BMDは骨粗鬆症による骨折リスクを評価するために重要な指標なのは周知です。しかし、骨脆弱性の原因が骨質劣化である2型糖尿病患者では、骨密度の評価のみでは骨折リスクを評価することは難しいことが明らかになっています。では、どうやって骨折リスクを評価するのか?本研究では、Health ABC試験という高齢の男女、黒人と白人3,075人を対象として行われた観察研究データを用いて解析されました。非糖尿病患者では、骨代謝マーカー(オステオカルシン、P1NP、CTX)が上昇が骨折リスクと関連することが示されたのに対し、2型糖尿病ではこれらの関連性が認められませんでした。したがって、骨代謝マーカーによる骨折リスク予測は2型糖尿病では有用ではない可能性が考えられる。

エール君
エール君

2型糖尿病患者さんの骨折リスクを評価するのは、骨密度でも骨代謝マーカーでも難しいことが示されています。なので、2型糖尿病患者の骨折リスクを評価できる新しいツールの開発が必要ですね。

オステオカルシンって?

骨特異的タンパク質であり、成熟骨芽細胞から産生されることから骨芽細胞分化の最も後期の骨形成マーカーとして利用されています。産生されたオステオカルシンの多くは骨基質に取り込まれますが、一部は血中に放出されます。動物実験の結果を中心に、オステオカルシンが糖・エネルギー代謝をコントロールしている可能性が報告されており、骨と全身の代謝との間には相互関連性がある可能性が指摘されています。注意)オステオカルシン測定の保険適用は二次性副甲状腺機能亢進症の手術適応の決定や、原発性または二次性副甲状腺機能亢進症手術後の治療効果判定に限定されています。

金沢一平 糖尿病と骨粗しょう症専門医からの提案