Bone Joint Nerveという雑誌に寄稿いたしました。
今回は「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド2019年版」の作成事務局長をさせていただいた関係で、以下の章を執筆させていただきました。
診療ガイド作成の背景 Bone Joint Nerve 11(1): 5-9, 2021
薬物治療開始基準 Bone Joint Nerve 11(1): 65-68, 2021
生活習慣病、特に糖尿病、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患は骨折リスクになることが明らかになっています。
骨粗鬆症による骨折は、みなさんの生活の質や生命予後を悪化させるだけでなく、社会的な負担も増大することが知られています。例えば、ご家族の誰かが骨折し、車イスあるいは寝たきりの状態になったとします。そうすると家をバリアフリーに改築したり、ベッドを新しく購入したり、介護にも時間・金銭的な負担がかかってしまいます。骨折した患者さんだけではなく、ご家族にも大きな負担がかかるのが骨粗鬆症です。また、骨折を起こすと手術、リハビリ、通院と医療費の増大にも影響します。
これまで骨粗鬆症は骨折して初めて気付くといったケースが多く、なかなか骨折前診断・治療が進まない現状がありました。骨折する前の骨粗鬆症を見つけるためには、検診事業の拡充、患者さんへの啓発活動、医療従事者(特に内科かかりつけ医)の意識改革が必要だと考えています。
生活習慣病は主に内科かかりつけ医が診療されていると思います。生活習慣病が骨折リスクになることが明らかになりましたが、まだまだ骨粗鬆症が内科疾患であることの認識が薄いのが現状です。
『生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド』では、生活習慣病関連骨粗鬆症の現状評価と抽出された疑問点、課題を踏まえて、日常診療に役立つ最新の情報提供を行うべく、作成されました。
診療ガイドが活用され、医師とメディカルスタッフが生活習慣病を合併している骨粗鬆症患者の診療を協調して円滑に進めていくうえでの参考になり、ひいては患者さんの健康寿命の延伸、生命予後の改善、社会的な課題の解決の一助になることを記念しています。