2021年までのまとめ 英語原著論文

エール君

ここでは2021年までに発表された原著論文をまとめています

102) Tanaka K, Morisato Y, Nakajima H, Kanasaki K, Sugimoto T, Kanazawa I*. Which is better index for skeletal muscle mass index in evaluation of physical abilities: present height or maximum height? Internal Medicine, in press

【要約】

サルコペニアは健康寿命を障害する重要な疾患であり、超高齢社会においてサルコペニアのj評価、治療介入は重要な課題である。サルコペニアを評価するために、骨格筋指標(skeletal muscle mass index: SMI)を算出するが、この指標は四肢の骨格筋量を身長の2乗で割った値である。高齢者では身長低下していることが多く、現在身長でSMIを算出するとSMIの値が上昇するため過大評価になってしまう可能性がある。そこで、本研究では現在身長で算出した従来SMIと人生最大身長で算出した改変SMIを用いて、運動能力指標(握力、歩行速度)との関連性を検討した。年齢やBMIで補正した重回帰分析においても改変SMIの方が強く握力、歩行速度と相関した。さらに、従来SMI低下は握力低下(18kg未満)と歩行速度低下(1.0 m/s未満)の存在と関連しなかったのに対し、改変SMIは有意な関連性を認めた。このことから、SMIを評価する際には身長低下を加味し、最大身長を用いて算出することが重要であることが示された。


101) Takeno A, Kanazawa I*, Tanaka K, Notsu M, Kanasaki K, Oono T, Ogawa Y, Sugimoto T. High glucose promotes mineralization via bone morphogenic protein 4-Smad signals in early stage of osteoblast differentiation. Diabetology International, 2021; 12(2): 171-180.

【要約】

糖尿病が脆弱性骨折リスク上昇と関連することは知られるようになった。糖尿病患者では骨芽細胞文化障害が起こると言われているが、高血糖の骨芽細胞分化に与える影響については不明な点も多い。今回、骨芽細胞様細胞MC3T3-E1を用いて、骨芽細胞の各分化ステージにおける高グルコースの影響を検討した。細胞がコンフルエントになったのち、最初の7日を分化早期、14~21日を分化後期として、石灰化、骨芽細胞分化マーカーなどを検討した。高グルコースは3~5日の分化早期にALP、オステオカルシン、Runx2などの発現を増強したが、14~21日の長期の培養ではこれらのマーカーの発現は低下した。分化早期のみ高グルコースで培養した場合石灰化が増強されたが、分化後期のみの培養では石灰化能は変化がなかった。さらに、高グルコースはBMP-4とSmad1/5/8リン酸化を増強したが、BMP受容体阻害薬は高グルコースの影響を阻害した。したがって、高グルコースは骨芽細胞の分化早期にはBMP-4/Smadシグナルを介して分化能、石灰化能を促進するが、長期間の培養では後期において分化を阻害する(成熟障害)ことが示唆された。


100) Tanaka K, Kanazawa I*, Richards JB, Goltzman D, Sugimoto T. Modulators of Fam210a and roles of Fam210a in myoblastic functions. Calcified Tissue International and Musculoskeletal Research, 2020; 106(5): 533-540.

【要約】

我々は以前に筋細胞に発現するFam210aが筋機能に重要であり、さらに骨代謝にも影響することを報告した。しかしながら、Fam210aの筋芽細胞の増殖や分化における役割や、Fam210aの制御因子については不明である。本研究では、1) Fam210aの筋芽細胞分化、増殖、アポトーシス、筋分解における役割を検討する、2) 筋芽細胞株C2C12におけるFam210aの発現を制御する因子を検討することを目的とした。Fam210aはC2C12細胞が分化するにつれ発現が低下した。siRNAによる内因性Fam210a発現の抑制は筋分化因子であるPax7、Myf5、Myogenin、Mhcの発現と、分解因子であるMurf1の発現を抑制した。さらに破骨細胞分化誘導因子であるMmp-12発現を増強した。一方、Fam210a発現抑制はアポトーシスには影響しなかった。インスリンと1,25(OH)2DはFam210a mRNA発現を濃度依存的に増強し、PI3K阻害薬やビタミンD受容体発現の抑制により、これらの影響が解除されたことから、インスリンと1,25(OH)2Dがfam210aの発現増強因子であることが示された。本検討により、Fam210aは筋分化と筋分解を促進し、筋リモデリングを増強する因子であることが示された。また、Mmp-12発現を制御することにより筋骨連関にも関わることが示唆された。インスリンとビタミンDは筋肉におけるFam210a発現を増強することにより、筋リモデリングを促進し、骨吸収を抑制する可能性がある。


99) Notsu M, Kanazawa I* , Takeno A, Tanaka K, Sugimoto T. Bazedoxifene ameliorates homocysteine-induced apoptosis via NADPH oxidase-interleukin 1β and IL-6 pathway in osteocyte-like cells. Calcified Tissue International and Musculoskeletal Research, 2019; 105(4): 446-457.

【要約】

ホモシステインは酸化ストレスや慢性炎症を惹起し、動脈硬化や骨折のリスクを上昇するとされている。しかしながら、ホモシステインによる骨脆弱性のメカニズムは明らかでない。一方、エストロゲン受容体モデュレーターSERMは抗酸化作用があることが知られているが、SERMがホモシステインによる骨脆弱性を改善するか否かは分かっていない。本研究では、骨リモデリング制御細胞である骨細胞において、ホモシステインによる酸化ストレス、炎症性サイトカイン、アポトーシスへの影響とSERMのホモシステインによる悪影響を解除するか否かについて検討を行った。本研究では骨細胞様細胞であるMLO-Y4-A2、Ocy454を用いた。ホモシステイン(5mM)は酸化ストレス因子であるNox1、nox2、炎症性サイトカインIL-1β、IL-6の発現を有意に増加し、アポトーシスを促進した。Nox阻害薬はホモシステインにおるIL-1β、IL-6発現増強作用を解除した。一方、IL-1β受容体アンタゴニストやIL-6受容体抗体はホモシステインによるNox1、Nox2発煙増強作用には影響しなかったが、アポトーシスは有意に改善させた。これらのことから、ホモシステインが酸化ストレスを惹起し、そして炎症性サイトカインが上昇することによりアポトーシスが誘導されることが示唆された。SERMであるバゼドキシフェンやエストロゲンはホモシステインによるアポトーシスを改善し、エストロゲン受容体阻害薬はこれらによる影響を一部解除した。さらに、バゼドキシフェンはホモシステインによるNox1、Nox2、L-1β、IL-6の発現増強作用を解除した。以上のことより、バゼドキシフェンはホモシステインによる骨細胞アポトーシス誘導を抑制し、その機序として酸化ストレス、炎症性サイトカインの解除が関与していることが明らかとなった。


98) Takeno A, Kanazawa I* , Tanaka K, Notsu M, Sugimoto T. Phloretin suppresses bone morphogenetic protein-2-induced osteoblastogenesis and mineralization via inibition of phosphatidylinositol 3-kinase/Akt pathway. International Journal of Molecular Sciences, 2019; 20(10): E2481.

【要約】

フロレチンはグルコーストランスポーター(GLUT)の阻害作用に加えて抗酸化作用などを有する物質であり、我々は以前にフロレチンが間葉系細胞ST2の脂肪分化を促進することを報告した。間葉系細胞は脂肪細胞や骨芽細胞に分化する多分化能を有するが、フロレチンの骨芽細胞分化に与える影響は不明である。本研究では、ST2細胞と骨芽細胞系細胞であるMC3T3-E1を用いてフロレチンのBMP-2で誘導される骨芽細胞分化への影響を検討した。フロレチンは骨芽細胞分化関連因子であるRunx2、Osx、ALP、Osteocalcin、type 1 collaenの発現に加えて石灰化能を有意に抑制した。一方、脂肪細胞分化関連因子であるPPARr、C/EBPa、FABP4、adiponectinの発現を有意に促進した。ウェスタンブロット法によりフロレチンはAkt活性を阻害することを認め、Akt阻害薬はフロレチンと同様に骨芽細胞分化、石灰化を有意に抑制した。フロレチンの作用がGLUTを介したものかどうか検討するために、siRNAをもちいてGLUT発現を抑制したがフロレチンの影響とは合致しない所見を得た。これらのことから、フロレチンはGLUT阻害以外の作用でAkt活性を抑制し、骨芽細胞分化を抑制することが示された。


97) Tanaka S, Yamamoto M, Morita M, Takeno A,  Kanazawa I , Yamaguchi T, Yamada S, Inoshita N, Oki Y, Kurosaki M, Sugimoto T. Successful reduction of ACTH secretion in a case of intractable Cushing's disease with pituitary Crooke's cell adenoma by combined modality therapy including temozolomide. Endocrine Journal, 2019; 66(8): 701-708.

【要約】

Crooke cell adenoma (CAA)は通常のACTH産生腺腫に比較して周囲へ浸潤しやすく、治癒切除率が低いため難治である。CAAはメチルグアニンメチルトランスフェラーゼ (MGMT)の発現が低いことが多いため、テモゾロミド治療が有効な可能性があるが、詳細は不明である。本症例報告は、クッシング病術後にACTH、コルチゾールが増悪していた患者にテモゾロミドを投与して、約7年間再燃を認めなかった貴重な症例報告である。


96) Miyake H,  Kanazawa I* , Tanaka K, Sugimoto T. Low skeletal muscle mass is associated with the risk of all-cause mortality in patients with type 2 diabetes mellitus. Therapeutic Advances in Endocrinology and Metabolism, 2019; 10; 2042018819842971.

【要約】

糖尿病患者ではサルコペニア(筋肉減少症)のリスクが高いことが報告されている。一般住民に比較して、糖尿病患者は平均寿命が約10年短いといわれている。しかしながら、サルコペニアが糖尿病患者の予後不良に関与しているか否かは不明である。本検討では、全身DEXによる体組成を評価しえた糖尿病男性163人、閉経後女性141人を対象とし、約6年間のフォローアップ期間における筋量指標(skeletal muscle mass index: SMI)と総死亡との関連性を検討した。年齢、糖尿病罹病期間、HbA1c、血清クレアチニン、空腹時Cペプチド、BMIにて補正したCox比例ハザードモデルにおいて、全身筋肉量の低下は総死亡リスクの上昇と有意な関連性を認めた(男性; HR 1.81, 女性; HR 4.53)。さらに、アジアのサルコペニア診断基準であるSMI低値(男性; <7.0、女性; <5.4)では、女性では有意に総死亡リスク上昇と関連し(HR 5.97)、男性でもその傾向を認めた(HR 2.38, p=0.074)。これらの結果から、筋肉量低値は他の指標とは独立して総死亡リスクと関連することが示され、筋肉量を維持することが糖尿病患者の生命予後に重要であることが示唆された。


95) Adachi N, Kanazawa I* , Tanaka K, Takeno A, Notsu M, Tanaka S, Sugimoto T. Insulin-like growth factor-I protects against the detrimental effects of advanced glycation end products and high glucose in myoblastic C2C12 cells. Calcified Tissue International and Musculoskeletal Research, 2019; 105(1): 89-96.

【要約】

これまでに我々は、2型糖尿病において血中advanced glycation end products (AGEs)上昇、血中insulin-like growth factor-I (IGF-I)低値がサルコペニアのリスク因子となることを報告した。しかし、その詳細なメカニズムについては不明であった。本研究では、筋芽細胞株C2C12を用いて、高グルコース、AGEs、IGF-Iの筋芽細胞分化、アポトーシスに与える影響を検討した。AGEsとしてAGE2とAGE3を用いた。AGEsは筋芽細胞分化に重要なMyoD、MyogeninのmRNA・蛋白発現を有意に抑制し、一方IGF-Iはこれらを上昇させた。さらに、IGF-IはAGEsによるMyoD、Myogeninの抑制作用を改善した。AGEsは内因性IGF-Iの発現を有意に抑制することに加え、IGF-IによるAkt活性化作用も阻害した。高グルコースはAGEsの受容体であるRAGEの発現を有意に上昇し、一方IGF-Iは抑制した。AGEsはC2C12のアポトーシスを有意に増強したが、IGF-IはAGEsによる作用を抑制した。高グルコースのみでは筋芽細胞分化、アポトーシスに有意な影響を及ぼさなかったが、AGEsによるC2C12のアポトーシスを増強した。さらに、IGF-Iは高グルコースとAGEsによる筋芽細胞分化抑制、アポトーシス促進を解除した。これらの結果から、糖尿病では高グルコースとAGEsが相まって筋肉量・筋機能の減弱に働き、IGF-Iがこれらの悪影響を改善する可能性が示された。糖尿病によるサルコペニア発症のメカニズムや治療戦略について確立されたものはないが、高AGEsがリスク因子でありIGF-Iが治療標的になる可能性が考えられる。


94) Kanazawa I* , Tanaka K, Takeno A, Notsu M, Miyake H, Sugimoto T. A scoring assessment tool for the risk of vertebral fractures in patients with type 2 diabetes mellitus. Bone, 2019; 122: 38-44.

【要約】

2型糖尿病では骨折リスクが高いことは明らかとなっている。糖尿病による骨脆弱化の病態には骨質劣化が重要であり、実際に骨密度(骨量)のみでは骨折リスクを評価しにくいことが臨床で問題となっている。本研究では、骨密度以外の指標も用いて骨折リスク評価ツールの開発を目的とし、検討を行った。2型糖尿病患者808人を対象に、椎体骨折の有無に関連する指標を探索した。その後、ROC解析、ロジスティック回帰分析により各指標をスコア化し、椎体骨折の有無を判定しうるカットオフ値を算出した。椎体骨折リスクに関連する因子として、年齢、糖尿病罹病期間、BMI、血清アルブミン、大腿骨頸部骨密度が抽出された。各指標をカテゴリー化し、重みづけを行った後、以下のようにスコア化を行った。年齢(65歳未満;0点、65歳以上75歳未満;4点、75歳以上;7点)、罹病期間(10年未満;0点、10年以上;3点)、BMI(21未満;3点、21以上24未満;0点、24以上;2点)、血清アルブミン(4未満;3点、4以上;0点)、大腿骨頸部骨密度Tスコア(-2.5以下;7点、-2.5より大きく-1.0未満;3点、-1.0以上;0点)。ROC解析により、椎体骨折に対する合計スコアのカットオフ値は8.5となった。また、骨密度を除いた場合の合計スコアのカットオフ値は6.5となった。様々な背景因子で補正したロジスティック回帰分析により、スコア9点以上、骨密度測定を含まないスコア7点以上が有意に椎体骨折リスクと関連することが示された。したがって、2型糖尿病患者において年齢、糖尿病罹病期間、BMI、血清アルブミン、大腿骨頸部骨密度(オプショナル)を評価し、スコアリングを行うことにより骨折リスクを評価することが可能なことが明らかになった。今後は同スコアが新規骨折発生を評価しうるか前向き検討が望まれる。


93) Takeno A, Yamamoto M, Morita M, Tanaka S, Kanazawa I , Yamauchi M, Kaneko S, Sugimoto T. Late-onset isolated adrenocorticotropic hormone deficiency caused by nivolumab: a case report. BMC Endocrine Disorders, 2019; 19(1): 25.

【要約】近年、さまざまな癌の治療に免疫チェックポイント阻害薬が使用されるようになった。免疫チェックポイント阻害薬は内分泌異常を誘発することが知られており、その対策は重要である。本症例報告は、ニボルマブによるメラノーマ治療の経過中に甲状腺機能低下症を発症し、さらにニボルマブ投与終了4か月後に中枢性副腎皮質機能低下症を発症した貴重な報告である。


92) Tanaka S, Kanazawa I *, Sugimoto T. Nerve conduction velocity is negatively associated with intima-media thickness and brachial-ankle pulse wave velocity in men with type 2 diabetes mellitus. PLOS ONE, 2018; 13(12): e0209503.

【要約】糖尿病最小血管合併症と動脈硬化性疾患は関連があることが示唆されているが、末梢神経障害と動脈硬化との関連性についての報告は少ない。これまでに、神経伝導速度検査NCVは神経障害を定量的に評価することができる日常的に広く使用される指標であるが、NCVと動脈硬化指標(頸動脈内膜中膜厚肥厚IMT、脈波伝播速度PWV)との関連性についての検討はなかった。我々は男性2型糖尿病患者292人を対象に、上記の指標の関連性を統計学的に検討した。まず、神経障害の有無によりIMT、PWVの比較を行ったところ、神経障害有群で有意にIMT、PWVいずれも高値であることが示された。さらに、動脈硬化のリスク因子である年齢、糖尿病罹病期間、BMI、HbA1c、Cペプチド、収縮期血圧、HDL-C、LDL-C、尿中アルブミンにて補正した重回帰分析において、NCVとIMT、PWVに有意な負の相関が認められた。したがって本研究により、神経障害があると動脈硬化が進行しており、神経障害が重症であるほど動脈硬化が進行しているという直線的な関係が明らかになった。


91) Tanaka K, Kanazawa I *, Notsu M, Sugimoto T. Higher serum uric acid is a risk factor of vertebral fractures in postmenopausal women with type 2 diabetes mellitus. Experimental and Clinical Endocrinology & Diabetes, 2020; 128(1): 66-71.

【要約】尿酸は抗酸化作用があることが知られており、尿酸と酸化ストレスが関わる疾患との関連性について注目されている。これまでに高尿酸血症は骨粗鬆症の保護因子である可能性が報告されているが、糖尿病における骨脆弱性との関連については不明である。我々は2型糖尿病患者を対象に血清尿酸値と骨指標との関連性を横断的に検討した。多因子で補正した重回帰分析において、閉経後女性では血清尿酸値と尿NTXとの間に有意な負の相関を認めたが、骨密度や骨形成マーカーとの相関はなかった。年齢、罹病期間、クレアチニン、骨密度、尿NTXにて補正したロジスティック回帰分析では、閉経後女性において血清尿酸値が1SD上昇する毎に既存椎体骨折リスクが約1.4倍に上昇することが示された。したがって、2型糖尿病閉経後女性では血清尿酸値上昇は骨折リスクになる可能性が初めて示された。


90) Tanaka K, Kanazawa I *, Notsu M, Sugimoto T. Higher serum uric acid is a risk factor of reduced muscle mass in men with type 2 diabetes mellitus. Experimental and Clinical Endocrinology & Diabetes, 2021; 129(1): 50-55.

【要約】近年、糖尿病ではサルコペニア発症のリスクが高いことが示され注目を集めている。しかしながら、その機序や関連するリスク因子については不明な点が多い。尿酸は抗酸化作用があることが知られており、生体内で善玉因子として働く可能性がある一方、高尿酸血症では動脈硬化リスクになることも知られている。尿酸と筋量との関連についての報告はあまりないため、本検討では特に高尿酸血症を合併しやすい2型糖尿病患者を対象に血中尿酸値と筋量との関連を検討した。対象は401人の2型糖尿病患者(男性209人、閉経後女性192人)、DXAにて四肢筋肉量を測定し、身長の2乗で割ったskeletal muscle mass index (SMI)を算出した。年齢、体重、クレアチニン、HbA1c、糖尿病罹病期間で補正した重回帰分析において、血中尿酸とSMIは有意な負の相関を認めた。さらに、アジアサルコペニア診断基準を参考にSMI低値群、高値群に分けて多重ロジスティック回帰分析を行ったところ、血中尿酸が1SD上昇する毎にSMI低値のリスクが1.94倍に上昇することが示された(OR 1.94, 95%CI 1.10-3.45, p=00.023)。したがって、2型糖尿病において高尿酸血症はサルコペニア(筋量低値)のリスクとなりえる可能性が示唆された。


89) Kanazawa I *, Notsu M, Takeno A, Tanaka K, Sugimoto T. Overweight and underweight are risk factors for vertebral fractures in patients with type 2 diabetes mellitus.  Journal of Bone and Mineral Metabolism, 2019; 37(4): 703-710.

【要約】Body mass index (BMI)と骨密度、骨折リスクとの関連について多くの研究報告がある。古くから痩せ(BMI低値)が骨密度低下、骨折リスク上昇に関与することはよく知られているが、近年肥満(BMI高値)は骨質劣化に起因して骨折リスクを上昇する可能性が考えられている。本研究では2型糖尿病患者798人を対象に、BMIと既存椎体骨折との関連を横断的に検討した。BMIを4群分けし、Q1: 21.2未満、Q2: 21.3-23.4、Q3: 23.5-25.8、Q4: 25.9以上と椎体骨折リスクとの関係を年齢、性別、糖尿病罹病歴、HbA1c、eGFR、アルブミンなどで補正したロジスティック回帰分析を検討したところ、Q2をreferenceとしてQ1ではオッズ比1.91、Q3ではオッズ比1.65、Q4ではオッズ比2.18と有意なリスク上昇が認められた。この関係は骨代謝マーカーや骨密度で補正しても有意であった。本検討により、2型糖尿病では痩せも肥満も椎体骨折のリスクとなることが初めて明らかとなった。


88) Miyake H, Kanazawa I *, Sugimoto T. Albuminuria increases all-cause mortality in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus. Journal of Clinical Medicine, 2018; 7(9): E234 

【要約】糖尿病性腎症は透析導入のリスクだけでなく心血管疾患、総死亡リスクにもなることが知られている。糖尿病性腎症はアルブミン尿が特徴とされているが、アルブミン尿あるいはeGFRと死亡リスクとの関連性についてはまだ明らかでない。我々は日本人2型糖尿病患者385人(eGFR <30を除く)の過去起点コホート研究により尿中アルブミン量とeGFRと総死亡との関連性について検討した。約7年間の追跡で54人の患者が死亡しており、年齢、糖尿病罹病期間、BMI、HbA1cで補正したCox解析では尿中アルブミン量が1SD上昇するとハザード比 1.32(p=0.03)で死亡リスクが高いことが示された。さらに、この関係をeGFRで補正してもHR 1.32(p=0.03)と関係性に影響は見られなかった。一方、eGFRは年齢などを補正したCox解析では有意な関係は認めなかった。本研究により2型糖尿病患者(eGFR 30以上)ではeGFRよりも尿中アルブミン増加が総死亡リスクとなることが明らかとなった。


87) Kanazawa I *, Takeno A, Tanaka K, Yamane Y, Sugimoto T. Osteoporosis and vertebral fracture are associated with deterioration of activities of daily living and quality of life in patients with type 2 diabetes mellitus. Journal of Bone and Mineral Metabolism, 2019; 37(3): 503-511.

【要約】2型糖尿病患者では骨折リスクが高いことが明らかになっている。糖尿病では一般住民よりもQOLが低下していることが知られており、最小血管合併症や動脈硬化性疾患などの合併症がその要因と考えられている。一方、骨粗鬆症や脆弱性骨折もADLやQOLに影響するが、糖尿病患者において糖尿病関連骨粗鬆症が血管合併症とは独立してADL/QOLの低下に影響しているか否かは明らかでない。本検討では、2型糖尿病患者へのADL/QOLに関するアンケート調査(Barthel index、SF-36)により、骨粗鬆症あるいは椎体骨折と有意な関連があるか否かを検討することを目的とした。対象は2型糖尿病患者309人、骨粗鬆症の有無は骨粗鬆症ガイドライン2015年版に基づき診断し、椎体骨折は胸腰椎X線によりグレード1~3を評価した。年齢、糖尿病罹病歴、HbA1c、糖尿病治療、他の血管合併症などで補正したロジスティック回帰分析により、骨粗鬆症は全体的健康感、社会生活機能、日常役割機能(精神)の低下と有意な関連を認め、ADL低下と関係する傾向(p=0.068)を認めた。さらに、椎体骨折グレード2以上では、ADL低下、体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)の低下と有意な関連を認めた。本研究により、2型糖尿病患者においても骨粗鬆症、椎体骨折が他の合併症や他の血管障害とも独立してADL、QOLの低下に影響することが初めて示された。したがって、糖尿病診療において患者のADL/QOLを維持するためには骨粗鬆症の予防、治療が重要であることが改めて示された。


86) Kanazawa I *, Takeno A, Tanaka K, Notsu M, Sugimoto T. Osteoblast AMP-activated protein kinase regulates glucose metabolism and bone mass in adult mice. Biochemical and Biophysical Research communications, 2018; 503(3): 1955-1961.

【要約】これまでに我々はAMP kinaseが骨芽細胞分化、石灰化に重要な分子であることを報告してきた。また近年、骨から分泌されるオステオカルシンに糖代謝を制御する内分泌作用があることが明らかとなった。しかしながら、in vivoにおけるAMP kinaseの骨量、糖代謝への影響については明らかでない。本研究ではinducible Creシステムを用いてAMP kinaseを生後3週間からノックアウトすることにより、成獣マウスの骨量、糖代謝への影響を検討した。ノックアウト6ヶ月後に海綿骨量に有意な変化はなかったが、血中オステオカルシンの有意な低下を認めた。AMP kinaseノックアウトマウスにおいて、糖負荷試験で負荷後高血糖を認め、インスリン負荷試験でインスリン抵抗性を認めた。さらに、ノックアウト18か月後の大腿骨をマイクロCTにて検討すると、海綿骨量と皮質骨厚の有意な減少を認め、3点曲げ試験による骨強度評価にてstiffnessの有意な低下を認めた。本研究により、成獣マウスにおいてAMP kinaseは耐糖能を制御し、加齢による骨量減少を抑制することが明らかとなった。したがって、骨芽細胞AMP kinase活性化は耐糖能異常と骨量低下を改善する可能性があり、今後の治療標的となり得る可能性が示唆された。


85) Kanazawa I *, Tanaka S, Sugimoto T. The association between osteocalcin and chronic inflammation in patients with type 2 diabetes mellitus,  Calcified Tissue International and Musculoskeletal Research, 2018; 103: 599-605.

【要約】骨から分泌されるオステオカルシンに内分泌作用があることが報告され注目を集めている。これまでにいくつかの研究でオステオカルシンが慢性炎症に関わる可能性が報告されているが、人における血中オステオカルシン濃度と炎症指標との関連性は不明である。本研究では、2型糖尿病患者246人を対象とし、血中オステオカルシンと高感度CRP、フェリチン、単球数との関連性を統計解析した。年齢、糖尿病罹病歴、BMI、eGFR、HbA1cにて補正した重回帰分析では、血中オステオカルシン濃度と高感度CRP、フェリチン、単球数には有意な負の相関が認められた。さらに、低カルボキシル化オステオカルシンも同様の関係が認められた。一方、他の骨代謝マーカーである骨型ALPや尿中NTXはこれら因子との相関はなかった。本検討により、2型糖尿病患者でオステオカルシンと慢性炎症には密接な関連性があることが初めて明らかになった。


84) Kanazawa I *, Sugimoto T. Prehypertension increases the risk of atherosclerosis in drug-naïve Japanese patients with type 2 diabetes mellitus. PLOS ONE, 2018; 13(7): e0101055.

【要約】高血圧が血管障害のリスク因子であることは言うまでもないが、2型糖尿病において前高血圧状態が動脈硬化に及ぼす影響については明らかでない。本検討では、Drug-naiveの患者を対象に収縮期血圧、拡張期血圧の頸動脈内膜中膜厚(IMT)との関連性を検討した。年齢、糖尿病、脂質代謝などの様々なリスク因子で補正した重回帰分析において、収縮期血圧はIMTと有意な正の相関が認められた。一方、拡張期血圧は有意な相関を示さなかった。さらに、IMT-maxの平均値であった1.8mmを指標にROC解析を行ったところ、収縮期血圧133.5mmHgがカットオフ値であった。そこで、正常血圧119mmHg以下、収縮期血圧120-139mmHgを前高血圧、140mmHg以上を高血圧と定義してロジスティック回帰分析を行ったところ、前高血圧でオッズ比3.45、高血圧で7.29と連続的に動脈硬化に影響していることが示された。本検討により、日本人2型糖尿病において、収縮期血圧120-139mmHg程度であっても動脈硬化増悪のリスクになることが明らかとなった。


83) Kanazawa I *, Notsu M, Miyake H, Tanaka K, Sugimoto T. Assessment using serum insulin-like growth factor-I and bone mineral density is useful for detecting prevalence vertebral fractures in patients with type 2 diabetes mellitus. Osteoporosis International, 2018; 29: 2527-2535.

【要約】2型糖尿病では骨密度に依存しない骨折リスク上昇があるため、骨密度測定のみで骨折リスクを評価すると過小評価につながる危険性がある。しかしながら、骨折リスクを評価しうる臨床で有用な指標がないのが現状である。本検討では、骨密度と血清IGF-I値を組み合わせて評価することにより、骨折予測の感度が上昇するかを検討することを目的とした。既存椎体骨折に対する骨密度、血清IGF-Iのカットオフ値を評価したところ、腰椎骨密度は男性で-1.67、閉経後女性で-1.78、大腿骨骨密度は男性で-1.24、閉経後女性で-2.02、血清IGF-Iは男女ともに127 ng/mLであった。いずれの指標も感度は20.5~71.0%と低かったが、骨密度と血清IGF-Iを組み合わせることにより感度は女性で89.9%、男性で74.8%まで上昇した。したがって、本研究により2型糖尿病では単一の指標のみでの骨折リスクを評価するよりも血清IGF-Iと骨密度を組み合わせて評価することで、臨床における骨折リスクの診断能が向上することが初めて示された。


82) Tanaka S, Kanazawa I *, Sugimoto T. Visceral fat accumulation is associated with increased plasma sphingosine-1 phosphate levels in type 2 diabetes mellitus. Diabetes research and Clinical Practice, 2018; 143: 146-150.

【要約】スフィンゴ脂質には生理活性作用があることが明らかとなっている。スフィンゴ脂質のひとつであるsphingosine-1 phosphate (S1P)は血球や血管内皮細胞から分泌され、抗肥満作用やインスリン作用増強効果があることが報告されており、肥満にともなう病態に関与している可能性が考えられている。本検討では、2型糖尿病男性80人を対象に、血漿S1P濃度と内臓脂肪との関連性をDXA法による体組成、腹部CTによる内臓脂肪面積測定により検討した。年齢、糖尿病罹病期間、血清クレアチニン、HbA1c、尿中Cペプチドなどで補正した重回帰分析において、S1PはBMI、内臓脂肪面積、体脂肪量と有意な正の相関を認め、この関係は皮下脂肪などで補正しても有意であった。したがって、血漿S1P濃度は内臓脂肪蓄積と特異的に関連することが明らかとなった。本研究は横断研究であり、S1Pと内臓脂肪がなぜ強く関連するのかについては不明であるが、S1Pが肥満に関わる病態に関与している可能性が示唆された。内臓脂肪肥満に対するS1Pの影響などについて、今後さらなる検討が望まれる。


81) Takeno A, Kanazawa I *, Notsu M, Tanaka K, Sugimoto T. Phleretin promotes adipogenesis via the mitogen-activated protein kinase pathways, in mouse marrow stromal ST2 cells. International Journal of Molecular Sciences, 2018; 19(6): 1772.

【要約】グルコース取り込みやグルコーストランスポーターGLUTs阻害薬であるフロレチンの脂肪細胞分化に与える影響やメカニズムについては不明な点が多い。本研究では、マウス骨髄間葉系細胞ST2を用いてフロレチンの脂肪細胞分化への影響を検討した。脂肪細胞分化誘導下でフロレチンを添加すると、脂肪細胞分化マーカーであるPPARγ、C/EBPα、fatty acid synthase (FAS)、fatty acid-binding protein 4 (FABP4)、アディポネクチンなどの発現が有意に上昇し、Oil red O染色で脂肪滴の増加が認められた。フロレチンはAMPK、p38のリン酸化を促進し、ERK、JNKのリン酸化を抑制した。AMPK阻害薬araAを用いた検討で、フロレチンの脂肪分化促進効果にAMPKは関与していないことが示唆された。一方、ERK阻害薬、JNK阻害薬は脂肪細胞分化を促進し、p38阻害剤はフロレチンによる脂肪細胞分化を阻害したことから、ERKとJNKシグナルの抑制とp38の活性化を介していることが示唆された。 我々は以前にST2細胞にはGLUT1のみが発現していることを報告している。GLUT1をsiRNAを用いてknockdownすることによりグルコース取り込みの脂肪細胞分化への影響を検討した。GLUT1siRNAはフロレチンとは異なり脂肪細胞分化を有意に抑制した。さらにGLUT1を knockdownした状態でフロレチンを添加しても、フロレチンは脂肪細胞分化を促進したことから、フロレチンの影響はグルコース取り込み阻害とは異なる機序で脂肪細胞分化を促進することが示された。本研究により、脂肪細胞分化にはグルコース取り込みは重要であることが示され、さらにフロレチンはグルコース取り込み阻害作用とは独立した機序で脂肪細胞分化を誘導することが初めて明らかになった。


80) Tanaka K, Xue Y, Nguyen-Yamamoto L, Morris J, Kanazawa I , Sugimoto T, Wing S, Richards JB, Goltzman D. FAM210A is a novel determinant of bone and muscle structure and strength. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 2018; 115(16): E3759-3768.

【要約】

骨粗鬆症とサルコペニアはしばしば併存する疾患である。近年、骨と筋肉との間には関連性があることが想定されているが、そのメカニズムについては不明な点が多い。GWAS研究の解析から新規遺伝子FAM210A (family with sequence similarity 210, member A)が骨折リスクと筋量減少に寄与するがことが示唆された。本検討では、FAM210Aの筋、骨における詳細なメカニズムを検討するため、全身ノックアウトマウス、筋特異的ノックアウトマウスを作製し、筋と骨への影響を検討した。FAM210Aはミトコンドリアと細胞質に存在し、特に骨格筋、心筋、脳に発現を認めたが骨には発現はなかった。全身FAM210Aノックアウトマウスは筋量、筋力ともに低下しており、骨量低下、骨強度低下も認められた。筋特異的FAM210Aマウスにおいても骨量低下と破骨細胞数増加が認められ、DNAマイクロアレイ解析により筋細胞FAM210Aノックアウトでは破骨細胞誘導因子MMP12が増加していることが示された。したがって、 新規遺伝子FAM210Aは筋細胞に発現し、筋量および筋力の維持に重要であり、さらに筋からのMMP12発現を制御することにより骨代謝にも影響していることが明らかになった。


79) Takeno A, Kanazawa I *, Notsu M, Tanaka K, Sugimoto T. Inhibition of adenosine monophosphate-activated protein kinase suppresses bone morphogenetic protein-2-induced mineralization of osteoblasts via Smad-independent mechanisms. Endocrine Journal, 2018; 65(3): 291-298.

【要約】

我々はこれまでに骨芽細胞におけるAMP kinase (AMPK)活性化がBMP-2発現増強を介して骨芽細胞分化、石灰化を促進することを報告してきた。一方、BMP-2のAMPKシグナルとの関連性については不明であった。本検討では、前骨芽細胞MC3T3-E1と骨髄間葉系細胞ST2を用いてBMP-2による骨芽細胞石灰化促進にAMPKが関与しているか否かを検討した。BMP-2は顕著に骨芽細胞石灰化を促進したが、AMPK阻害薬であるara-AはBMP-2による石灰化誘導を抑制した。MC3T3-E1細胞において、BMP-2はALP、OCN、Runx2、Osterix、Dlx5の発現を増強したが、ara-AはBMP-2によるALP、OCN、Runx2の発現増量を抑制した。さらに、western blotによりBMP-2のAMPKリン酸化への影響、ara-AのSmad1/5リン酸化に与える影響を検討したが、影響は認められずAMPK活性抑制によるBMP-2作用の減弱は少なくともSmadシグナルは介していないと考えられた。本検討により、BMP-2による骨芽細胞石灰化にはAMPK活性が重要である可能性が示唆された。今後さらなるメカニズムについての探究が必須である。


78) Kanazawa I *, Takeno A, Tanaka K, Notsu M, Sugimoto T. Osteoblast AMP-activated protein kinase regulates postnatal skeletal development in male mice. Endocrinology, 2018; 159(2): 597-608.

【要約】

我々はこれまでに骨代謝におけるAMP kinase (AMPK)の重要性について報告してきた。骨芽細胞におけるAMPK活性化は分化、石灰化を促進するが、骨芽細胞AMPKのin vivoにおける役割については不明な点が多い。本研究では骨芽細胞特異的にAMPKをノックアウト(AMPK-KO)して骨構造解析を行うことにより、骨芽細胞AMPKのin vivoにおける役割について検討した。AMPK-KOは生後から成長障害を認め、海綿骨・皮質骨ともに骨量が有意に低下していた。皮質骨内膜面の骨形成が有意に低下していたのに対し、破骨細胞が有意に増加していた。頭蓋骨、大腿骨から骨芽細胞、未分化骨髄細胞を採取し、real-time PCRにて骨代謝関連遺伝子の発現を検討したところ、Runx2、Osterix、BMP-2などの骨形成関連因子が有意に低下し、ALP、osteocalcin、type 1 collagenの分化マーカーの発現も低下していた。一方、破骨細胞誘導因子であるRANKLは有意に上昇を認めた。AMPK-KOでは骨芽細胞分化障害による骨形成低下とRANKL発現上昇による骨吸収誘導により骨量が低下することが明らかになった。しかたがって、骨芽細胞AMPKは骨形成、骨リモデリングにおいて重要な因子であり、新たな骨粗鬆症治療標的因子である可能性が示唆された。


77) Takeno A, Kanazawa I *, Notsu M, Tanaka KI, Sugimoto T. Glucose uptake inhibition decreases expressions of receptor activator of nuclear-kappa B ligand (RANKL) and osteocalcin in osteocytic MLO-Y4-A2 cells. American Journal of Physiology Endocrinology and Metabolism, 218; 314(2): E115-E123.

【要約】

古い骨を吸収する破骨細胞と新しい骨を作る骨芽細胞により骨は常に新しい骨へと置き換わっている(この過程をリモデリングと呼ぶ)。骨細胞はリモデリングを制御することにより骨代謝の恒常性に関わっている。また、骨と糖代謝には密接な関連性があることが明らかとなってきている。しかしながら、骨細胞と糖代謝との関連性についての検討はない。本研究では骨細胞にグルコースを取り込むトランスポーター(GLUT1)が発現していること、GLUT1によるグルコース取り込みを阻害すると破骨細胞誘導因子であるRANKL発現が抑制され、糖代謝に関連する因子オステオカルシン発現が低下することを初めて見出した。さらに、RANKLの発現制御にはMAPK(p38、ERK)が関与し、オステオカルシンの発現制御にはエネルギーセンサーAMPKが関与していることを明らかにした。本検討により骨細胞がグルコース感知(取り込み)により骨リモデリングと糖代謝を制御する可能性が示唆された。


76) Takeno A, Kanazawa I *, Morita M, Takedani K, Miyake H, Yamamoto M, Nogami K, Kaneko S, Sugimoto T. A case report of fulminant type 1 diabetes mellitus associated with drug-induced hypersensitivity syndrome in elderly patient with coxsakie B4 virus infection and HLA-A24 haplotype. Endocrine Journal, 2018; 65(1): 129-132.

【要約】

薬剤誘発性過敏症症候群を治療後に劇症1型糖尿病を発症した高齢女性の症例報告。これまでに劇症1型糖尿病の発症にはウィルス感染やHLAハプロタイプが関連していることが示唆されているが詳細は不明である。さらに、薬剤誘発性過敏症症候群ののちに劇症1型糖尿病を発症することが報告されてきているが、ウィルス感染やHLAとの関連について明らかになっていない。本論文は、劇症1型糖尿病発症にコクサッキーB4ウィルス感染とHLA-A24が関連した可能性を報告した貴重な症例報告である。


75) Miyake H, Kanazawa I *, Sugimoto T. Association of bone mineral density, bone turnover markers, and vertebral fractures with all-cause mortality in type 2 diabetes mellitus. Calcified Tissue International and Musculoskeletal Research, 2018; 120(1): 1-13.

【要約】

2型糖尿病では骨折リスクが上昇していることが明らかとなっている。これまでに骨折が生命予後不良に関連することは報告されてきたが、多彩な合併症をきたす糖尿病患者においても骨折が生命予後不良に寄与するか否かは不明である。本検討では日本人2型糖尿病患者411人を対象に、約7年間の観察を行い骨密度、骨代謝マーカー、椎体骨折の有無と総死亡リスクとの関連性を検討した。年齢、性別、HbA1c、BMI、罹病期間、クレアチニン、収縮期血圧、LDL-C、骨粗鬆症治療などの様々な交絡因子で補正後も骨密度低下(腰椎、大腿骨)は総死亡リスクに影響することが示され、さらにその傾向は男性でより顕著であった。さらに、骨代謝マーカーとの関連については女性でのみ血中オステオカルシン低下が総死亡リスクに関連するが、他の骨代謝マーカー(BAPや尿中NTX)は関連がないことが示された。多発椎体骨折、グレード3の重症椎体骨折は生命予後不良に関連し、この関係は骨密度で補正しても有意差が認められた。したがって、2型糖尿病においても骨粗鬆症は生命予後を増悪させる重要な合併症であり、治療・予防が必須であることが示された。さらにオステオカルシンの低下が生命予後不良と関連することから、オステオカルシン低下が重要な生命予後予知因子である可能性が示唆された。


74) Yokomoto-Umakoshi M, Kanazawa I *, Kondo S, Sugimoto T. Association between the risk of falls and osteoporotic fractures in patients with type 2 diabetes mellitus. Endocrine Journal, 2017; 64(7): 727-34.

【要約】

骨密度測定は骨粗鬆症診療のゴールドスタンダードであるが、糖尿病患者では骨密度のみでは骨折リスクを評価しきれないことが報告されている。糖尿病患者における骨折リスク上昇は、骨自体の脆弱性と転倒リスクが高いことが関与すると考えられる。本検討では、簡易質問票を用いて転倒リスクを評価し、転倒リスクにかかわる因子と転倒リスク評価質問票を用いて骨折リスクも評価することができるかを検討した。転倒リスク質問票は以下の5項目から成る、①過去一年に転倒したことがあるか、②最近歩くのが遅くなってきたと感じることがあるか、③歩行の時に杖を使うか、④背中が丸くなってきたと感じるか、⑤毎日5種類以上の薬を服用しているか。本検討では、罹病期間の長さ、神経障害、末梢動脈疾患、脆弱性骨折が2型糖尿病患者の転倒リスク上昇に関与することが示された。一方、低BMI、神経障害、転倒リスクが脆弱性骨折リスクになることが示された。したがって、転倒リスクと骨折リスクはお互いに関与しあう関係にあり、共通する因子として神経障害あることが示された。さらに、簡易質問票を用いた転倒リスク評価で骨折リスクを評価しうる可能性が示唆された。


73) Notsu M, Kanazawa I *, Takeno A, Yokomoto-Umakoshi M, Tanaka KI, Yamaguchi T, Sugimoto T. Advanced glycation end product 3 (AGE3) increases apoptosis and the expression of sclerostin by stimulating TGF-beta expression and secretion in osteocyte-like MLO-Y4-A2 cells. Calcified Tissue International and Musculoskeletal Research, 2017; 100(4): 402-11.

【要約】

我々はこれまでにAGEsが骨芽細胞分化、石灰化を抑制する機序にTGF-betaシグナルが関与していることを報告してきた。一方、AGEsは骨細胞のアポトーシス誘導やスクレロスチン発現を増加させるが、TGF-betaの関与については明らかでない。本検討では、骨細胞様細胞MLO-Y4-A2においてAGE3によるアポトーシス、スクレロスチン、RANKL発現への影響にTGF-betaが関与しているか否かを検討した。AGE3はAGEsの受容体であるRAGEの発現を増強し、アポトーシスを誘導し、スクレロスチン発現を増強し、RANKL発現を抑制した。また、AGE3はTGF-betaのmRNA、タンパクのいずれも有意に増加させた。TGF-beta受容体阻害薬を用いた検討により、AGE3のアポトーシス誘導とスクレロスチン発現増強効果は解除された。したがって、本検討によりAGEsが骨細胞機能異常をもたらす病態にTGF-betaが関与していることが明らかとなった。


72) Kanazawa I *, Tanaka KI, Notsu M, Tanaka S, Kiyohara N, Koike S, Yamane Y, Tada Y, Sasaki M, Yamauchi M, Sugimoto T. Long-term efficacy and safety of vildagliptin add-on therapy in type 2 diabetes mellitus with insulin treatment. Diabetes Research and Clinical Practice, 2017; 123: 9-17.

【要約】

我が国においてもDPP-4阻害薬は広く使用されている。しかし、インスリン治療中へのDPP-4阻害薬投与の長期的な有用性・安全性についての報告は少ない。本検討ではインスリン治療中の2型糖尿病患者を対象に、ビルダグリプチン追加群と従来療法群にランダムに振り分け、2年間の観察を行った。ビルダグリプチン群では有意にHbA1cが0.6%低下し、その効果は2年間維持された。ビルダグリプチン群ではインスリン使用が平均5.6単位、0.9回減少したが、従来療法群ではインスリン使用量の有意な変化はなかった。さらに、従来療法群に比較して年3回以上の低血糖経験がビルダグリプチン群で有意に少なかった。したがって、本研究によりインスリン治療へのビルダグリプチン追加投与が血糖改善のみならず、インスリン使用量も減らし、かつ低血糖リスクを低下させるという長期的な有効性、安全性が確認された。


71) Tanaka KI, Kanazawa I *, Sugimoto T. Association of osteoglycin and FAM5C with bone turnover markers, bone mineral density, and vertebral fractures in postmenopausal women with type 2 diabetes mellitus. Bone, 2017; 95: 5-10.

【要約】

近年、筋肉と骨には密接な関連性があることが明らかとなってきている。これまでに我々は、筋芽細胞から分泌されるosteoglycin (OGN)とFAM5Cが骨芽細胞分化を制御するホルモンであることを基礎研究にて報告してきた。しかしながら、これまでにOGNとFAM5Cの骨代謝、骨折リスクとの関連性を検討した臨床研究はない。本検討では、156人の閉経後2型糖尿病女性を対象に、血中OGN、FAM5C濃度と骨密度、骨代謝マーカー、既存椎体骨折との関連性を横断的に統計解析した。年齢、罹病期間、BMI、血清クレアチニン、HbA1cで補正した重回帰分析により、血清OGN濃度は大腿骨頸部骨密度と有意な負の相関を認め、さらにロジスティック回帰分析ではOGNが1SD上昇する毎に既存椎体骨折リスクが1.84倍に上昇することが明らかとなった。一方、血中FAM5Cと骨マーカーとの有意な関連性は認められなかった。したがって、本検討によりOGNが骨代謝と密接に関連するマイオカインである可能性が初めて明らかになった。しかしながら、OGNが骨折リスクを上昇させる増悪因子であるのか、あるいは骨折に対して防御的に作用しているかについてのさらなる検討が必要である。


70) Kanazawa I *, Tomita T, Miyazaki S, Ozawa E, Yamamoto LA, Sugimoto T. Bazedoxifene ameliorates homocysteine-induced apoptosis and accumulation of advanced glycation end products by reducing oxidative stress in MC3T3-E1 cells. Calcified Tissue International and Musculoskeletal Research, 2017; 100: 286-97.

【要約】

これまでにホモシステイン上昇が骨折リスク増加に関連することが明らかになっている。しかしながら、ホモシステインの骨芽細胞やコラーゲン架橋に与える影響については不明な点が多い。本検討では、ホモシステインが骨芽細胞株MC3T3-E1のアポトーシスを誘導するか、酵素的あるいは非酵素的コラーゲン架橋の形成に影響するかを検討した。さらに、選択的エストロゲン受容体モジュレーターSERMであるバゼドキシフェンがホモシステインによる骨芽細胞への影響を改善しうるか否かを検討した。ホモシステインは濃度依存的に酸化ストレス(ROS)を誘導し(0.3, 3, 10 mM) 、3mM以上の濃度にてアポトーシスを誘導した。さらに、3 mMホモシステインはカスパーゼ3,8,9活性を上昇させた。この3 mMホモシステインによるROS、アポトーシス誘導はバゼドキシフェンの投与により抑制された。さらに、0.3 mMホモシステインは生理的コラーゲン架橋形成に重要であるリジルオキシダーゼ発現を抑制し、細胞外ペントシジン蓄積を増強させたが、バゼドキシフェンの投与によりこれらの影響は解除された。したがって、ホモシステインは酸化ストレスを誘導し、アポトーシスを増強し、さらに生理的架橋形成を抑制、AGEs架橋形成を促進することにより骨質劣化に寄与することが明らかとなり、さらにバゼドキシフェンがホモシステインによる負の影響を改善する可能性が示唆された。


69) Tanaka KI, Kanazawa I *, Sugimoto T. Reduced muscle mass and accumulation of visceral fat are independently associated with increased arterial stiffness in postmenopausal women with type 2 diabetes mellitus. Diabetes Research and Clinical Practice, 2016; 122: 141-7.

【要約】

筋力減少症(サルコペニア)と内臓脂肪肥満がともに動脈硬化に影響することがこれまでに報告されている。したがって、サルコペニア肥満は動脈硬化のさらなるリスクになると考えられる。しかしながら、動脈硬化性疾患の代表的リスク因子である2型糖尿病において、筋肉量と内臓脂肪量が動脈硬化指標に及ぼす影響についての検討はなかった。本検討では、97人の閉経後2型糖尿病女性を対象に、筋指標としてskeletal muscle mass index (RSMI)、内臓脂肪指標として全身DXA法による体幹部%fat、CTにて臍レベルの内臓脂肪面積(VF)を測定し、動脈硬化指標としてbaPWVを評価した。RSMI、%fat、VFとbaPWVとの関連性を統計学的に検討した。交絡因子にて補正した重回帰分析では、RSMIはbaPWVと有意な負の相関を認め、一方で%fat、VFともにbaPWVと有意な正相関を示した。内臓脂肪指標とbaPWVとの関連性はRSMIで補正しても有意な相関を認め、RSMIとbaPWVとの関連性を%fatあるいはVFで補正しても負の相関の傾向を認めた。したがって、筋量と内臓脂肪量はお互い独立してbaPWVと関連することが示唆された。このことはサルコペニア、内臓脂肪肥満、ひいてはサルコペニア肥満が動脈硬化のリスク因子になることを示唆している。


68)  Miyazaki Y, Niino M, Kanazawa I , Suzuki M, Mizuno M, Hisahara S, Fukazawa T, Takahashi E, Amino I, Ochi R, Nakamura M, Akimono S, Minami N, Fujiki N, Doi S, Shimohama S, Terayama Y, Kikuchi S. Fingolimod suppresses bone resorption in female patients with multiple sclerosis. Journal of Nueroimmunology, 2016; 298: 24-31.

【要約】

近年、破骨細胞遊走にスフィンゴシン1リン酸(S1P)が重要であると報告されている。S1P受容体1型シグナルは破骨細胞を骨髄から血中へ誘導することにより骨吸収を抑制して骨量増加に関連する。本検討では、多発性硬化症患者で使用されるS1PR1活性化薬であるフィンゴリモドの骨代謝への影響を横断的に検討した。フィンゴリモド治療中の患者ではその他の患者に比較して尿中NTXが有意に低下していたが、TRACP5bや骨形成マーカーには有意な差は認めなかった。したがって、フィンゴリモドは破骨細胞活性や骨形成には影響することなく骨吸収を抑制する可能性が示唆された。今後、骨代謝、骨密度への影響を前向きに検討する必要はあるが、フィンゴリモドの効果を初めてヒトで示した貴重な研究である。


67) Miyake H, Kanazawa I *. Sugimoto T. Decreased serum insulin-like growth factor-I is a risk factor for non-vertebral fractures in diabetic postmenopausal women. Internal Medicine, 2017; 56(3): 269-73.

【要約】

これまでに我々は2型糖尿病において血清IGF-Iの低下が骨折リスクとなることを報告してきた。本研究では血清IGF-I低下がその後の新規非椎体骨折の発生リスクになるかどうかを検討した初めての報告である。閉経後2型糖尿病において、平均観察期間6.4年の間に168人中24人に新規骨折が起こっており、交絡因子で補正したロジスティック回帰分析において血清IGF-I値が1SD上昇すると骨折リスクが0.48倍に低下することが示された。男性では骨折発生数が少なく有意差はでなかったが、同様の傾向を認めた。したがって、これまでに我々が報告してきたように、糖尿病では血清IGF-I低下が脆弱性骨折の重要なリスク因子であることが改めて証明された。


66)  Miyake H, Kanazawa I *, Sugimoto T. Decreased serum insulin-like growth factor-I level is associated with the increased mortality in type 2 diabetes mellitus. Endocrine Journal, 2016; 63(9): 811-8.

【要約】

2型糖尿病患者は一般住民の平均寿命より短命とされている。血糖コントロール不良や内因性インスリン分泌低下の状態では血中IGF-I値が低下し、血糖改善により上昇する。IGF-Iはインスリン様作用をもつ増殖因子であり、我々はIGF-I低下が生命予後と関連する可能性を仮説に過去起点コホート研究を行った。当科に糖尿病管理目的に入院した2型糖尿病男性234人、女性191人を対象に血清IGF-I値と総死亡との関連を検討した。様々な交絡因子で補正したCox比例ハザードモデルにて、血清IGF-Iが1SD上昇すると男性では0.47倍、女性では0.48倍に死亡リスクが低下することが認められた。ただし、動脈硬化や栄養状態にて追加補正すると男性では強く有意差は残ったが、女性では有意差は消失した(p=0.08)。したがって、2型糖尿病では血清IGF-I低下が生命予後の指標として有用であり、特に女性よりも男性でより有用である可能性が示唆された。


65) Tanaka S, Kanazawa I *, Notsu M, Sugimoto T. Visceral fat obesity increases serum DPP-4 levels in men with type 2 diabetes mellitus. Diabetes Research and Clinical Practice, 2016; 116: 1-6.

【要約】

近年ではDPP-4阻害薬が糖尿病治療の中心的な薬剤となり、インクレチン/DPP-4システムへの注目度はますます高まってきている。本研究では、糖尿病男性において血中DPP-4濃度が内臓脂肪肥満やメタボリックシンドロームの存在と関連するか否かを検討した。内臓脂肪面積を腹部CTを用いて評価し、血中DPP-4濃度はELISA法により解析した。年齢や罹病歴、肥満度、腎機能、HbA1cなどで補正した重回帰分析において、血中DPP-4は内臓脂肪量と有意な正の相関を認め、一方皮下脂肪とは関連性を認めなかった。さらに、様々な交絡因子で補正したロジシティック回帰分析においても、内臓脂肪肥満あり、メタボリックシンドローム合併において有意に血中DPP-4濃度が高いことが示された。本研究により、血中DPP-4濃度は内臓脂肪蓄積と特異的な関連性があり、内臓脂肪肥満、メタボリックシンドローム合併者では血中DPP-4濃度が高いことが明らかになった。


64) Tada Y, Kanazawa I *, Notsu M, Tanaka KI, Kiyohara N, Sasaki M, Sugimoto T. Long-term efficacy and safety in elderly patients with type 2 diabetes mellitus. Internal Medicine 2016; 55(10): 1275-8.

【要約】

糖尿病患者の高齢化に伴い、低血糖リスクの回避のためSU薬使用をなるべく避けること、低血糖リスクの低いDPP-4阻害薬の重要性が認識されてきている。本研究では、日本人高齢糖尿病患者を対象に、DPP-4阻害薬シタグリプチンの効果と安全性、SU薬の変更・中止について検討した。シタグリプチン開始2年後の平均HbA1cは7.7%から7.2%へ低下し、肝腎機能は不変であった。重症低血糖の発症はなく、SU薬を内服していた約72%の患者でSU薬の減量・中止が可能であった。本研究によりシタグリプチン投与により低血糖リスクを上げることなく血糖コントロールが改善し、SU薬の減量が可能であることが示された。


63) Takeno A, Kanazawa I *, Tanaka KI, Notsu M, Yokomoto-Umakoshi M, Sugimoto T. Simvastatin rescues homocysteine-induced apoptosis of osteocytic MLO-Y4 cells by decreasing the expressions of NADPH oxidase 1 and 2. Endocrine Journal 2016, 63(4): 389-95.

【要約】

我々は以前にホモシステインが骨細胞において酸化ストレスを誘導することによりアポトーシスを引き起こすことを報告した。スタチンは骨折リスクを低下させることが報告されているが、スタチンの骨細胞への影響を検討した報告は少ない。本検討はホモシステインによる骨細胞アポトーシスに対するスタチンの効果を検討したin vitro実験である。以前の報告と同様にホモシステインは骨細胞株MLO-Y4でNox1とNox2の発現を誘導し、アポトーシスを引き起こしたが、シンバスタチンの投与はホモシステインの作用を解除した。本検討により、スタチンが骨細胞においてホモシステインによる酸化ストレス上昇を解除し、アポトーシスを阻害する可能性が示唆された。


62) Yokomoto-Umakoshi M, Kanazawa I *, Takeno A, Tanaka KI, Notsu M, Sugimoto T. Activation of AMP-activated protein kinase decreases receptor activator of NF-kB ligand expression and increases sclerostin expression by inhibiting the mevalonate pathway in osteocytic MKO-Y4 cells. Biochemical and Biophysical Research Communications 2016, 469(4): 791-6. 

【要約】

骨細胞におけるAMPKの役割は不明である。本検討では、AMPK活性化が骨細胞におけるRANKL、スクレロスチン発現に与える影響を検討した。AMPK活性化剤であるAICARは濃度、時間依存的にRANKL発現を抑制し、一方スクレロスチン発現は増強した。siRNAを用いた検討によりAMPK alpha1 subunitがAMPK活性化によるRANKL発現抑制に重要であることが推測された。さらに、AMPKの作用はメバロン酸経路の阻害を介していることがメバロン酸、GGPPの同時投与やシンバスタチンを用いた実験により示唆された。本検討によりAMPKが骨細胞においてRANKL、スクレロスチン発現を制御していることが初めて示された。


61) Tanaka KI, Kanazawa I *, Miyake H, Yano S, Amano C, Ishikawa N, Maruyama R, Sugimoto T. Vitamin D-mediated hypercalcemia in multicentric Castleman's disease. Journal of Bone Mineral Metabolism 2017, 35(1): 122-5.

【要約】

Castleman's diseaseに高カルシウム血症を合併することは稀であり、そのメカニズムは不明であった。本症例は腫脹したリンパ節に異所性に25-hydroxyvitamin D 1-alpha-hydroxylaseが発現していることを初めて明らかにした貴重な症例報告である。


60) Notsu M, Kanazawa I *, Tanaka S, Yamaguchi T, Sugimoto T. Serum dipeptidyl peptidase-4 is associated with multiple vertebral fractures in type 2 diabetes mellitus. Clinical Endocrinology 2016, 84(3): 332-7.

【要約】

Dipeptidyl peptidase-4 (DPP-4)が脂肪細胞より分泌される悪玉アディポカインである可能性が報告され注目されている。これまでにDPP-4阻害薬が骨折リスクを抑制する可能性が報告されていることから、血中DPP-4濃度高値が骨折リスクに関与している可能性が考えられる。我々は、2型糖尿病男性における血中DPP-4濃度と骨密度、骨代謝マーカー、椎体骨折との関連性を横断的に検討した。血中DPP-4は骨代謝マーカーと有意な正の相関を認めたが骨密度との相関関係は認めなかった。多発椎体骨折の有無と血中DPP-4濃度との関連性をロジスティック回帰分析により検討し、血中DPP-4濃度が高値であるほど多発椎体骨折のリスクが上昇することが示された。この関連性は骨形成マーカーや骨密度で補正しても有意差が認められたが、骨吸収マーカーで補正すると有意差が消失したため、血中DPP-4の骨折リスク上昇には骨吸収が関連している可能性が示唆された。


59) Tanaka KI, Kanazawa I *, Sugimoto T. Elevated serum pentosidine and decreased serum IGF-I levels are associated with loss of muscle mass in postmenopausal women with type 2 diabetes mellitus. Experimental and Clinical Endocrinology & Diabetes 2016; 124(3): 163-6.

【要約】

我々は以前に細胞培養実験にてadvanced glycation end products (AGEs)が筋芽細胞の分化を阻害することを報告した(文献50)。しかし、これまでに臨床において血中AGEs濃度と筋肉量の評価を行った報告はなかった。我々は閉経後2型糖尿病女性を対象に、AGEsの1つであるpentosidineの血中濃度と筋肉量との関連性を検討した。また、IGF-Iは筋肉へのアナボリック作用があり、糖尿病患者では血中IGF-I値は低下することから、血中IGF-Iと筋肉量との関連性についても検討した。我々の予想通り、血中pentosidin高値、血中IGF-I低値が筋肉量低下と有意に相関することが明らかとなった。


58) Takeno A, Kanazawa I *, Tanaka KI, Notsu M, Yokomoto M, Yamaguchi T, Sugimoto T. Activation of AMP-activated protein kinase protects against homocysteine-induced apoptosis of osteocytic MLO-Y4 cells by regulating the expression of NADPH oxidase 1 (Nox1) and Nox2. Bone 2015, 77: 135-41.

【要約】

近年、高ホモシステイン血症が骨質劣化による骨折リスク上昇に関連することが報告され注目されている。様々な細胞において、ホモシステインが酸化ストレスを誘導し、細胞のアポトーシスを促進することが示されているが骨細胞への影響は報告がなかった。また、AMPキナーゼが酸化ストレスを抑制することが報告されており、本研究では①ホモシステインの骨細胞アポトーシスへの影響、②AMPキナーゼ活性化がホモシステインのアポトーシス誘導作用を抑制するかの2点を目的に検討を行った。ホモシステインは骨細胞MLO-Y4のアポトーシスを濃度依存的に促進し、抗酸化剤やNox阻害剤により一部解除された。また、AMPキナーゼ活性化剤であるAICARとメトホルミンはホモシステインによるアポトーシスを抑制した。ホモシステインはNox1とNox2の発現を増強したが、AICARはこれらの発現を抑制した。したがって、ホモシステインが骨細胞においてNox1とNox2発現の増強により酸化ストレスを誘導し、アポトーシスを促進すること、AMPキナーゼ活性化がホモシステインの酸化ストレス誘導機序を阻害することにより骨細胞アポトーシスに保護的に作用することが示された。


57) Tanaka KI, Kanazawa I *, Sugimoto T. Reduction in endogenous insulin secretion is a risk factor of sarcopenia in men with type 2 diabetes mellitus. Calcified Tissue International and Musculoskeletal Research 2015, 97(4): 385-90.

【要約】

2型糖尿病ではサルコペニア(筋減弱症)の発症リスクが高いことは臨床的にも知られているが、その機序は明らかとなっていなかった。これまでの様々な研究において、インスリンやinsulin-like growth factor-I(IGF-I)が筋肉増加に影響することが示唆されていたが、糖尿病患者においてそれを証明した研究はなかった。我々はDXA法を用いて四肢筋量を測定し、内因性インスリン分泌能と血清IGF-Iとの関係を統計学的に検討し、内因性インスリン分泌能の低下が2型糖尿病のサルコペニアの原因になることを見出した。


56) Tanaka KI, Kanazawa I *, Yamasaki H, Hasegawa H, Ichida K, Sugimoto T. Xanthinuria type I with a novel mutation of xanthine dehydrogenase. The American Journal of the Medical Science 2015, 350(2): 155-6.

【要約】低尿酸血症をきっかけに診断し得たキサンチン尿症1型の症例報告であり、遺伝子解析にて新規のXDH遺伝子変異を同定し得た貴重な症例である。また、キサンチン尿症で関節痛が起こることは知られていないが、本症例では繰り返す関節痛発作があり、キサンチン尿症との関連性が疑われた。


55) Tanaka KI, Yamaguchi T, Kanazawa I , Sugimoto T. Effects of high glucose and advanced glycation end products on the expressions of sclerostin and RANKL as well as apoptosis in osteocyte-like MLO-Y4-A2 cells. Biochemical and Biophysical Research Communications 2015, 461(2): 193-9.  

【要約】糖尿病患者では血中スクレロスチンが上昇し、骨脆弱性に関与することが報告されている。しかしながら、高血糖やadvanced glycation end products (AGEs)の骨細胞への影響を検討した報告はなかった。本研究では骨細胞のcell lineであるMLO-Y4-A2細胞を用いて高グルコース、AGE2、AGE3の骨細胞のスクレロスチン、RANKL発現への影響やアポトーシスについて検討した。高グルコース、AGE2、AGE3はいずれもスクレロスチンの発現を上昇し、AGE2とAGE3はRANKL発現を有意に抑制した。また、高グルコース、AGE2、AGE3はいずれもMLO-Y4-A2細胞のアポトーシスを誘導した。また、PTH(1-34)の添加により、高グルコース、AGE2、AGE3の骨細胞への影響はすべて解除された。このことから、高グルコース、AGEsは骨細胞へ直接作用して骨脆弱性に関与する可能性が考えられ、副甲状腺ホルモンによる治療はこの作用を改善する可能性が示唆された。


54) Kanazawa I , Canaff L, Abi Rafeh J, Angrula A, Li J, Riddle RC, Boraschi-Diaz I, Komarova SV, Clemens TL, Murshed M, Hendy GN. Osteoblast menin regulates bone mass in vivo 2015, 290: 3910-3924.

【要約】これまでに核内タンパクであるmeninがTGF-beta/BMP-2シグナルの下流で重要な働きを持ち、骨芽細胞分化・石灰化を調節していることがin vitro実験にて報告されていた。今回、骨芽細胞特異的menin欠損マウスを用いて、meninの骨での役割について検討した。Osteocalcin-Creマウスを用いて骨芽細胞meninを欠損すると、骨形成・骨吸収の低下を伴う骨量減少が認められ、一方Col1a1をもちいて骨芽細胞特異的にmeninを過剰発現すると骨形成促進を伴う骨量増加を認めた。ex vivoの検討で、menin欠損によりTGF-betaとBMP-2シグナルの抑制が認められ、破骨細胞活性化因子RANKLの発現を抑制した。したがって、meninは骨形成、骨代謝回転に重要な役割を持つことが明らかとなった。


53) Kanazawa I *, Notsu M, Tanaka KI, Kiyohara N, Tada Y, Sugimoto T. An open-label longitudinal study on the efficacy of switching from insulin glargine or detemir to degludec in type 2 diabetes mellitus. Internal Medicine, in press.

【要約】2013年に日本でも超時効型インスリン製剤であるデグルデクの使用が可能となった。本研究では、グラルギン/デテミル使用患者のうち、どのような患者でデグルデクへ変更することが有効であるかを検討した。また、デグルデクは新しい注射器であるフレックスタッチが使用可能であり、従来の注射器とフレックスタッチの使用感についても調査を行った。デグルデク/フレックスタッチへの切り替えは持効型インスリン10単位以上使用している患者では、超食前血糖が20mg/dL低下し、変動幅も有意に減少した。フレックスタッチへの切り替えについては、糖尿病治療期間が短い患者、インスリン頻回注射ではなくBOTにて治療中の患者において有効である可能性が示唆された。


52) Kanazawa I *, Tanaka S, Notsu M, Sugimoto T. Pioglitazone increases serum DPP-4 level in type 2 diabetes mellitus. Journal of Diabetes & Metabolism 2014, 5: 8.

【要約】DPP-4阻害薬は2型糖尿病治療の中心的薬剤であり、メタボリックシンドロームや糖尿病患者では血中DPP-4濃度上昇していると報告されている。近年、DPP-4は脂肪細胞から発現していることが報告され、本研究では脂肪細胞分化制御薬であるピオグリタゾンの血中DPP-4濃度への影響を検討した。対象薬はメトホルミンであり、ピオグリタゾンは投与後3か月、12か月と経時的に血中DPP-4濃度を上昇させたのに対し、メトホルミンは影響を与えなかった。


51) Kanazawa I *, Tanaka KI, Sugimoto T. Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors improve liver dysfunction in type 2 diabetes mellitus. Medical Science Monitor 2014, 20: 1662-1667.

【要約】2型糖尿病を対象とした後ろ向き研究において、DPP-4阻害薬内服で肝機能が改善することを報告した論文である。DPP-4阻害薬の血糖改善効果以外の多面的効果を認めた貴重な報告である。


50) Tanaka KI, Kanazawa I *, Yamaguchi T, Yano S, Kaji H, Sugimoto T. Active vitamin D possesses beneficial effects on the interaction between muscle and bone. Biochemical and Biophysical Research Communications 2014, 450(1): 482-487.

【要約】筋肉で産生され、成熟骨芽細胞の分化、石灰化を促進するオステオグリシン(OGN)は筋骨連関に関与する。本研究では、活性型ビタミンDが筋芽細胞分化を促進し、さらにOGN産生を増強することにより骨芽細胞分化も促進することを見出した初めての論文である。さらに、advanced glycation end products(AGEs)が筋芽細胞分化を阻害し、OGN発現を抑制するが、活性型ビタミンDがAGEsの筋芽細胞への負の影響を解除することも見出した。


49) Notsu M, Yamaguchi T, Okazaki K, Tanaka KI, Ogawa N, Kanazawa I , Sugimoto T. Advanced glycation end product 3 (AGE3) suppresses the mineralization of mouse stromal ST2 cells and human mesenchymal stem cells by increasing TGF-beta expression and secretion. Endocrinology 2014, 155(7): 2402-2410.

【要約】これまでに我々は終末糖化産物であるAGEが間葉系細胞であるST2細胞と骨芽細胞様細胞であるMC3T3-E1細胞において分化能、石灰化能を抑制することを報告しているが、本研究ではさらにAGEがどのようにして骨芽細胞系細胞の分化を抑制抑制するのかを探究している。AGEは骨芽細胞における内因性TGF-beta発現を増強し、石灰化を抑制する。一方、AGEによる間葉系細胞のアポトーシス促進作用はTGF-beta非依存的であった。AGEによる骨芽細胞への影響はTGF-beta発現を介しているが、増殖期と分化期においてメカニズムが異なる可能性が考えられる。


48)  Tanaka KI, Kanazawa I *, Yamaguchi T, Sugimoto T. One-hour post-load hyperglycemia by 75g oral glucose tolerance test as a novel risk factor of atherosclerosis. Endocrine Journal 2014; 61(4): 329-334.

【要約】75gOGTTは通常耐糖能異常(糖尿病)の精査のために行われる。今回我々は、検診のために受診された健常人に75gOGTTと動脈硬化検査を行い、糖負荷後1時間の血糖値が動脈硬化の存在を予測することを見出した。すなわち、75gOGTTは耐糖能の検査のみならず動脈硬化のスクリーニングにも有用である可能性が考えられる。


47) Tanaka KI, Kaji H, Kanazawa I , Canaff L, Hendy GN, Sugimoto T. Involvelment of the osteoinductive factors, Tmem119 and BMP-2, and the ER stress response PERK-eIFa-ATF4 pathway in the commitment of myoblastic into osteoblastic cells. Calcified Tissue Inernational and Musculoskeletal Research 2014; 94(4): 454-464.

【要約】これまでにTmem119が筋芽細胞から骨芽細胞への分化を促進することを報告した。また、BMP-2は強力な骨誘導蛋白であり、本研究ではBMP-2による筋芽細胞株C2C12の骨芽細胞分化誘導とTmem119との関連性を検討した。酸化ストレスによるセンサーであるPERKのBMP-2活性化はeIF2aのリン酸化を引き起こし、骨芽細胞分化を誘導した。BMP-2による骨芽細胞分化因子であるATF4発現の増加は、一部はeIF2aを介しているが、一部はTmem119を介してeIF2aとは独立してATF4発現を増強する経路を見出した。


46) Tanaka KI, Yamguchi T, Kaji H,  Kanazawa I ,  Sugimoto T. Advanced glycation end products suppress osteoblastic differentiation of stromal cells by activating endoplasmic reticulum stress. Biochemical and Biophysical Research Communications 2013; 438(3): 436-437.

【要約】糖尿病患者では骨質劣化による骨折リスクの増大が引き起こされる。本研究ではAGEsが小胞体ストレスを上昇させることにより、IRE1a、ATF6、OASISなどの小胞体ストレスセンサーの発現を上昇させ、骨髄間質細胞の骨芽細胞への分化、石灰化を抑制することを見出した初めての報告である。


45)  Ogawa-Furuya N, Yamaguchi T, Yamamoto M, Kanazawa I, Sugimoto T. Serum osteocalcin levels are inversely associated with abdominal aortic calcification in men with type 2 diabetes mellitus. Osteoporosis International 2013; 24(8): 2223-2230.

【要約】近年、骨から血中へ分泌されるオステオカルシンに内分泌ホルモンとしての役割があることが明らかとなっている。我々は以前に、血中オステオカルシンと糖代謝、体脂肪との関連性を明らかとし、さらに動脈硬化指標である頸動脈IMTと脈波伝播速度との関連性を報告してきた。今回は、さらに大動脈の石灰化レベルと血中オステオカルシンとの負の相関を見出した。血管石灰化には骨石灰化と同様なメカニズムがあることが明らかとなってきており、さらにオステオカルシンの受容体が血管内皮細胞や平滑筋細胞にも存在していることが報告されていることから、本検討の結果は骨と血管との直接的な関連性を示唆するものかもしれないと考えている。


44) Kanazawa I *, Tanaka KI, Ogawa N, Yamauchi M, Yamaguchi T, Sugimoto T. Undercarboxylated osteocalcin is positively associated with free testosterone in male patients with type 2 diabetes mellitus. Osteoporosis International, 2013 Mar; 24(3): 1115-1119.

【要約】近年、マウスを用いた検討により、骨から分泌される低カルボキシル化オステオカルシンには精巣におけるテストステロン分泌を促進作用があることが示された。しかしながら、これまでに実際にヒトにおいても同様にオステオカルシンがテストステロン分泌と関係するか否かは不明であった。糖尿病では骨形成低下に起因する骨脆弱性が存在し、かつ血中テストステロンも低下していると報告されている。そこで、我々は男性2型糖尿病患者におけるオステオカルシンと血中フリーテストステロン濃度との関連性を統計学的に検討した。各交絡因子にて補正した重回帰分析において、血中低オステオカルシン濃度はフリーテストステロン濃度と有意な正の相関を認めた。このことはヒトにおいても骨から分泌されるオステオカルシンがテストステロン分泌促進に働く可能性があることを示唆している。


43) Canaff L, Vanbellinghen JF, Kanazawa I, Kwak H, Garfield N, Vautour L, Hendy GN. Menin missense mutants encoded by the MEN1 gene that are targeted to the proteasome: restoration of expression and activity by CHIP siRNA. The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, 2012 Feb; 97(2): E282-291.  

【要約】多発性内分泌腺腫症1型は副甲状腺、下垂体、膵臓などの内分泌腺に多発腫瘍形成を来すMEN1遺伝子異常による遺伝性疾患である。MEN1遺伝異常により、MEN1がコードする蛋白であるmeninの機能低下が多発内分泌腫瘍の原因と考えられている。今回、我々はmutant meninは不安定な状態にあり、プロテアゾームにより素早く除去され、その機序にHSP70、CHIPが関連していることを見出した。我々はこのHSP70、CHIPの発現を抑制することによりmutant meninにおいても正常型meninと同等の機能を獲得できることも見出し、このことは将来のMEN1治療に有用な可能性が考えられる。


42)  Hayashi K, Kurioka S, Yamaguchi T, Morita M, Kanazawa I, Takase H, Wada A, Kitagaki H, Nagai A, Bokura H, Yamaguchi S, Sugimoto T. Association of cognitive dysfunction with hippocampal atrophy in elderly Japanese patients with type 2 diabetes.  Diabetes Research and Clinical Practice , 2011 Nov; 94(2): 180-185. 

【要約】2型糖尿病の合併症として認知機能の低下がある。しかしながら、その原因や機序については明らかでない。我々は今回、頭部MRIにより海馬領域と脳全体の萎縮度を計測し、2型糖尿病と非糖尿病との比較を行った。本検討により、糖尿病患者では非糖尿病に比較して脳、特に海馬領域の萎縮が顕著であり、認知機能の低下に関与していることが明らかとなった。


41)  Kanazawa I *, Yamaguchi T, Sugimoto T.  Serum insulin-like growth factor-I is negatively associated with serum adiponectin in type 2 diabetes mellitus. Growth Hormone & IGF Research, 2011 Oct; 21(5): 268-271.

【要約】血清アディポネクチンは善玉ホルモンとして認識されており、インスリン感受性を高めて血糖改善に作用するのみならず、動脈硬化予防効果もあり、近年では長寿にも関連するといわれている。一方で、IGF-Iは年齢とともに低下するホルモンであるが、過栄養・肥満では上昇し、糖尿病コントロール不良の状態では低下することが知られている。我々は2型糖尿病男性において、血中アディポネクチン濃度とIGF-I濃度との関連性を検討し、年齢や糖尿病罹病期間、BMI、腎機能、HbA1cにて補正しても有意な負の相関を認めた。このことから、血中IGF-I高値がアディポネクチン低下と関連することが示唆された。


40)  Kanazawa I *, Yamaguchi T, Sugimoto T.  Effects of intensive glycemic control on serum levels of Insulin-like growth factor-I and dehydroepiandrosterone sulfate in type 2 diabetes mellitus. Journal of Endocrinological Investigation, 2012 May; 35(5): 469-472.  

【要約】IGF-I、DHEA-Sはともに抗加齢ホルモンとして注目されている。これらのホルモンは糖尿病患者では低下していると報告されているが、糖尿病治療後のこれらの変化についての報告はなかった。我々は2型糖尿病患者の治療前後でIGF-I、DHEA-Sを測定し、その変化を検討した。予想通りにIGF-Iは治療後に有意に上昇を認めたのに対し、DHEA-Sは有意に低下した。なぜDHEA-Sが低下したかについては明らかでないが、おそらく糖尿病ではACTH系の亢進状態にあり、治療後にそれが解除されたことが関連しているかも知れない。IGF-I、DHEA-Sはともに糖代謝に影響されうることが明らかとなった。


39)  Kanazawa  I *,  Yamaguchi T, Sugimoto T. Relationship between bone biochemical markers versus glucose/lipid metabolism and atherosclerosis; a longitudinal study in type 2 diabetes mellitus. Diabetes Research and Clinical Practice,  2011 Jun; 92(3): 393-399.

【要約】これまでに我々は横断検討にて血中オステオカルシンと糖・脂質代謝、動脈硬化には関連性があることを報告してきた。しかしながら、これらの関連性を縦断的に検討した報告はない。我々は2型糖尿病患者を6ヶ月間フォローアップし、それぞれの指標とその変化を縦断的に検討した。本検討によって、オステオカルシンが骨代謝のみならず糖・脂質代謝ならびに動脈硬化とも密接な関連性があることが示唆される。


38)  Yamaguchi T, Yamamoto M, Kanazawa I, Yamauchi M, Yano S, Tanaka N, Nitta E, Fukuma A, Uno S, Sho-no T, Sugimoto T. Quantitative ultrasound and vertebral fractures in patients with type 2 diabetes. Journal of Bone and Mineral Metabolism, 2011 Sep; 29(5): 626-632.

【要約】2型糖尿病の骨脆弱性の指標としてDXA法による骨密度測定は有用でない。今回、我々は骨質の評価にも有用な可能性があるといわれているQUSによる骨密度測定が椎体骨折の予測因子として有用であるか否かを検討した。しかしながら、QUSによる骨密度測定も椎体骨折との関連性を見いだせなかったことより、さらなる予測因子の検討が必要であることが示された。


37)  Kanazawa I *,  Yamamoto M, Yamaguchi T, Sugimoto T. Effects of metformin and pioglitazone on serum pentosidine levels in type 2 diabetes mellitus. Experimental and Clinical Endocrinology & Diabetes, 2011 Jun; 119(6): 362-365.

【要約】非酵素的に産生されるAGEsは糖尿病患者では高値を示し、糖尿病合併症、動脈硬化症と関連性があることが知られている。今回、糖尿病治療薬であるメトホルミン、ピオグリタゾンのAGEsのひとつであるペントシジン濃度への影響を検討した。メトホルミン、ピオグリタゾンともに対照群に比較して有意にペントシジン濃度を低下させた。このことは、これらの治療薬は血糖を改善する効果だけでなく、AGEsも低下させることにより糖尿病合併症の抑制にも有益な可能性が考えられる。


36)  Yamaguchi T, Kanazawa I, Takaoka S, Sugimoto T. Serum calcium is positively correlated with fasting plasma glucose and insulin resistance, independent of parathyroid hormone, in male patients with type 2 diabetes mellitus. Metabolism Clinical and Experimental, 2011 Sep; 60(9): 1334-1339.

【要約】原発性副甲状腺機能亢進症では糖尿病の頻度が高いことから、PTH、血中カルシウムが糖代謝に関連していることが考えられている。今回、我々は2型糖尿病患者における血中PTH、カルシウム濃度と糖代謝との関連性を検討した。血中カルシウム濃度は血糖値、インスリン抵抗性指標と有意な正の相関を認めたことから、カルシウム濃度が糖代謝に関連していることが明らかとなった。


35)  Kanazawa I *,  Yamaguchi T, Tada Y, Yamauchi M, Yano S, Sugimoto T. Serum osteocalcin level is positively associated with insulin sensitivity and secretion in patients with type 2 diabetes. Bone,  2011 Apr; 48(4): 720-725.

【要約】オステオカルシンには糖代謝を制御するホルモンとしての役割があることが動物実験にて明らかとなったが、人における血中オステオカルシンと糖代謝、インスリン分泌能、インスリン抵抗性指標との関連性は明らかでない。今回、我々は未治療2型糖尿病患者を対象に検討した。血中オステオカルシンはインスリン分泌指標と正の相関、抵抗性指標と負の相関を認め、血糖指標とも負の相関を認めたことから、オステオカルシンがインスリン作用の調節を介した糖代謝制御に関連していることが明らかとなった。


34)  Kanazawa I *,  Yano S, Notsu Y, Yamaguchi T, Nabika T, Sugimoto T. Asymmetric dimethylarginine as a risk factor for cardiovascular disease in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus. Clinical Endocrinology,  2011 Apr; 74(4): 467-472.

【要約】NOS阻害物質であるADMAは動脈硬化のリスク因子として報告されているが、2型糖尿病での関連性は不明であった。今回、我々は2型糖尿病患者における横断解析、縦断解析により血中ADMAと動脈硬化指標との関連性について検討した。血中ADMA高値は動脈硬化指標と有意な正の相関があり、さらに動脈硬化指標の増悪にも関連していることが明らかとなった。


33)  Kanazawa I *,  Yamaguchi T, Sugimoto T.  Serum Insulin-like growth factor-I is a maker for assessing the severity of vertebral fractures in postmenopausal women with type 2 diabetes mellitus.  Osteoporosis International,  2011 Apr; 22(4): 1191-1198.

【要約】IGF-Iは糖尿病合併症に関連することが報告されており、以前に我々は血中IGF-I低値が糖尿病における既存椎体骨折のリスクになること報告した。今回、我々は症例数を増やし、さらに多発椎体骨折も指標に入れて検討を加えた。閉経後2型糖尿病女性では血中IGF-I低値は椎体骨折のみならず多発椎体骨折のリスクとも関連することが明らかとなった。


32)  Kanazawa I *,  Yamaguchi T, Yamauchi M, Yamamoto M, Kurioka S, Yano S, Sugimoto T. Serum undercarboxylated osteocalcin was inversely associated with plasma glucose level and fat mass in type 2 diabetes mellitus. Osteoporosis International,  2011 Jan; 22 (1): 187-194.

【要約】オステオカルシンはビタミンK依存的にカルボキシル化がおこり、血中にはカルボキシル化分画と低カルボキシル化分画が存在する。動物実験により骨から分泌される低カルボキシル化オステオカルシンには内分泌的役割があることが報告されているが、これまでの検討では総オステオカルシンが測定されており、低カルボキシル化オステオカルシンと糖代謝の関連性は明らかでなかった。今回の検討により、低カルボキシル化オステオカルシンが糖代謝、体脂肪率とも有意な関連性があることが初めて示された。


31)  Kanazawa  I *,  Yano S, Yamaguchi T, Notsu Y, Nabika T, Sugimoto T. Relationships between dimethylarginine and the presence of vertebral fractures in type 2 diabetes mellitus. Clinical Endocrinology,  2010 Oct; 73(4): 463-468.

【要約】一酸化窒素(NO)は骨芽細胞機能を上昇させ、石灰化を促進することが報告されている。内因性NOS阻害物質であるADMAがNO産生低下を介して骨に負に働く可能性が考えられるが、これまでADMAと骨代謝の検討はなかった。2型糖尿病男性においては血中ADMA高値が椎体骨折のリスクになり、閉経後女性では構造的異性体であるSDMA高値がリスクになることを初めて見出した。


30)  Kanazawa  I *,  Yamaguchi T, Hayashi K, Takase H, Shimizu T, Sugimoto T. Effects of treatment with risedronate and alfacalcidol on progression of atherosclerosis in postmenopausal women with type 2 diabetes mellitus accompanied with osteoporosis. The American Journal of the Medical Sciences, 2010 Jun; 339(6): 519-524.

【要約】動脈硬化と骨粗鬆症には相互関連性があることが報告されてきているが、骨粗鬆症治療が動脈硬化に影響を与えるか否かについては明らかでない。今回、我々は2型糖尿病と骨粗鬆症を合併した閉経後女性を対象に、リセドロネートとアルファカルシドールの併用療法が動脈硬化指標に与える影響について検討した。対照群では有意に動脈硬化指標が増悪したのに対し、治療群では動脈硬化指標には変化が見られなかった。このことから、骨粗鬆症治療により動脈硬化進展が抑制された可能性が考えられる。


29)  Kanazawa I *,  Yamaguchi T, Yano S, Yamauchi M, Sugimoto T. Fasudil hydrochloride induces osteoblastic differentiation of stromal cell lines, C3H10T1/2 and ST2, via bone morphogenetic protein-2 expression. Endocrine Journal, 2010 May; 57(5): 415-421.

【要約】未分化間葉系細胞におけるRhoキナーゼの役割については不明であった。Rhoキナーゼ阻害剤であるファスジルを用いて培養細胞株C3H10T1/2、ST2におけるRhoキナーゼの役割を検討した。ファスジルはBMP-2発現を増強することによりこれらの細胞の骨芽細胞への分化を促進した。


28)  Kanazawa I *,  Yamaguchi T, Yamamoto M, Sugimoto T.  Relationships between treatments with insulin and oral hypoglycemic agents versus the presence of vertebral fractures in type 2 diabetes mellitus. Journal of Bone and Mineral Metabolism,  2010 Sep; 28(5): 554-560.

【要約】2型糖尿病における抗糖尿病薬と骨密度、椎体骨折との関連性を検討した。閉経後女性においてはインスリン使用、チアゾリジン内服患者では有意に椎体骨折のリスクが2.27倍、3.38倍と高値であり、一方でSU剤内服患者では椎体骨折リスクは0.48倍に低下していた。


27)  Kanazawa I *,  Yamaguchi T, Yano S, Yamamoto M, Yamauchi M, Kurioka S, Sugimoto T. Baseline atherosclerosis parameter could assess the risk of bone loss during pioglitazone treatment in type 2 diabetes mellitus. Osteoporosis International,  2010 Dec; 21(12): 2013-2018.

【要約】チアゾリジン投与22人、メトホルミン投与23人の骨密度、骨代謝マーカー、動脈硬化指標を1年間経過観察した。チアゾリジン群では有意にオステオカルシンが低下し、大腿骨、前腕の骨密度が有意に低下した。骨密度低下の予測因子として動脈硬化指標、骨吸収マーカー、血清IGF-Iが有意な関連性が認められた。メトホルミン群では骨マーカーに変化はなかった。一方、メトホルミン群では動脈硬化指標は増悪したのに対し、ピオグリタゾン群では変化を認めなかった。このことから、チアゾリジンは骨密度低下に働くが動脈硬化増悪には保護的に働くと考えられる。


26)  Kanazawa  I *,  Yamaguchi T, Sugimoto T. Baseline serum total adiponectin level is positively associated with changes in bone mineral density after 1 year treatment of type 2 diabetes. Metabolism Clinical and Experimental, 2010 Sep; 59(9): 1252-1256.

【要約】2型糖尿病において、血清アディポネクチンと骨密度の関係を縦断的に検討した報告はなかった。血中アディポネクチン高値は1年後の骨密度変化率と有意な正の相関が認められた。このことから、2型糖尿病においてはアディポネクチン高値は骨密度低下に保護的に働く可能性が考えられる。


25)  Kanazawa  I *,  Yamaguchi T, Yamauchi M, Sugimoto T. Rosuvastatin increased serum osteocalcin levels independent of its serum cholesterol- lowering effect in patients with type 2 diabetes and hypercholesterolemia. Internal Medicine, 2009 Nov; 48(21): 1869-1873.

【要約】スタチンが骨形成を促進する可能性が指摘されているが、ロスバスタチンの骨代謝マーカーに対する影響は不明であった。ロスバスタチン投与は有意にオステオカルシンを増加した。一方で、コレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブはロスバスタチン同様有意にLDLコレステロールを低下させたが、骨代謝マーカーには影響しなかった。従って、ロスバスタチンはコレステロール低下作用とは独立して骨形成促進に働く可能性が考えられる。


24)  Takase H, Yano S, Yamaguchi T, Kanazawa I, Hayashi K, Yamamoto M, Yamauchi M, Sugimoto T. Parathyroid hormone up-regulates BMP-2 mRNA expression through mevalonate kinase and Rho kinase inhibition in osteoblastic MC3T3-E1 cells. Hormone and Metabolic Research, 2009 Dec; 41(12): 861-865.

【要約】副甲状腺ホルモン(PTH)の間欠投与は骨形成を促進するが、PTHの骨芽細胞における影響については未だ明らかでない。骨芽細胞様細胞MC3T3-E1において、PTHはメバロネートキナーゼとRhoキナーゼを阻害することによりBMP-2発現を誘導することを見出した。


23)  Kanazawa I ,  Yamaguchi T, Yamamoto M, Yamauchi M, Yano S, Sugimoto T. Serum osteocalcin /bone specific alkaline phosphatase ratio is a predictor for the presence of vertebral fractures in men with type 2 diabetes. Calcified Tissue International, 2009 Sep; 85(3): 228-234.

【要約】2型糖尿病では早期骨形成マーカーであるBAPは上昇し、一方で後期のマーカーであるオステオカルシンは低下している。骨代謝マーカーの椎体骨折との関連性を検討し、オステオカルシン/BAP比が低値、すなわち骨芽細胞成熟度が低下していると椎体骨折リスクが高値であることが示唆された。


22)  Kanazawa I *,  Yamauchi M, Yano S, Imanishi Y, Kitazawa R, Nariai Y, Araki A, Kobayashi K, Inaba M, Maruyama R, Yamaguchi T, Sugimoto T. Osteosarcoma in a pregnant patient with McCune-Albright syndrome. Bone, 2009 Sep; 45(3): 603-608.

【要約】妊娠中McCune-Albright syndrome (MAS)患者が下顎骨osteosarcomaを合併した症例報告。Osteosarcoma切除組織において、PTH/PTHrp受容体とc-fosの高発現が認められた。妊娠中は胎盤よりPTHrpが分泌され骨代謝回転が亢進することが知られており、本症例においてはPTHrpによりc-fos発現が増強し、FDの腫瘍化に関連した可能性が考えられた。


21)  Yamaguchi T, Kanazawa I, Yamamoto M, Kurioka S,  Yamauchi M, Yano S, Sugimoto T .  Associations between components of the metabolic syndrome versus bone  mineral density and vertebral fractures in patients with type 2 diabetes. Bone, 2009 Aug; 45(2): 174-179.

【要約】メタボリックシンドロームの重要要素である内臓脂肪と骨量、骨折との関連性を検討した。単相関では体脂肪率、内臓脂肪面積、皮下脂肪面積は骨密度と有意な正の相関を認めるが、体重にて補正を行うと負相関へ転換した。しかし、ロジスティック回帰分析では内臓脂肪の蓄積は椎体骨折リスクを減少させることが示唆された(オッズ比0.61)。従って、内臓脂肪蓄積は骨量とは負相関するが椎体骨折には保護的に働くとが考えられる。


20)  Kanazawa I,  Yamaguchi T, Yamauchi M, Yamamoto M, Kurioka S, Yano S, Sugimoto T. Adiponectin is associated with changes in bone markers during glycemic control in type 2 diabetes mellitus. The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, 2009 Aug; 94(8): 3031-3037.

【要約】糖尿病治療前後にて骨代謝マーカーの変化を検討した。骨形成マーカーは治療後に骨型アルカリホスファターゼは減少したのに対し、オステオカルシンは上昇した。一方で、骨吸収マーカーには有意な変化がなかった。治療前血中アディポネクチン濃度がオステオカルシン変化率と有意な正の相関を認めた。従って、糖尿病治療により骨芽細胞成熟障害が改善し、治療前アディポネクチンが高いことが治療後の骨芽細胞改善率を予測することが考えられる。


19)  Kanazawa I,  Yamaguchi T, Yano S, Hayashi K, Yamauchi M, Sugimoto T. Inhibition of the mevalonate pathway rescues the dexamethasone-induced suppression of the mineralization in osteoblasts via enhancing bone morphogenetic protein-2 signal. Hormone and Metabolic Research, 2009 Aug; 41(8): 612-616.

【要約】我々はこれまでにメバロン酸経路阻害が骨芽細胞分化促進に働くことを報告している。デキサメサゾンによる骨芽細胞分化阻害作用に対するメバロン酸経路阻害薬の効果を検討した。デキサメサゾンはBMP-2アンタゴニスト発現を増強したが、メバロン酸経路阻害薬(AICAR、ファスジル、スタチン)はBMP-2発現を増強し、デキサメサゾンによるBMP-2発現増強作用を改善させ、石灰化抑制作用も有意に改善させた。このことからメバロン酸阻害薬はグルココルチコイド骨粗鬆症に有用である可能性が示唆される。


18)  Hayashi K, Yamaguchi T, Yano S, Kanazawa I, Yamauchi M, Yamamoto M, Sugimoto T. BMP/Wnt antagonists are upregulated by dexamethasone in osteoblasts and reversed by alendronate and PTH: potential therapeutic targets for glucocorticoid-induced osteoporosis. Biochemical and Biophysical Research Communications 2009 Feb; 379(2): 261-266.

【要約】グルココルチコイド(GC)による骨芽細胞分化阻害の機序については明らかでない。GCはBMP-2アンタゴニストであるfollistatin、Dan、WntアンタゴニストであるsFRP-1とインヒビターであるaxin-2の発現を増強した。アレンドロネートとPTHの投与はデキサメサゾンによるこれらの増強作用を有意に抑制した。従って、GCによる骨芽細胞分化抑制機序にはBMP-2/Wntシグナルの抑制が関与しており、アレンドロネートとPTHがこれらを解除することが明らかとなった。


17)  Kanazawa I ,  Yamaguchi T, Yano S, Yamauchi M, Sugimoto T. Activation of AMP-kinase and inhibition of Rho-kinase induce the mineralization of osteoblastic MC3T3-E1 cells through endothelial NOS and BMP-2 expression. American Journal of Physiology Endocrinology and Metabolism 2009 Jan; 296(1): E139-146.

【要約】AMP kinaseの骨芽細胞における役割を検討した。AMP kinase活性化はeNOS、BMP-2発現を増強した。AMP kinaseとメバロン酸、GGPPの同時投与はAMP kinaseによる骨芽細胞石灰化促進作用が解除されたことから、この作用はメバロン酸経路の阻害に寄ることが示唆された。さらにAMP kinaseの下流にはERK、Rho kinaseが関与していることが示唆された。


16)  Kanazawa I ,  Yamaguchi T, Yamamoto M, Yamauchi M, Yano S, Sugimoto T. Relationships between serum adiponectin levels versus bone mineral density, bone metabolic markers, and vertebral fractures in type 2 diabetes mellitus. European Journal of Endocrinology 2009 Feb; 160(2): 265-273.

【要約】血中アディポネクチンと骨量、骨代謝マーカー、椎体骨折との関連性を2型糖尿病患者にて検討した。男性において、アディポネクチンは骨量と有意な負の相関を認め、さらに椎体骨折の存在とも有意な正の相関を認めた。従って、アディポネクチン高値は骨量現象と椎体骨折リスク上昇と関連する可能性が示唆された。


15)  Kanazawa I ,  Yamaguchi T, Yamamoto M, Yamauchi M, Kurioka S, Yano S, Sugimoto T. Serum osteocalcin level is associated with glucose metabolism and atherosclerosis parameters in type 2 diabetes mellitus. The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 2009 Jan; 94(1): 45-49.

【要約】骨から分泌されるオステオカルシンが糖・脂肪代謝に影響する可能性が報告されていたが、これまでにヒトにおける検討はなかった。2型糖尿病男性において、血中オステオカルシンは血糖指標、体脂肪率と有意な負の相関を認め、さらに動脈硬化指標とも負の相関を認めた。従って、ヒトにおいてもオステオカルシンが糖・脂肪代謝において重要な役割を持つことが始めて示唆された。


14)  Kanazawa I *,  Yano S, Takase H, Yamane Y, Yamaguchi T, Sugimoto T. A case of membranous nephropathy associated with chronic sinusitis. Journal of Nephrology 2009 Mar-Apr; 22(2): 289-294.

【要約】慢性副鼻腔炎に膜性腎症によるネフローゼ症候群を合併した症例報告。慢性副鼻腔炎の外科的治療後にネフローゼ症候群が改善したことより、慢性副鼻腔炎が膜性腎症の原因であった可能性が示唆された貴重な症例。


13)  Kanazawa I ,  Yamaguchi T, Yamamoto M, Yamauchi M, Yano S, Sugimoto T. Combination of obesity with hyperglycemia is a risk factor for the presence of vertebral fractures in type 2 diabetic men. Calcified Tissue International 2008 Nov; 83(5): 324-331.

【要約】2型糖尿病では骨密度非依存的な骨脆弱性が存在するが、その原因については明らかでない。男性2型糖尿病では肥満かつ高血糖状態では低骨代謝回転、低アディポネクチン血症、椎体骨折リスク高値であることが示された。従って、糖尿病骨症予防には肥満、高血糖の改善が有用であることが示唆される。


12)  Kanazawa I ,  Yamaguchi T, Yano S, Yamauchi M, Sugimoto T. Metformin enhances the differentiation and mineralization of osteoblastic MC3T3-E1 cells via AMP kinase activation as well as eNOS and BMP-2 expression. Biochemical and Biophysical Research Communications 2008 Oct; 375(3): 414-419.

【要約】疫学検討において糖尿病患者のメトホルミン使用者では骨折リスクが低いことが報告されているが詳細は不明であった。メトホルミンの骨芽細胞様細胞MC3T3-E1への添加は分化、石灰化を増強した。メトホルミンはeNOS、BMP-2発現増強し、この作用はAMP kinase活性化を介していることが明らかとなった。


11)  Kanazawa I,  Yamaguchi T, Yamamoto M, Yamauchi M, Kurioka S, Yano S, Sugimoto T. Serum DHEA-S level is associated with the presence of atherosclerosis in postmenopausal women with type 2 diabetes mellitus. Endocrine Journal 2008 Aug; 55(4): 667-675.

【要約】2型糖尿病では動脈硬化性疾患のリスクが高いことが知られているが、高血糖、高脂血症、高血圧の管理のみではそのリスクが完全には改善されないことから、他の因子が関連していることが示唆される。DHEAには抗動脈硬化作用があることが報告されていることから、DHEA-Sと動脈硬化指標との関連性を検討した。閉経後女性において血中DHEA-S濃度は動脈硬化指標と有意な負の相関を認めたことから、2型糖尿病の動脈硬化リスク上昇にはDHEA-S低下が関与していることが示唆された。


10)  Kanazawa I ,  Yamaguchi T, Yamamoto M, Yamauchi M, Yano S, Sugimoto T. Serum insulin-like growth factor-I level is associated with the presence of vertebral fractures in postmenopausal women with type 2 diabetes mellitus. Osteoporosis International 2007 Dec; 18(12): 1675-1681.

【要約】2型糖尿病の骨脆弱性の誘因はこれまで明らかでなかった。コントロール不良糖尿病では血中IGF-Iが低下しており、また骨代謝にとってIGF-Iは重要な骨形成因子であることから、血中IGF-I値と骨密度、椎体骨折との関連性を検討した。閉経後女性では血清IGF-I低値が椎体骨折リスクの上昇と関連することが明らかとなった。


9)  Kanazawa I ,  Yamaguchi T, Yano S, Yamauchi M, Yamamoto M, Sugimoto T. Adiponectin and AMP kinase activator stimulate proliferation, differentiation, and mineralization of osteoblastic MC3T3-E1 cells. BMC Cell Biology 2007 Nov; 29; 8: 51.

【要約】骨芽細胞様細胞MC3T3-E1におけるアディポネクチンとAMP kinase活性化の影響を検討した。siRNAを用いてアディポネクチン受容体をノックダウンすると骨芽細胞分化・石灰化が抑制された。アディポネクチンはAMP kinaseを活性化し、AMP kinase活性化は骨芽細胞分化・石灰化を有意に増強した。骨芽細胞分化促進作用にはオステリックス発現増強が関与していることが考えられた。


8)  Yano S, Yamaguchi T, Kanazawa I, Ogawa N, Hayashi K, Yamauchi M, Sugimoto T. The uraemic toxin phenylacetic acid inhibits osteoblastic proliferation and differentiation: an implication for the pathogenesis of low turnover bone in chronic renal failure. Nephrology Dialysis Transplantation 2007 Nov; 22(11): 3160-3165.

【要約】腎機能障害による骨折リスクの増強はよく知られている。Uraemic toxinであるphenylacetic acid (PAA)の骨芽細胞様細胞MC3T3-E1への影響を検討した。PAAは骨芽細胞増殖・分化・石灰化を抑制した。さらにPAA投与はPTHに対する骨芽細胞の反応を減弱したことより、PAAはPTH感受性の低下に関与していることが示唆された。


7)  Kanazawa I *,  Yamamoto M, Yamaguchi T, Yamauchi M, Yano S, Sugimoto T. A case of magnesium deficiency associated with insufficient parathyroid hormone action and severe osteoporosis. Endocrine Journal 2007 Nov; 54(6): 935-940.

【要約】低マグネシウム血症性低カルシウム血症の1症例。低マグネシウム血症によりPTH分泌低下、骨と腎臓におけるPTH反応性低下により低カルシウム血症が引き起こされていることが示唆される貴重な症例報告。


6)  Kanazawa  I *,  Yamaguchi T, Yamane Y, Murakami N, Kato Y, Sugimoto T. Acromegaly associated with monoclonal gammopathy of undetermined significance (MGUS). Endocrine Journal 2006 Oct; 53(5): 687-691.

【要約】先端巨大症にMGUSを合併した1症例。下垂体腺腫の手術後にMGUSが改善傾向を認めるようになったことから先端巨大症がMGUSの一因である可能性が示唆される貴重な症例報告。


5)  Kanazawa I ,  Sohmiya M, Sugimoto T: Sibling cases of Multiple endocrine neoplasia type 1 (MEN1) appearing in a family with epilepsy. Japan Medical Association Journal 2006 Jan; 49(1): 34-40.

【要約】てんかん家系であり、かつMEN1を発症した姉弟の症例報告。MEN1遺伝子のコードするメニンはドーパミン産生にも関連していることが報告されており、本症例ではMEN1とてんかんに関連性がある可能性が考えられる興味深い症例報告。


4)  Sohmiya M, Kanazawa I, Kato Y. Effect of recombinant human GH on circulating granulocyte colony-stimulating factor and neutrophils in patients with adult GH deficiency. European Journal of Endocrinology 2005 Feb; 152(2): 211-215.

【要約】成人成長ホルモン欠損症患者に対する成長ホルモン補充療法のG-CSF、好中球数への影響を検討した。成長ホルモン補充にて有意にG-CSF、好中球数は上昇した。このことから成長ホルモンはG-CSF産生促進を介して好中球増加に関連することが示唆された。


3) Sohmiya M, Kanazawa I, Kato Y. Seasonal changes in body composition and blood HbA1c levels without weight change in male patients with type 2 diabetes treated with insulin. Diabetes Care 2004 May; 27(5): 1238-1239.

【要約】糖尿病コントロールの季節的変動について検討した。体脂肪率、HbA1cは冬季にて有意に上昇したのに対して夏季ではHbA1cは低下を認めた。本検討では冬季の体脂肪率増加がHbA1c上昇に関連している可能性が示唆された。


2) Sohmiya M, Kanazawa I, Inomata N, Yonehara S, Sumigawa M, Terai R, Shitamori A, Kagawa M, Kato Y. A new device to introduce self-injection of insulin by his non-dominant hand in a patient with hemiplegia. Diabetes Technology & Therapeutics 2004 Aug; 6(4): 505-509.

【要約】脳卒中による半身麻痺の患者で、我々の作成したディバイスを用いてインスリン導入を行った。このディバイスにより片手でもインスリン量の設定、針の装着・脱着まで可能となった。本ディバイスを用いれば本症例のような半身麻痺の患者においても有用であることが示唆された。


1)  Kanazawa I, Mori T, Murakami Y, Kato Y. A case of acrogigantism complicated with vrious arthropathies. Clinical Pediatric Endocrinology 2002; 11: 57-60.

【要約】先端巨大症は様々な合併症がみられる。本症例は成長期にみられる巨大症+先端巨大症の1症例であり、膝関節症を合併していた。本症例のように成長期に高身長、関節痛を訴える患者においては成長ホルモンの検索が必要であると考えられた。

金沢一平 糖尿病と骨粗しょう症専門医からの提案