2021年11月19日(金)
和歌山県の比較的若い先生方を対象に、これからの糖尿病診療の考え方とGLP-1受容体作動薬のファースト・インジェクション(最初に使う注射薬)としてのポジショニングについてお話をさせていただきました。
座長は橋本市民病院代謝内科の宮田佳穂理先生に務めていただき、実臨床での使用を想定してディスカッションしました。
外来担当表|橋本市民病院 (hashimoto-hsp.jp)
宮田先生は物腰柔らかな先生で、とても話しやすかったです。おそらく診察室でも患者さんの声をよく聞かれているのではないかなと想像できました。
糖尿病経口薬の次の一手~ファースト・インジェクション導入術~
今回の会では、特に注射薬の導入についてお話ししました。
糖尿病は自覚症状に乏しく、多くの先生方が治療強化ができていないという現状があります。糖尿病は著明な高血糖にならなければ症状に乏しく患者さんの訴えが少ないため、治療強化をする際には医師の方から積極的にならなければ、そのままズルズルと同じような治療を継続してしまうことに陥りやすくなります。そうすると最終的に内因性インスリン分泌能にダメージが蓄積してしまい、インスリン注射をせざるを得ないというケースがあります。そうなると、血糖の不安定性、低血糖のリスクや合併症の進行に繋がってしまうことになります。
近年、大規模研究やメタ解析によってGLP-1受容体作動薬の有用性が示されるようになってきています。血糖改善効果だけではなく、体重へのメリット、心血管疾患や糖尿病腎症のリスク低下などの報告が相次いでいて、現在は週1回の注射や経口薬も上市されています。
GLP-1受容体作動薬は内因性インスリン分泌能がまだ保たれている時に有効性があり、インスリン分泌自体が低下してしまうと血糖改善効果の恩恵が薄くなってしまいます。
糖尿病専門医ではGLP-1受容体作動薬を適切な時期に導入し、最終的に脱注射を目指すという早期治療強化の考え方が増えてきています。注射薬と聞くとまだまだハードルが高いと考えている非専門の先生も多くおられますが、意外とGLP-1受容体作動薬は使いやすい治療薬です。もちろん、気をつけないといけない点もありますが、有効に使うことができれば患者さんへの恩恵が非常に大きいと考えています。
今回の講演では、GLP-1受容体作動薬のエビデンス、使い方、使い分け、これまでのアンメット・メディカル・ニーズへの期待などについてお話ししました。
多くの先生方の糖尿病診療が拡充されるように、これからも努力していきたいと思います!